好きになったー!
白菜の白い芯の部分をを重ねて、鍋の深さに合わせて切る。それを鍋の中に詰めるように入れていく。ダシと酒と醤油をバランス良く入れる。隠し味に砂糖を小さじに半分ほど。これで味にコクと丸みが出る。量は少なめが良い。白菜の水分がたっぷり出るから。
蓋をして、火にかけ、少し煮込む。白菜の柔らかい部分と牡蠣を入れてから、再びほんの一瞬煮込んだら、蓋をして火を止める。余熱に一仕事してもらったら完成だ。あとは食べる直前に温めるだけ。呼び名はシンプルに“牡蠣と白菜”と呼んでいる。白菜が品薄になってきたので、行く冬に名残を惜しんで、白菜を登場させたのだ。
何故これがマカナイーノなのか?相川家では翔だけが牡蠣が苦手なのだ。
今夜は翔の分の煮物は、昨日の肉じゃがをスライドさせた。2日目の肉じゃがは、捨てがたいものがあるので、皆も少し食べられるように、多めに仕込んであるので、ちょっとぜいたくな気分だ。
「やった!2日目の肉じゃがだ!」
案の定、翔の顔がほころぶ。メインは焼き鳥なのだが、翔の目は肉じゃがの鉢ばかり見ている。
「いっただっきまーす!」
一口目で大きなジャガイモをほおばる翔、ぷりぷりの牡蠣をハフハフする紗雪。二口目で二人とも焼き鳥に手を伸ばす。
「お。白菜の味噌汁じゃん!」
「もう暖かくなってきたからね、今日は白菜の食べおさめ。」
「じゃあ、なおさら味わって食わないとだな。」
さてさて。片付けも済み、子供達が自室に引き上げたところで、お一人様タイム。“牡蠣と白菜”がまだ残っていることを思い出した。ベビーピンクのルクルーゼには牡蠣も白菜も煮汁も、程よく残っている。
「イイこと考えた!」
煮汁が勿体無いと、常々思っていた怜那は、麩を一緒に煮ることにしたのだ。本当のマカナイーノは、これなのかもしれない。麩を幾つか入れて火をつける。ビールをチビチビやりながら待つこと数分。蓋を開けてみると、煮汁がほとんど、麩に吸われているのを見て、ニンマリする。
小鉢に盛ってハフハフといただく。メインの白菜や牡蠣はもちろん美味しいが、この麩がたまらない。
「うーん!最高!」
ーツンツン。
「?」
後ろからつつかれて振り返ると紗雪が口を開けている。煮汁の匂いにつられてやってきたのだ。
「麩、嫌いって言ってなかった?」
「今は食べたいの!」
“病気”のため、怜那が食べているので食べたいらしい。
半信半疑で箸で半分の大きさに切って紗雪の口に運ぶ。
「おいし〜い!もっとちょうだい!好きになったー!」
“病気”により、苦手を一つ克服した紗雪だった。




