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蒼眼の反逆者 〜ウィル〜  作者: そにお
第3章 鮮血の巫女と蒼眼と緋眼
100/197

100話 その名は

 薄暗い無機質な吹き抜けのドーム内で周囲を所狭しと情報が映し出されていた。

 文字だけのものもあれば映像も映し出されていた。

 映像には塔から空に昇る光、そして一人の王が迎えられる瞬間の映像。


 少女は涙を流す。

 何度泣いたかわからない。

 数えることは無駄とやめた。


 光のモニターの一つが赤い表示に切り替わる。


『報告。観測値が報告レベルに達しました。詳細ログを取得』


 女性の無機質な音声がドームに響く。

「……そう。ありがとう。ナキ」


『……精神状態が不安定です。休息を提案』


 無機質ながらもナキと呼ばれた音声は少女の状態を心配したのか、設定されているのか休息を提案してきた。

 少女は吹き出す。ただとても乾いた笑いだった。


「まだ不安定になるほどの心はあるんだ。言われた通り休むよ」


 休むといってもその空間には似つかわしくない木造の椅子しかなく、背もたれに背中をつけ床から足を離し足を抱えるように腕を組む。


 照明がその部分だけ暖色系に切り替わり照らす。

 暖かさに包まれ少女は眠りについていく。

 

「オルリが来る前に起こしてね……」


眠りについているところをあいつに見せたくない。

早く会いに行こう。

邪魔される前に。


 少女は意識を手放す。


『了。良き夢を。アリスニア』


 中心に浮かぶ光の球体の世界地図は拡大し、テイントリア大陸北西を赤く点滅させていた。



――――ミリアン王国


 直ぐに王国の再興が行われた。

 国民の内政不安は国王の訃報によって哀悼の心へと移された。

 それほど信頼された王の死は衝撃だったのだ。


 同時にローウェンとヴィクタ―についても国を守った英雄として国が正式に葬儀を行った。

 賊と戦った勇敢な王子と騎士として。

 本当の事実は隠される。

 ティアは真実を描きたいと言ったが皆苦笑いしかでなかった。

 少なくとも国が安定するまでやめてくれとしてなんとか収めたのだった。


 講和条約は正式な締結はまだだったこと、執政者が交代したことで即刻破棄を宣言。

 思いのほかアストレムリが抵抗することなく駐留していた兵は本国へと引き返していった。

 そのあっけない退却は目的を達したのか、どうでも良かったのかと思うほど早かった。

 新しい聖帝グレイの考えはこの時点では不明だ。


 あれだけ息込んだにも関わらず無理に反抗してくる気配がない。

 まるで今ではないと言わんばかりだった。

 もちろんミリアン国民はアストレムリの実質支配を逃れ浮かれていた。

 目下、国の再スタートということもあり自分たちの生活のほうが優先事項が高いというのも事実だった。


 良くも悪くも国はすぐに安定するだろう。

 即位したベアトリアは演説において、蒼眼の英雄、ウィルの存在と加勢を明らかにし、イストエイジア国主導のリーベメタリカ構想への参加も正式に公表となった。


 この宣言において大陸の支配構造は未だ沈黙を保つ地域を除けばアストレムリとリーベメタリカの二大勢力で分けられることになった。


 そして、もう一つ、蒼眼のウィル、ニーアというエファンジュリアの正式な戦争への参加は更なる戦争の激化を予想し真紅のエファンジュリアと蒼光のエファンジュリアの対決構造も取り立たされ、報道を賑わせた。


 さらにとある諜報部の頭が余計な情報を流す。

 蒼の災厄とごっちゃになってて、ここらで統一しようと。

 恐らくそれは冗談だったのだろう。だから本人も何も言わなかった。

 

 当然、この時点では広まりは悪くウィルのこれからの行動によってそれは知れ渡り定着することになる。

 世界の一大事の中心にいた蒼、巨大な力に抗う蒼。

 その存在を。


 以降、名を知らぬ者はそう呼び、名を知るものの二つ名代わりに呼ぶ事になるだが、それはこれから続く反逆で紡がれる物語の始まりに過ぎない。

 

 【蒼眼の反逆者】


 その反逆がどこまで向かうのかこの時点では誰にも予想などできなかった。

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