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蒼眼の反逆者 〜ウィル〜  作者: そにお
第2章 自由解放戦争
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42話 過去は繋がり

 このアトリエの実質的な主人は険しい表情で曲がりなりにも客を睨みつけていた。

「ザラク・グランデ殿、私達は依頼に参ったのです」

 イリアは椅子から立ち上がる。

 未だ険しい顔をしているザラクに負けずはっきりと用向きを伝える。


「お爺ちゃん。本当だよ! アーティファクトを創って欲しいって」

 オルキスが訝しげにしているザラクに怪しい人間ではないことを必死に伝えた。


「む、孫が言うならそうなのか、地上げ屋や物売りかと思うたわ」


「どこをどう見たらそうなるんだ」


「なんか言ったか小僧」


「いえ、なにも」

 表情が和らいだかと思ったが徹底的に孫以外には厳しいようだった。

 ウィルはすぐにごまかした。


「それに王のとこの娘じゃろ? 残念じゃが今は依頼を受けるような余裕はない。ほかに頼んでくれ」

 王の関係者だと分かっているにも関わらず、二言目には依頼そのものを断られ、ウィルは焦った。


「いやいや、待ってくれって、これディファルドからの紹介状!」

 急いでカバンから受け取った紹介状をザラク差し出す。

「ディアスの息子か?」

 目を丸くして思いの外素直に受け取って書を確認する。


「ほう、あいつめ。商売を分かっておるわ」


 にんまりと口角を上げ右手で髭を撫でるように触る。

 そしてザラクはウィルを見やる。

 品定めするかのような視線に気持ちが悪かったが、何となく負けたくなかったのでウィルとしては睨みつけた。


「これだけの取引材料を用意するほどの男かお前は」

 嘲笑か賞賛か分からない笑みを一瞬浮かべ紹介状をウィルに返す。

 そういえばウィル自身はその中身を見ていなかったことを思いだし、文字を読む。

「礼として1年間の優先的な発注契約を結ぶ?」

 紹介状と聞いていたので見返りの内容まで書かれているとは思わなかった。

 ザラクの反応から相当なことなのだろうと推測した。


「あいつの顔も立ててやりたいが、とにかく話だけ聞いてやろう」

 どすっと椅子に座り、顎で向かいに座れと指され、ウィル達は大人しく従った。


 ウィルはなるべく端的に伝えた。

 持参した剣を差しだしこれに合う鞘のアーティファクトということと他者のマナ取り込んで剣に属性を付加させる能力を。

 レインシエルの炎の力を例に具体的に他の属性も付加できること、そして詳細は言わなかったが砕け散ったも話した。

 静かに聞いていたザラクは考えるように次第に眉間に皺を寄せていった。

「エンチャント系か」

 一言だけぼそりと呟いた。

「エンチャント?」

 ウィル達は皆目検討が着かず、その様子にザラクはいらだったようにさらに皺を寄せる。

 いつか皺だけになるんじゃないかとも思った。


「エンチャントはですね。魔素付加を指します。もともと無属性のものに対して属性を付加させるのが一般的で、さっきのように炎を付加するアーティファクトもありますし氷を付加するものも確かにあります。ですが……」

 代わりにオルキスが説明してくれたのだが、皺こそ寄らなかったものの困り顔をする。

 ウィルは次の言葉を待った。

「普通、エンチャントで得られる属性は固定されています。炎だったり氷だったり多属性をそれだけで付加できるなんて聞いたことありません。ましてや人のマナをそこまで高密度に属性化するなんで……、それこそオラクルクラス、ってまさか?」

 途中でその可能性に気づいたのかまさかといいった表情でウィルを見つめる。

「ああ、そういやあの人、オラクル付きって言ってたっけ」

 最初に出会った兵士がそう言っていたのを思い出し、なんのためらいもなく答えた。


「ですよね、そんな訳ないですよね……って、ええええ!?」

 いきなり立ち上がったオルキスにウィルは驚いて椅子が倒れそうになるほど仰け反った。


「え、なに、なんかまずいの?」

 理由がわからずウィルはただその反応に戸惑うだけだった。

 ニーアはもといこちらの住人のレインシエルですらきょとんとしていた。

 ただイリアはしまったと言わんばかりに額を抑えていた。


 オルキスはそのまま後ろの本が並んだ棚へと走り出し何か探しているようだった。


「小僧、ディファルドは知っていたのか?」

 ザラクが疲れているのか語気のない調子で問いかけた。

「いや、どうだっけ、言ったと思うけど」

 はっきりとはしなかったが言っていたような記憶はあった。


「あの小僧、分かってやったな……」

 それがディファルドを指すのであろうと思ったが、その語気には怒りはなくそどちらかというとしてやられたかのような、呆れたようなそれでいて嬉しそうな感じだった。


「信託の加護、オラクル付き、オラクルクラスのアーティファクトは一般に出回るようなものではありませんよ!」

 そう言ってオルキスは分厚い読み込まれた本を机に広げる。

「確かこのページに」

 ペラペラと本をめくる。どこになにが書いてあるのか記憶しているらしくオルキスが読み込んでいたことがよく分かった。

 

「あった、これです!」

 だいぶ後ろの方のページでめくる手を止めた。

 オルキスは興奮した様子で息をあらげながらその挿し絵付きの分を読み上げる。


「オラクルクラス;インフィニティア エファンジュリアのアリスニアの加護を受けし無限の属性を付加するアーティファクト、使用者は……塗りつぶされてますね。それとアーティファクトを錬成したのは希代の錬成士 オルティ・クリスティア……」

 そこまで読み上げてすとんと脱力して椅子に腰掛けた。

「道理で覚えてたと思った……」

「クリスティアって……つまり」

 ウィルはオルキスと同じ家名に気づいた。


「……私のお母さんです」

 ザラクは腕組みをしながらなにを考えているのかは分からなかったが、孫を眺めていた。


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