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蒼眼の反逆者 〜ウィル〜  作者: そにお
第5章 蒼失、楔の慟哭、真実に哭け
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169話 不可視と仮面

 メレネイアは轟く爆音に何事かと眉を潜めたが、目の前の敵にすぐに集中し直す。実力は当然均衡しており、不可視の力場は相手も同じく、暫くは互いに動かずそれだけで組み合う、異様な戦いであったが、終わりが見えないと互いに悟り、接近戦と中距離戦を組み合わせた戦いへとシフトしていた。


「同じ身体能力、思考、技……かたや、体力の消耗は見られず、持久戦は危険ですね」


 相手を分析しながら冷静に戦いを続けるメレネイア、正直なところ一気に片を付けることは容易だった。だが、慎重なメレネイアとしては、まずは分析を優先していた。それはノグニスの目的をも推測することも含まれていた。何人かが既に打ち破っていることから、この状況に意図があるとメレネイアは踏んでいた。ゴーレムというならば、倒したところでまた再生することも可能だからだ。だが、それはない。一度、敵を負かしてしまえばこの箱は解除されている。これが腑に落ちず、把握するために勝利を急がず考えを巡らせながら立ち回っていた。


「なるほど……理由はまだ掴めませんが、このまま続けても無駄ですね。直接伺いましょう」


 理由は不明だが、意図を推測したメレネイアはこれ以上、時間稼ぎしても仕方ないと踏んだ。一旦、距離を取り、力場を消すと、がくりと膝を折る。それをマナ不足による疲労だと踏んで、好機と捉えたのか敵のメレネイアは景色が歪むほどの力場を出現させ叩き潰そうと、一気に距離を縮める。高密度に圧縮した力場のため操作範囲は狭まるため近づかねばならなかった。その特性はもちろんメレネイア本人も把握していた。


「やはり、好機と判断しましたか」


 手と振り下ろすと連動した高密度のハンマーがメレネイアの直上に迫る。


「纏装……」


 そのつぶやきの直後、振り下ろされたハンマーによってメレネイアもろとも床が陥没した。かのように見えた。床をつぶした手応えしか感じられなかった敵メレネイアは、そこにいない標的に気づき、力場を自分の周囲に展開しようとしたときには、既に気配が背後に回っていた。


「これは知らなかったでしょう」


 急激に速度を増したメレネイアの膝から下はその周囲の景色を歪ませていた。両腕も同様で、メレネイアに揺らめきが纏っていた。その纏われた拳を握り、敵の横腹を殴りつける。


「っ!!」


 骨が粉砕する音が鈍く響き、横向きにくの字に無理矢理折れ曲がると体を浮かせ、壁に激突した。敵メレネイアは壁に陥没したまま、土へと還っていく。


「やはり、今考えたことは対応できないようですね、っと……」


 再び膝が折れる。今度は演技ではなかった。


「力場を纏わせて強制的に限界を越えて四肢を駆動させる。装甲としても効果は申し分ないですが、反動がここまで大きいと連続使用は現状、不可能ですね」

 気づけば膝と腕は震え、間接に痛みが生まれていた。力場により強制的に動かされた肉体は限界を越えた力を発揮したものの、それ故に反動が著しく大きく、おおっぴらに使用するには調整とそもそもの肉体強化が必要だと、戦いの直後にも関わらず冷静に分析を終えるのだった。



「お、後はレイ…レインシエルとニーアだけか。どうすっかな。そろそろ付き合うのもめんどくなってきたな。こいつはどうにも中途半端だしなあ」


 ルイノルドはメレネイアの勝利を見届けていた。その間にも敵のルイノルドは絶え間なく攻撃を仕掛けているもののルイノルドはまったく相手にしておらず適当に受け流していた。敵ルイノルドは同じ存在であるにも関わらず相手にされていない状況に焦っているのか休むことはなかった。


「理解できないか? なんで同じなのに実力差があるのか」


 飽きてきたのかルイノルドはメレネイアへの注目をやめて久方ぶりに敵に向き直る。その間にも剣の交差は止まらないがなんなくかわしていく。


「一個、教えてやろう。お前のコピーは完璧だ。でもな、その仮面の使い方をわかっちゃいないんだよ。ま、わかっちゃいても俺の外側だけをコピーした奴にこいつの認証を受けるのは無理だ。所詮お前はゴーレムだからな」


 そう言うと、ルイノルドの仮面に一筋の蒼光が流れる。瞳から流れる涙さながらに頬を伝い落ちていく蒼が顎部分まで行き着くのを敵ルイノルドが見届ければ、いつの間にか仰向けに倒れていた。足は動かない。膝から下が切り離されており、支えようとした腕は肩ではなく地面へと付き、ただ胸に突き刺さっていく蒼剣を眺め力を失った。

 土塊に戻る前にルイノルドは敵の仮面を蹴り飛ばす。そこにはあるはずの顔がなく顔の凹凸だけが虚しく彫られていた。


「やっぱスキャニングはできてなかったか。万が一もなさそうだ」


 完全に土塊になり、埋もれた足を抜き崩壊した箱を出る。後はレインシエルとウィルだけだった。


「問題は、あいつだな。まーた不安定になってやがる。このままだとまずいか……」


 その瞳はウィルへと向けられ心配とも不安ともとれる言葉は、仲間と合流する時には一言も続かなかった。







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