贅沢ランチ。
秋が深まり、昼間もコートが欲しくなってきたこの頃。今日のお昼は、朝の部活を終えた紗雪と二人きり。恭兵はゴルフ。翔は弁当持参で塾。
「今日のお昼ごはん、何?」
「んー。スパゲッティグラタンの気分。」
「乗った‼︎具は?」
冷蔵庫の中身と相談する。夜に酢牡蠣にしようと買った牡蠣がある。ほうれん草もある。今夜は、おひたしを作ることにしよう。おひたし用に茹でたほうれん草から、グラタンに少し使えば、夕飯の手間も省ける。
「決まり!牡蠣とほうれん草。」
「やったあ!」
紗雪が歓声をあげる。ランチに出かけたと思えば、材料費なんて安いものだ。
相川家では、グラタンを好むのは女子チームのみなので、これもマカナイーノに分類される。
ニンニクとタマネギを弱火で炒め、透きとおって来たら白ワインを入れ、キノコや、牡蠣を軽く煮て、牡蠣だけ取り出す。さらに白ワインと小麦粉を溶いたものを入れる。これがダマにならないコツなのだ。とろみが出てきたら牛乳をいれて少し煮詰め、塩、胡椒、バジルを入れて味を調え用意しておいたスパゲッティを耐熱皿に入れ、ホワイトースを流し入れる。先ほどの牡蠣や、茹でておいたほうれん草を乗せ、さらにとろけるチーズを乗せたら、オーブントースターで10分足らず。アツアツのスパゲッティグラタンの出来上がりだ。
「ほいひー!」
ハフハフと食べると、寒くなってきたこの気候も愛おしい。マグカップのダージリンも、じんわりと体を温めてくれる。
添えられたミニサラダがなんともぜいたくな感じを演出している。といっても、ちぎったレタスにミニトマトと乗せただけだが、有るだけで彩りになる。
「カフェみたいだね。」
「そう?」
紗雪の言葉に嬉しそうに返す怜那。
「カフェだから、デザートは?」
「何よ~。そっち?」
苦笑いしながら、一瞬だけ席を立つ。
冷凍庫から、ガトーショコラを二切れ取り出して、一切れずつ大きめの皿に乗せておき、席に戻る。スイーツ好きで食べ盛りの翔や紗雪のために、ガトーショコラは、多めに焼いて、冷凍ストックしてあるのだ。市販のものばかりだと、金銭面、健康面ともに心配なので、極力、切らさないようにしているのだ。
食べ終えたグラタン皿を下げて、先ほどの小皿をトレーに乗せて、テーブルに運ぶ。アイスや板チョコ、スプレーのホイップクリーム、缶詰めの果物もトレーに一緒に乗っている。
「当店のデザートはセルフサービスです。」
怜那が言うと、紗雪が笑顔で頷く。食べ慣れたスイーツも、デコるだけで気分が上がる。
「いいこと考えた!」
怜那が自家製のラズベリージャムをお湯で溶き、皿の空いたスペースにスプーンを使ってハートやドットを描く。
それを見て、紗雪の目がハートになった。
「紗雪もやるー!」
相川家の女子チーム、こういうことを始めると止まらない。皿洗いを忘れて、“製作”に没頭する二人だった。