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果実を齧る  作者: ニカ
3/8

林檎・一

 林檎が空から降ってくる夢を見ると、それは失恋の知らせである。

 なんてことを、マーサが言う。


「もう味見したの?」

「なんのこと?」

「石森一真」

「人聞きの悪いこと言わないで」


 わたしはピシャリと言い放って、身体に悪そうな味のするポテト・フライを口に放り込んだ。マーサはグリーン・スムージーを飲みながらスマートフォンを弄る。絶対わたし以外の女友達とラインしてる。


「桃は食べたよ」

「はぁ。桃? 果物だよね?」

「それ以外に何があるの? あ、やっぱりいい。聞きたくない」

「ぼくをなんだと思ってる?」


 艶やかに笑う目の前の人間は、男だ。彼は所謂オトメンという部類の人間で、ややこしいのが、ゲイではないということ。女装趣味があるわけでもない。ただ美容に恋愛にファッションに思考に、女の子寄りの感覚を持ち合わせている。そして、恋愛対象も女の子である。


 恋多き男だけれど、女の子の気持ちがわかるマーサは、あまり修羅場になることもないそうである。むしろ元カノと今の彼女が共通の知り合いだったとしても、つかず離れず仲良いらしい。そして、彼は長続きしないくせに、いつだって彼女がいる不思議な人だった。


「マーサって本当に遊んでると思う。わたしだったら頭がおかしくなってる」

「え。そんなのお互い様でしょ! きみこそ早く石森一真とくっつきなよ。きみたちのまどろっこしい関係こそ頭おかしくなるって」

「ふざけないで。一緒にしないでよ」


 お互いスマートフォンを見ながら片手間に会話をするのはいつものことだった。幼馴染みの腐れ縁とはまさにマーサのことを指すのだろう。なんだかマーサといると居心地がよく楽であることを通り越して、逆にどう居ればいいのかわからなくなる。


 言えなかった。林檎の降る夢を、つい今朝方見たことを。

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