ママ似が嬉しい。
プシュッ!
夕食やら入浴やら、バタバタとした夕方が過ぎて、子供達が自室に引き上げ、ホッとしたところで怜那はビールのプルタブを開ける。そして、急いでフライパンを洗って、料理の湯気が立ち上るうちにテーブルにつく。
そう。料理というのは、マカナイーノだ。静かに箸を持ち、そっと口に運ぶ。
「ヨシ。なかなかだわ。」
ひっそりと悦に入る。ササっと作ったものが美味しいのは、なかなか楽しいのだ。本日は、シラタキのギンピラ。食べやすい長さに切ったシラタキをダシと白醤油で炒め煮にしたものだ。きんぴらといえば普通の赤い醤油を使うところだが、シラタキの色を活かすために白醤油を使う。だから呼び名も“きんぴら”ではなく“ギンピラ”。辛味も、シラタキの色を活かすために柚子胡椒だ。白醤油の上品な風味が柚子胡椒をいっそう引き立てる。
「ママ。ナニ食べてるの?紗雪も食べる!」
自室にこもっていたはずの紗雪がやってきた。あっという間に箸と取り皿を用意して、隣に座る。
「おいしー!これ、いつ食べても美味しいよね。レギュラーメニューに入れないの?」
「んー。みんな、どうだろうね。明日にでも付け合わせに出してみようか?」
「うん!お兄ちゃん、案外こういうの好きかもよ。てことは、明日も食べられるの?出して!出して!」
息子の翔は好き嫌いやら食わず嫌いが多いので、なかなか難しいため、出すのをためらうこともしばしばなのだ。
ガチャリ。リビングのドアが開いた。夫の恭兵が帰ってきたのだ。接待で少し飲んできたが、家で少し飲みたい時間だ。
「ただいま。お。うまそうだな。」
テーブルに目をやって嬉しそうに言う。急いでスウェットに着替えてテーブルにつく。恭兵は、紗雪の次にマカナイーノのファンなのだ。
「水割りがいい?」
怜那の問いに頷くと、箸や小皿と共に、水割りのグラスが恭兵の前に並ぶ。
「これ、美味いよな。ところで、紗雪はまだ起きてたのか?」
恭兵がシラタキを口に運びながら言うと、紗雪はイタズラっぽく笑う。
「食べたかったんだもん。」
「困ったヤツだな。」
紗雪はますます笑顔になる。恭兵が甘いことを知っているのだ。
「そうだ。マカロンあるんだよ。ママが買ってきてくれたの。」
「そうか。貰おうかな。紗雪、出してきて。」
「はーい。」
紗雪が箱を開けて見せると、恭兵がキレイな水色のを手に取る。塩バニラだ。
「なんか、ピンクのが多くないか?」
「だって。ねー?」
怜那と紗雪が顔を見合わせて笑う。二人は、フランボワーズのマカロンが大好きなので、どうしてもフランボワーズが多くなるのだ。
「お前達、好きな食べ物が同じだし、顔もそっくりだな。ますます似てきたんじゃない?」
恭兵の言葉に得意げになる紗雪だった。