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蒼眼の反逆者 〜ウィル〜  作者: そにお
第5章 蒼失、楔の慟哭、真実に哭け
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147話 独り言

 案の定、ニーアは耳が痛くなるほど扉につけていたがいきなりなにも聞こえなくなったので、憤慨しながらのしのしと部屋へ戻っていった。


(趣味が悪いぞ)


 ディアヴァロの声色は呆れているのが分かった。


「うっさいわね。姑か」


(ぷぷ、姑だって)


 リヴァイスはきっと口を手で押さえているのだろう。それ以降笑い声がなくなったのはディアヴァロに怒られたからだろう。


「フォルテはウィルの視界わからないの?」


 繋がっているはずのフォルテならその視界が見えるはずだと思い、部屋のベッドに転がりながら呼びかける。


(いや……なにも見えないな。すまない)


「謝るほどじゃないでしょ別に」


 今までの負い目のせいかフォルテは何かあればニーアに謝ることが多く、それらの多くは大したことではなく、ニーアもいい加減、注意するのも諦めかけていた。謝られる方も困るものだ。


(それはそうとスルハの楔だけど、今までみたいに簡単にたどり着かないと思うよ)


 そう注意するのはユグドラウスだった。どことなく自慢げな印象もあった。


「なんで? 知ってるの?」


 これから行く場所の情報は重要だった。先に知っておく手はないと詳しく聞き出す。


(砂漠ってことでたぶんそうだと思うけど、ニス……いや、グノマスは人間嫌いだからさ。塔を設計したの僕だし、あ)


 失言だったようでユグドラウスは言葉を詰まらせた。それを見逃すニーアではない。


「設計ってどういうこと?」


(あーうん、あ、どうぞ)


(代わりに話そう。我々が結界の楔として存在し十二の役割に分けられた。リヴァイアスは水、イフリーテは火などのように自然要素から我は秩序、フォルテは調律というように自然要素ではない要素も存在する)


 ディアヴァロは一つずつ話す。この大陸を守護する結界は十二の要素で成り立っているという。それらは円環型に分類される。内側から自然、次元、理の順に大まかに三つに分けられる。

リヴァイアスは水素、イフリーテは炎素、それ以外に、風素、地素、雷素、光素、闇素、次元は、重力、空間、摂理は秩序と調律そしてそれらを成り立たせている輪廻。

 それら十二要素によって結界が守られているという。結界の維持だけでなく結界内の環境調整の役割もあるようだった。ディアヴァロは闇素と秩序の二つを担う特殊な存在だった。


「ほんとになんとなくわかったけど、フォルテの調律って? 調律どころか剣いっぱい出すイメージしかないけど」

 

 ニーアの記憶にはフォルテがその名前通りの力を発揮した覚えがない、剣翼を出して戦う剣士の印象しかなかった。


(フォルテの剣翼は彼自身の力だ。調律自体は本人がどうこうするものではない)


「名前だけのお飾りってこと?」


 ニーアのざっくりとした指摘が的を射ていたのか、ユグドラウスの笑い声が聞こえた。


(……まあそんな認識で構わない。彼の存在自体が調律と考えてくれ)


 

 ふーん、とニーアは返す。正直、理解が追いついていなかったが、どこから聞くべきかも分からず生返事となってしまった。


(ニーア嬢、僕は何かわかるかな)


ユグドラウスが心底楽しそうに問いかけてきた。


「え……物好き?」


(いやいや、そんな選択肢皆無だったでしょ……)


(合ってる合ってる)

 

 ユグドラウスの落胆とリヴァイアスの押し殺した笑いが共に聞こえてきた。


「……空間でしょ? そのままじゃない」


 悩むこともないとニーアは言い捨てる。ユグドラウスの塔自体の異空間、ルイノルド達を飛ばしたことから答えは明白だった。


(まったくその通りだけどさ、そんなどうでも良さそうに言われるのもなあ)


「あーでも今思えば森の中だったから、地素もありか」


 ユグドラウスの塔は森の中にあったことから、連想して地素という答えも出てきたが、ぶっぶーと既に答えが出ているにも関わらず不正解を知らせるユグドラウスの声にいらつく。目の前にいれば一発ぶん殴る所だったが、それも叶わず心の中で殴っておいた。


(なんか不穏なこと考えた? ま、まあ地素といえばグノマスでスルハ砂漠のそれだと推測するよ)


 何か感じ取ったのかユグドラウスは慌てて話を変える。そもそもの話がスルハの楔の話だと思い出し、眠りに落ち掛けた頭を降り起こす。


「そうだった。でなんでわかるの? 地っていうなら砂漠じゃなくて緑溢れる大地って感じなんだけど」


 ニーアの頭に浮かぶ情景には青々とした肥沃な大地がイメージされていた。だが、ユグドラウスの推測はまったくの逆で死の砂漠を指していた。


(まあ普通はその通りだと思うよ。けどさ、そんな栄養たっぷりな土壌で動物もたくさんいるってなかったら人間はどうすると思う?)


「そこに村なり作って……あ」

 

 途中でニーアは気づいた。当然そんな肥沃な大地であるならば人間が住み着くことは容易に考えられた。だが、最初の会話を思い出すと、グノマスは人間嫌いだと言う。それならわざわざ人間が集まる土地にいるわけがなかった。


(ご明察。環境特性上、砂漠地帯があるのは仕方ないんだけど、人の住まない土地ってことでノグニスは十中八九、砂漠を選んだのだろうね)


 確かに納得がいった。人間嫌いなら人が住まない土地を選ぶのは当然だった。だからといって塔と人の存在は関係があるのかと疑問はあるが、ただの好きずきなのだろうとニーアは結論を落とし込んだ。


(それでも昔は国があったてのは予想外だったんだろうけどね。場所変えることできないし。語弊があるかもしれないけど、今は静かになって嬉しいんじゃないかな)


 かつてその砂漠地帯にスルハ王国という小国が存在していた。そこは人間のたくましさか不毛な土地に国を作るとはノグニスも予想していなかったのだろう。滅亡した今、静かに過ごしていると思うと隠居を決め込んだ老人のようにも思えた。そもそも人という認識も正しいかは不明だったが。


(で、問題は塔の構造だけど……聞いてる?)


 ユグドラウスが嬉々として解説を続けようとしたがニーアの応答がない。


(もしかして寝た? 今からが楽しいのに……夢に出てやろうかな)


(やめとけと忠告しよう。殴られるのは目に見えている)


 フォルテが馬鹿真面目に忠告すると、想像ついたのかユグドラウスは押し黙った。



楔の属性云々は変更の可能性ありなのでそんなもんだなという認識でお願いします!

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