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第七話

 礼拝堂へ走り込むと、まずカイトさんの姿を確認。良かった、まだご存命。肩で息をしている私に気付いて、青い髪をなびかせながらカイトさんは駆け寄ってくる。

「どうした? もしかしてあの精力剤合わなかったか? サキュバス・インキュバス用は流石に人間にはキツいのかもしれん」

 え、ちょ、あれ人間用じゃないんですか、そうですか。それを一七才の麗しい乙女に渡したんですか、あなたは。まだ使う機会には恵まれてないです。残念ながら。エグモント様との初対面がアレだなんて。ゴーグルで顔隠してなかったら失恋がほぼ確定してましたね。私は意を決して昨日の事を話してみた。

「寮が襲撃された? 怪我はなかったか?」

「はい。なんとか撃退しました」

「そうか。見かけによらず君も中々やるな」

 切れ長の目が細まる。なんとも笑顔が麗しい。守りたい、この笑顔(標語)。そしてカイトさんは悔しげに言った。

「あいつら、このところ条約違反が多いんだ。馬鹿にしやがって」

「そうですよね」

 設定資料集の百五十三ページに載ってた「異界・人間友好条約」によれば、「学校」、「寮」は守られるべき施設になっているんだけれど、この条約も人間の政府が支持率獲得のため形だけ結んだという色合いが強く、ほぼ張りぼて状態だ。

「しかも、学校で何とかミシェル君に絡まれてしまって。俺の親父の使い魔を可愛がってくれたな、なんてキャラブレ半端ないですよ。元々胡散臭いとは思ってたんですけどね、本編だと胡散臭い笑顔のままエンディングになってたので」

「ん? どういうことだ?」

「あ、すみません。とにかく、日が暮れる前だったんでやり過ごして来たんですが、もう寮に住むの厳しいです」

 そう。魔物だけでなく、騒音騒動で人間も敵に回してしまった今、あの寮にはもう戻りたくない。襲撃されても寮に住み続けてた華川里佳(元)みたいに神経図太くないです。

「今、ハンターの一人部屋は空いてなくてね。どうするかな」

「相部屋で全然大丈夫です!」

「そうはいってもなあ」

「あの寮よりひどいところなんてありません! 毎日あれじゃあ寝られなくてエグモント様とお会いできるまでには肌がボロボロに」

「なんだって?」

「あの、いえ。なんでもありません」

「可哀想に。余程怖かったんだな。まだ少し錯乱しているのか」

 カイトさん。その憐れむような目、ひどくないですか。しかし結果オーライ。カイトさんは折れてくれた。

「分かった。話をつけてくるからここで待っているんだ」

 しばらくして戻ってきたカイトさんは右手の人差し指と親指で丸を作った。

「よかった! ありがとうございます」

「ここに住むからには、それなりに働いて貰うぞ」

「もう学校行かずにハンター業だけでいいかと思ってます」

「それはダメだ。お預かりしている以上、親御さんに申し訳が立たない」

 チッ。この人、サキュバスのハーフなのになんでこう頭が固いかな。心の中で舌打ちしたが、ここでカイトさんの機嫌を損ねるのは得策でない。そう判断した私は素直に頷いた。



 


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