表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/35

「帰ってきてよかった。」

本日のマカナイーノは“キムタマ”。キムチの目玉焼きだ。熱して油を敷いたフライパンにキムチを輪になるように広げて、輪の中に卵を落とし、フタをして待つこと数分間。黄身にうっすらと白い膜がかかると食べ頃だ。香ばしい白身とキムチが程よく絡み、なんとも美味だ。さらに半熟の黄身がたまらない。ビールを片手に熱いうちにハフハフといただく。

「ママ?」

紗雪の声にハッと我に返って振り返ると、ニヤリと笑みを浮かべる紗雪が立っていた。

「ちょーだい!」

笑顔で待機する紗雪に苦笑する。このおねだり顔は、幼稚園の頃から変わらない。

「幼稚園の頃と変わりませんねー。」

紗雪の口の中に運びながら言うと、笑顔でモグモグしている。その様子を見ながら怜那も食べる。…と、ピリッと真顔になる。

「次は紗雪の番〜!」

「あ…。」

紗雪は、一口ずつ交代に食べたくて、きちんと怜那の手元を見ているのだ。

「ママのおつまみなんだから、いいじゃない。」

「紗雪も食べたいんだもん!女子会よ、女子会!」

お年頃なのか、近頃は“女子会”にこだわるのだ。


「また酒盛りしてんのかよ。…なんだ。キムチものか。」

お茶を取りに来た翔はチラリと覗くと、マグカップに麦茶を注ぎながら呟いた。翔はキムチが苦手なのだ。

「あの、普通の目玉焼き、焼いてくれない?」

部屋に戻ろうと行きかけた翔が戻ってきて、せがんだ。こちらも幼稚園の頃のおねだり顔と変わらない。「ウタギたんにして〜!」とリンゴのウサギをせがんだ笑顔と重なる。

…懐かしいな。

二人の顔を見て、クスっと笑みがこぼれる。


「お!いい匂いだな。」

フライパンを火にかけたところで、恭兵が帰ってきた。キムタマの匂いが残っているのだろう。

「親父、早いじゃん。」

「お前たちが隠れて美味いモノ食ってないかと思ってな。」

恭兵がニヤリと笑うと、子どもたちも笑った。

「キムタマで女子会してたの。」

「俺は普通の目玉焼き焼いてもらうところ。」

「そうか。俺にもキムタマ焼いてくれ。…水割りがいいな。」

怜那が目玉焼きの皿をを翔に差し出し、キムタマの用意を始める。紗雪はコースターと、氷の入ったグラス、ウイスキーを恭兵の席へ運ぶ。


「うまいな。」

熱々のキムタマを頬張ると、恭兵は上機嫌だ。

「帰ってきてよかった。また俺に隠れて美味いモノ食われるところだった。」

「もう、パパったら。」

恭兵がイタズラっぽく言うと、怜那が笑った。つられて子どもたちも笑った。遅めの団欒で更けていく夜だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしくお願いします。☆小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ