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第八話

いつも読んでくださりありがとうございます!

脱字等ありましたらコメントにてお願いいたします。

 はい、どうも、華川里佳、花のJK兼、黒の剣士(通り名、自称)です。ブラックライトのライトセーバ-だから黒の剣士。陳腐ですね。

 ただいま寮の自室からお届けしております。同室者が今不在ということで、寮にある自分の荷物を先にまとめて来ることにしました。荒らされた部屋で物想いにふけるヒロイン、といえば悲劇的な響きですが。もちろんそんな繊細な神経は持ち合わせていません。というより思い出すほどの思い出がないです、だってこの世界まだ三日目ですよ? 三日で挫折したりんごダイエットくらいの思い入れですね。ひたすらりんごは辛かった(遠い目)。

 さて、寮の自室では昨日のことが確かに夢ではないという実感は持てました。エグモント様に会えたのは夢ではなかったということ。お近づきになる、いや、魔王になって逆らえないエグモント様と職権乱用していちゃいちゃする野望への道のりはまだまだ遠いですが、今の私が転生してきた世界にちゃんと存在してるってことが確かめられて大満足。

 さて、そろそろ少ない荷物をまとめ、寮監さんにご挨拶に行くことにしましょうか。

「あら、華川さん。寂しくなるわねえ」

 言いながら寮監さんは心の底からほっとした笑みを浮かべています。皆さん襲撃のことなんてご存知ないんで、私は夜中にヴァン・ヘイ〇ンのJUMPを最大音量でながして一人ヒャッハーした挙句窓を破壊した危険人物になってます。はいどうもその節はすみません。

「たった二日だったから、今月の寮費は免除ってことにしてあるわ」

「ありがとうございます」

 ありがたい。さっきチョットだけ鬼寮監とか思ってしまってごめんなさい。寮監さまはいい方です!

「それがね、今回窓が壊れちゃったでしょ? だからこれお願いね」

 あ、そうですよね。保険とかの類かけてなかったんで弁償しないと。まあ、窓ガラス二枚くらい大したことはないし。そして手渡された請求書の額をみてみると――。

「えっ? これ、丸の数間違ってますよね」

「見せてくれる? いえ、あってるわよ」

 え? なんなんですか、対魔仕様フェニックス社製造 謹製「宵の明星」って。これ窓ガラス? ほんとに? 見せられた請求書には、なんとびっくり、グランドピアノ一台分ほどの金額が並んでます。

「あの、これ分割でもいいですか」

 私はかすれた声でそう絞り出すのがやっと。前言撤回。やっぱり寮監は鬼。ハンターの給料、ほとんど返済に消えるんじゃなかろうか。そしてもうひとつ、私は確信した。それは!

 この世界の対魔技術、かなり遅れているようです……。あんな使い魔に割られるガラスにこんなに払うのは完全ぼったくり。飛び入り参加の私でもわりといい線行けるんじゃないか?


 さて、私の心のライフがゼロになったところで、礼拝堂に戻ります。今度はカイトさんが仕事で不在だとかで、愛想の悪い眠たそうなハンターが出てきました。黒髪はボサボサのまま。しかしそこは乙女ゲー、顔自体は、なかなかに上品な造りだとおもいますね。メガネは萌え要素の一つなので上乗せして、しかし眠そうで面倒くさそうな表情を減点して、まあ八十点(百点中)というところ。高得点かどうかはご判断にお任せ致します。

「お前が新入り?カイトから聞いてる」

「はい。華川里佳と申します。よろしくお願いします」

 ここの上下関係はそう厳しかないと思うんですが、一応先輩ということで礼儀正しくしとくのが筋でしょう。

「あ、そういうのいいから。部屋こっち」

「はい、失礼します」

 ザ☆無愛想。前の世界の、何故か土日祝日営業してないやる気ないパン屋のおっさん並みです。礼拝堂、といっても実質ハンターの本拠地なので、結構奥は広い。クリア後にみられるコンテンツの中に礼拝堂の内部のスチルがあって大体は把握していたけれども。マップはさすがに載ってなかったんだよな。おまけに要塞のような造りになっていて妙に通路が曲がりくねっている。これ中で迷うかも。

「ここだ。入れ」

「ありがとうございました」

 そう言って頭を下げて部屋に入ります。初対面の相手にそれはないだろって感じの態度のボサボサ野郎ともこれでしばしのお別れ。愛想笑いで随分口元が強ばってきたところだったのですがやっと一息つけそうです。部屋は、といいますと簡素な部屋には横に並べられたベッドが二つ。ふむ、私の名推理によれば二人部屋ですね。あとは同室の子がまともであることを祈るばかりです。私が部屋の入口でそんなことを思っていると、後ろから無愛想な声。

「何つっ立ってんだ。早く入れ」

「え、ああ、すみません」

 先ほどの眠たげなボサボサ頭でした。まだいたんだ。私が奥に入ると、ボサボサ頭は至って自然に私の横を通り、二つのベッドの窓際の方に倒れこんだ。

「昨日仕事で寝てないから。俺は寝る。あんまりうるさくすんなよ」

「えっ?」

 ちょっと待て。状況を整理してみますと、このベッドに寝るということはボサ頭の部屋はここ。そしてこの部屋は私の部屋。そこから導き出される結論は(三段論法)。私と同室? こいつが?

 いやいやいや、確かに乙女向きコンテンツではありますよね。急にヒロインは男子と相部屋になって、というシチュエーション。でもそういのは主要キャラとであってこんな顔も見たことないようなキャラが同室っていうのはただの事故でしかない! これだけプレイしたのに顔を知らないキャラ、しかもモブではない、なんてことはありえるんですか? いや、待てよ。そういえば。隠しキャラってちらっとネットの攻略サイトに載ってたような。エグモント様に傾倒しすぎて隠しキャラのルート開けてなかったのがここで響くとは。

 そんな私の葛藤も露知らず、同居人はすやすやと寝息をたてておりましたとさ。 

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