キミの決意に応えよう。
鍋にオリーブオイルを熱する。ニンニクと唐辛子を投入し、焦がさないようにプチプチいわせて香りをたたせる。香りが立ってきたら、白ワインとトマト缶とタマネギのみじん切りを投入し、軽く煮てから、塩とバジルで味を調える。そこへイワシ、シーフード、キノコ、くし切りのタマネギを投入してコトコトと煮る。
今夜のマカナイーノはがっつり系ーつまりメインーで、“イワシのトマト煮”だ。チェリーレッドのオーバルのルクルーゼにトマトの赤がよく映える。
このメニューは、ソースが余ったら、翌日の怜那の昼食にパスタに使って、最後までキレイにいただく。魚はサバやサンマを使うこともある。
子どもたちは魚があまり好きではないので、子どもたちには肉を用意して、怜那だけ、コレを食べるのだ。つまり、表メニューに入れられないのでマカナイーノである。
「またソレ作ったの?俺、そういうのヤダ~!」
キッチンを覗いた翔が顔をしかめる。
「私が食べたいだけだから。気にしないで。」
そう言うと、翔は何も言わなかった。子どもたちは、ミニステーキなのだ。
「どうしてママだけ?」
テーブルにトマト煮の皿が登場すると、紗雪が案の定、お決まりの一言を発する。
「紗雪はイワシ食べないじゃない。」
「食べたい~!イワシも一切れだけ食べるから。」
紗雪はトマトの味が好きなので、シーフードや野菜など、他の具はたくさん食べる。なので、頑張ってイワシを食べてでも、ご相伴にあずかりたいのだ。
「ママ!お願い!」
今すぐ取り分けてくれと言わんばかりだ。紗雪としては、怜那が食べるものは、自分も食べたい。怜那の皿に載っているものは、自分の皿にも載っていないと気が済まないのだ。
「ヨシ!キミの決意に応えよう。」
怜那は、紗雪が魚を食べると言ってから分けることに決めているのだ。ニヤリと笑ってイワシを取り分けると、紗雪は怜那の手を目で追っている。好きな具を取り分けてもらえるのを待っているのだ。
「エビ欲しい。ムール貝も。」
「ハイハイ。」
紗雪が言うことを予測して、多めに盛ってきた皿から取り分ける。
「いただきまーす!」
紗雪は満面に笑みを浮かベて食べ始める。
「ママが魚の日は、俺のは焼き魚にしてくれない?」
突然の翔の一言に怜那と紗雪は顔を見合わせる。というのは、相川家、恭兵以外は焼き魚が苦手なのだ。
「…なんだか急にサンマとか、食べたくなって…。」
「そう。じゃあ、次の魚の日はサンマ焼こうか?」
「うん。お願い。」
急に魚に目覚めた翔だった。