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蒼眼の反逆者 〜ウィル〜  作者: そにお
第5章 蒼失、楔の慟哭、真実に哭け
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163話 シークエンス

 今度は大人達の集団に出くわした。初めは服装も見てくれも違うウィル達に新たな恐怖を生んだものの、迫る魔物を倒して見せれば、味方だだと都合良く考えた大人達は安心と同時に魔物をウィル達に任せながら逃げ続けていた。


「うわあああ!!」


 先ほどよりも圧倒的な魔物の多さにカバー仕切れず、魔物が抜けてしまう。寸でのところでメレネイアの力場が魔物を捉え壁へと弾き飛ばす。壁が陥没するほどの衝撃で魔物はもやを吐き出し息絶えた。魔物の種類は多く、最初に戦ったような速い魔物の他に動きは遅いが力が強い魔物など多くの特徴を持つ魔物が現れ続けていた。


「くそ、しっかりしてくれよ! 剣とか魔法とかコスプレか知らねえけど、助けにきたんならちゃんとしてくれよ!」

 

 一時建物の中へ逃げ込み一息をつく。数人の女性も含めた大人達がへたり込み、束の間のの休息をとる。襲われていた中肉中背の男性が脅威が去ったのを良いことに文句をウィル達につけたのだった。


「はあ? 守ってもらってて何様なの?」


 相変わらずニーアは短気で、苛立ちながら男性に詰め寄る。


「ニーアさん、落ち着いてください。余計な体力をこの人に使う意味はありません」


 メレネイアの言葉には棘があり、その冷ややかな視線に男性は悪態と共に視線を逸らし放置されたイスに腰掛けた。ニーアもメレネイアの言葉が腑に落ちたのか一旦深呼吸して切り替えた。ルイノルドは窓のそばに立ち外を伺っていた。


「だいたい何が起きてんだ?」


 魔物の気配がなくなり閉めた扉から離れ、この状況の意味が分からず、大人達を含めて問いかける。すると一人の女性がウィルに黒いものを向けると、閃光が迸った。


「うわっ、なんだよ」


 予期しない閃光に腕で顔を遮る。何かアーティファクトの攻撃かと思ったが体にはなんともなく、その女性に苛つきを覚える。


「ああ、ごめん、一枚とらせてもらったよ。あんた達、外国人だと思ったけど言葉は通じるんだね」


 なんの悪びれもなく、カメラだというそれを見せてくるとそこには先ほどのウィルがモニターに映し出されていた。カメラという言葉に馴染みはなかったが、写真を撮る道具の存在は記憶にあったため、何事もないことに安堵する。


「私はフリージャーナリスト、本名は嫌いだからミッツって呼んで。わからない? 記者よ記者」

 

 自然に握手を求めてくるミッツにウィルは半ば強引に手を取られ握らされた。


「で、何が起きてるんだ?」


 外を伺っていたルイノルドが場を離れミッツに問いかける。仮面姿が珍しいのかまたも写真を取る。ルイノルドは閃光に眼を細めるだけで、回答を静かに待った。


「ごめんごめん、なんか良くあるラノベの現代に迷い込んだ異世界人みたいな感じだからさ。おかしくて」


 ミッツは屈託なく笑う。


「この女、どっかいかれてんぞ」


 そうぼやくのは先ほどの男性だった。どうしようもない状況に頭を抱えていた。


「で、何が起きてるかだっけ? ま、見ての通り魔物だよ。あんたらの世界にも魔物いるんでしょ? そんな格好してるんだから」


「俺達のことはどうでもいい、始まりから何が起きているかすべて話せ。大方プログラムかなんかなんだろうが」


 ルイノルドはミッツへの質問を続ける。


「プログラム? 何いってんの? まあそっちのノリに合わせてあげるけど、きっかけは使徒症候群による審判の日による産物で、人類の滅亡は阻止できたけど、別次元のエネルギー流入が観測されたんだ。魔法元素、通称マナってね。枯渇寸前の化石資源に変わる革新的エネルギーの発見にその危険性も考えることなく利益優先のお偉い方が開発を押し進めたの。マナの発見者でもある一部の研究者達は南極に制御塔を建ててたけど完成間近で懸念が現実化したのさ」

 

 一同は早口で話すミッツについていけず、ましてやわからない単語も多くあり何がどうなっているのか把握が難しかった。


「懸念というのは?」


 メレネイアは見当はついていたのだが、確認のために聞く。


「もちろん、あの黒い魔物だよ。最初はマナ具象体やらまた使徒やら言われてたけど、魔物で落ち着いたね。なによりそうとでも言わないとーーーー」


 ミッツが話を続けようとしたが、それは外で響いた爆発音で遮られた。その後上空を耳をつんざく高音と竜が炎を吐いているような轟音が通り過ぎていく。その音がなんなのかはウィル達ではなく逃げてきた大人達が察したようで歓喜の声が上がった。


「空軍だ!」


 興奮した様子で窓の隙間から空を仰ぐ大人達にウィルもそれをのぞき込む。それは小型の飛空挺のようだったが、全身灰色で鈍い光沢から鋼鉄でできているように見えた。羽ばたかず固定された羽に取り付けられた白い筒状の物体が飛翔していく。それは地面に徘徊する魔物に直撃すると爆発し、魔物は煙を上げながら倒れた。どうやら仕留めたらしい。その他にも一際大きい魔物にも容赦なく飛翔体を命中させ次々に仕留めていった。


 しばらくして周辺を掃討し終わったのか鋼鉄の飛空挺の音は遠くなっていった。


「さて、早く港の避難所まで行かないと置いて行かれそうだね」


 ミッツはほこりが付いた尻を軽く叩き立ち上がった。他の大人達も賛成し閉められた扉を用心深く開ける。


「あんたらが来てくれたら安心なんだけど、どうする?」


 最後に出て行こうとするミッツは一度振り返り、ウィルに向けて問いかけた。他に有効な選択肢もないと一同はさらに同行を決めるのだった。





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