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蒼眼の反逆者 〜ウィル〜  作者: そにお
第2章 自由解放戦争
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38話 楔の伝説

ジェイルは皆の正面に戻る。

「立ち話はなんだ。特産の豆があるんだ。コーヒーでも飲みながらにしよう」


 そして、イリアに案内され会議用の長机が用意された部屋へと通される。

 ほどなくして使用人がコーヒーやオレンジジュースなどの飲み物を運んできた。

 椅子に座ってウィルはコーヒーを口にする。

 雑味の一切ないある種すっきりとした苦みが喉を通る。

 

 ニーアとレインシエル、アイリはオレンジだった。


「待たせたな」


 後に入ってきたのは皺一つない白シャツ姿のジェイルだった。

 きらびやかな衣装であった先程都は違い、こう見てみるとどこかの商人か実業家のようだった。

 そしてヘクトリーセはジェイルみたいにラフではないものの白いすらりとした布地のシンプルなドレス姿で引き締まったスタイルが腰のくびれが浮き出るくらいのタイトなものだった。


「本当にうちは恵まれててな。平和で過ごしたかったんだがな」


 追加で出されたクリームで塗られたフルーツケーキに皆舌鼓をうつ、

 ジェイルはそれを嬉しそうに眺めていた。


「さて、どこから話そうか。まずはそっちの目的かな」


「私から少し話しましょう」

アルフレドはコーヒーのグラスを置く。


「皆さんの逃亡先にこちらを選んで連絡を取っていたのは私です。昔なじみだったこともあり活用させていtだだきました。そして貴方に聞きたいのですが、私達が当時エファンジュリアだった、まあ後釜がいない状況ですから今もですかね。その旅の記憶は正しく持っていますか?」


 アルフレドの問いかけにジェイルは目を丸くする。

「はあ? どういうことか分かんねえけどあると想うぜ? まだ呆けるほどじゃねえし」


「ルイノルドという人物は?」


「ルイノルド? 誰だ? いや待て、俺がボコったいじめっ子か?」


「それはルーノ」


 隣のヘクトリーセがすかさず訂正を入れる。

 アルフレドはその様子を見てため息をつく。

「あなた方の馴れ初めの話ではないのですが、その反応からするとやはり記憶にないようですね」


 ヘクトリーセもイリアもその人物に心当たりは無いようだった。


「……なんかあんのか?」


 ジェイルは雰囲気を察したのか真っ直ぐにアルフレドを見つめる。


「ルイノルド・E・リベリ。俺とニーアの父親であんた……、いや、王様達の仲間だったと想うんだけど」


 ウィルがおずおずとルイノルドについて確認する。思わずあんたと言ってしまったことを一応訂正しておいた。

「お前の? いや、そんな記憶はない・・・が、いや待てよ」

 ジェイルは立ち上がりウィルの顔を身を乗り出して凝視する。


「言っとくけどいじめっ子もいじめられっ子でもないぞ」


「あほか、ボケるつもりはねえよ。なあお前の親父って同じ蒼眼か?」

 ウィルは軽くはたかれた後、ジェイルはその瞳を見つめる。


「同じだ……です」

 思い出したかのように敬語をつける。


「あー思い出したわ!!」

 ジェイルは両手を叩く。


「本当か!?」


 ウィルも思わず乗り出してしまい目の前にジェイルの顔面が近づく。


「ちけえ、そうだな。旅仲間にいたことは正直思い出せねえが、3日前に仮面つけた野郎が来てな、そいつも蒼い眼だった」


「こちらにも来ていたのですか」

 アルフレドは珍しく考えるように顔をしかめる。

「お、そういやディファルドのとこからも報告きてたわ、忘れてた」

 なにも悪びれる様子もなく座り結露で濡れたグラスを口に付ける。


「彼はなにをしに?」


「なんだっけ?」


 控えていたイリアにジェイルは視線を向ける。

「ほんとに呆けたんじゃないんですか? 仮面の男は楔の伝説を追っているって話ですよ、それで王国の記録室まで勝手に通してたじゃないですか」


 あきれ顔でのイリアはジェイルの様子に頭痛がして手を頭に当てる。


「もちろん、イリアの記憶を確かめたに決まってんだろ」

 誰が聞いても言い訳だったが本人は真面目な様子でふんぞり返った。


「ねえ」


先程までケーキにぱくついていたレインシエルが立ち上がる。


「ジェイルおじちゃんさあ。さすがに真面目にやってよ。もう会いに来ないよ」


 その一言にショックを受けたのか、ジェイルは胸を抑えた。


「おじちゃん、会いに来てくれない・・・だと」

 どちらの言葉にショックを受けたのか、はたまた両方か急に姿勢をただし締まりのない顔を引き締めた。


「クソボケ王」

 ぼそりとニーアはつぶやいたのだが、幸いにも本人には聞こえなかったようだ。


「よし、仮にそいつがルイノルドで君達の父親だとしよう。でそのルイノルドらしき仮面はいきなり謁見室に入ってきたわけだ。兵士を振りきってな、それで平和ボケした兵士に有り難い喝を入れたのだ」


ふんふんとジェイルは頷きながら脱線していく。


「クソボケ王、話戻して」


「ボケ……そしてクソとは……」

今度はしっかりと届いたらしくうなだれた後、また話し始めた。


「話を戻そう」

「お前がな」

ニーアがまたもぼそり。


「本当は追い出そうとも想ったんだが、一緒に郊外の果樹の栽培をやってる夫婦と鉱山の管理人も来てな。それぞれ魔物だったり落盤事故から助けられたもんだから話を聞いてくれって言われてな。追い出すわけにもいかんかったわけだ。で、目的を聞いたら楔の伝説を調べてて蔵書を調べさせてほしいってな。仮面越しだからくぐもって聞こえなくて3回聞き直したわ」


「5回ね」

ヘクトリーセが訂正する。


 いちいち話が逸れそうになるジェイルにそろそろ肩が震えてきたニーアをウィルはなだめる。


「俺も外堀を埋められたもんだから俺自ら案内したの。それで1日こもって出てきたかと思ったら東岸洞窟の海中遺跡を調べさせて欲しいってさ。それは確実に3回聞き直した。それでイリアを呼んだら怒られて、そいつを見送って今に至るのだ。以上」

 後半一気に省かれた気がするが、冗長になりそうだったので誰も深くは聞かなかった。


「楔って?」

 ニーアは震えながらその伝説について聞く。

 それに答えたのはヘクトリーセだった。





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