39話 各々の目的
ヘクトリーセは明瞭にその伝説について話す。
楔とはこの大陸テイントリアを繋ぎ守る楔。
各土地を守る存在か装置かも不明だが地方によっては同じ伝説があること、
大昔にエヴィヒカイトが建てられたのと同時代の伝説であったようだが、今ではその面影も楔という言葉の理由もわからずただ伝説として知られているだけだった。
ルイノルドであろう人物の目的からそこで東岸にある洞窟の海中遺跡を結びつけたことは無関係ではないことは明らかだった。
「私が子どもだった頃はよく楔の生け贄になるぞと、子どもへの言いつけに使われたものです」
ヘクトリーセは話し終わると喉が乾いたのか紅茶を含む。
「俺は生け贄にもなれんって親父には呆れられたっけな。王は兄貴になるはずだったのにな」
ジェイルの後半の言葉は隣のヘクトリーセにだけ聞こえ、彼女は机の陰で優しくジェイルの手を握るのだった。
「それなら、追いかけないと」
ウィルの優先順位は父親を探すことで、手がかりを失う訳にはいかなかった。
「焦んなって、こっから海中遺跡は今から急いでも夜中になっちまう。最悪、すれ違う可能性もあるだろ。ここを経由するしか道はねえし合流できるんじゃねえの? また篭もってなければな」
ウィルは納得して上げかけた腰を下ろす。
「そうすると朝には出発、でいい?」
ウィルは皆に同意を求める。
反論はなかったようだ。
「よし、じゃあ解散な。部屋は用意してあるから自由にしてくれ」
「それじゃ僕たちは街を見てきますね」
ずっと黙っていたユーリが食い気味でアイリと部屋を出ていった。
「あ、アルとメルは少し残って欲しい」
「わかりました」
ジェイルはアルフレドとメレネイアを引き留めた。
「んー俺らはどうする?」
ウィルは残るニーアとレインシエルに今後の予定を聞く。
「私はぶらぶらしたい」
ニーアはケーキを綺麗に食べ終わっていた。
「あ、紹介状のアトリエに行こうよ」
レインシエルはアーティファクト化された鞘を創れる一般的にアトリエと呼ばれる工房の話を思い出した。
「そういえばそうか」
ウィルはバッグからディファルドから受け取った招待状を取り出す。
「拝見しても良いですか?」
イリアに紹介状を渡す。内容を流し読みウィルに返す。
そしてそこに向かう予定の3人を見て、少し悩んだようにする。
「王、彼らをオルキスのアトリエへと案内しようと思いますがご許可もらえますか」
イリアはジェイルに許可を求める。
「オルキスぅ? あーそうだな、イリアがいた方がいいな。どんまい少年達よ」
ジェイルもまた3人を見てイリアの同行を許可した。
「なにかまずいことが?」
ウィルは一抹の不安を覚え、あまり気の進まなさそうなイリアに聞く。
「いえ、結構入り組んだ所にあるのと、多少話がこじれそうなので王の側近の私がいたほうが安心かと」
「職人気質ってやつか。造船所にもいたなあ、おっかないおっさん」
ウィルは故郷にいた職人の老人を思い出す。
「ま、まあそんな所です」
的が外れたのかなんとも要領の得ない回答にウィルはさらに不安になった。
そして、部屋にはジェイルとヘクトリーセ、アルフレドとメレネイアが残った。
「疲れているところ悪いな」




