19話 宣戦布告
「いや、予想外ですね」
ウィルが意識を失う直前に、アルフレドはメレネイア達に合流した。
「アル! ずいぶん余裕そうですね」
その間に、ウィルは蒼い炎をあ纏う剣を構えている。
「たぶん大丈夫でしょう」
「あなた、何を隠しているの?」
メレネイアはどこか裏があるようなアルフレドに不信感を募らせた。
だが、長年の仲間でもあり、それが自分たちの不利益であるとは思えないし思いたくなかった。
「そんな目をしないでください。
そろそろです」
アルフレドが自信満々に行った後、大きな衝突音と揺れがその場を襲った。
「なに!?」
ウィルの成り行きを見守っていたレインシエルは突然の振動に驚く。
その原因を確かめる前に、ウィルが動く。
ウィルは蒼い炎の剣を振りかざしライエルに肉薄する。
鋭い斬撃にライエルはかろうじて大剣で受け止める。
更なる追撃、その動きは舞踏をも連想させ一種の美しささえ感じるほど、流れるように一連の動作に無駄は感じられなかった。
「確かに強いが、殺しに来いよ!」
ライエルは受け止めた剣を力で弾く。
「ほう」
ウィルは感心とばかり笑みを浮かべる。
一度ウィルは距離を取り、剣を鞘に納める。
鞘に収まると元のナイフほどの長さに戻る。
しかし、蒼は輝きを強め、鞘はひび割れのように蒼い光がほどばしる。
「術式が耐えきれないか……」
ライエルは構えなおしたウィルの様子に直感と経験で警告を感じ、攻撃を捨て防御に専念をする。
「耐えろよ」
その言葉はライエルに向けたのか自分に向けた言葉かは定かではなかった。
ウィルは一瞬屈むとライエルの視界から消えた。
「なっ…!」
ライエルにはかろうじて知覚できた。
消えたように見えたが考えられないスピードで一直線にこちらに踏み込んで来ていることが見えた。
その光景は走馬燈のようにスローモーションに感じた。
ライエルの体は動かない。
脳の処理が目の前の光景にすべてそそぎ込まれていた。
防御に集中していたライエルにウィルは鞘から剣を抜き放つ。
刀身からあふれ出る蒼炎。
鞘は耐えられなかったのか弾け飛ぶ。
そしてそのまま蒼い剣はライエルを横凪ぐ。
それはライエルそのものより彼の大剣をねらっていた。
剣同士が衝突した瞬間、耐える間もなく大剣は砕け散る。
ウィルは振りきった後、次なる攻撃のため、今度は逆方向に振り下ろす。
ライエルは覚悟を決めたが、その剣がライエルを捉えることはなく空を切った。
いつの間にか剣の長さはナイフほどではないが短剣よりも長いくらいまで刀身は短くなっており、炎はかききえていた。
ウィルは気を失い受け身も何もなく倒れ込んだ。
ライエルは呆然とし、いち早く駆け込んできたウィルの仲間、レインシエルがウィルの前に立つ。
「……戦うつもりはねえよ」
ライエルは剣の柄がけ握りしめ、外から聞こえる衝撃音と爆発音が外からの砲撃であることに気づく。
「それじゃあ、彼女は拾っていきますよ」
気づくと後ろにいたはずのヴァイスエファンジュリアはメレネイアとアルフレドの元に連れられていた。
「こりゃどやされるなあ」
やれやれと両手をふり、踵を返し奥の扉へと歩いていった。
奥から兵士が現れライエルに対し声を張る。
「ミリアン王国から宣戦布告です!
至急、お戻りください!」
アルフレド達が撤収後、空に展開していた青い旗をかがげる機空挺団は砲撃を終了し、撤退していく。
そして、そのニュースは知れ渡る。
エファンジュリア誘拐事件、ミリアンの再びの戦火、帝国船に偽装していたミリアン機空挺団、
そして、どの報道媒体も大きく報じたのは、
蒼の災厄の再来だった。