第四話
いつも読んでくださりありがとうございます。
「すみませーん、これ下さい」
「はいよ、ええ、お代はこちら」
電卓に表示されたのは結構な額で、私はドラ息子の家に先に空き巣に入ろうかと真剣に思うくらいだった。でも奴らは主要キャラ。下手に動いて運命を変えすぎるとエグモント様救出計画が無駄になる。背に腹は代えられない。私はスッカスカになった財布を片手に微妙な笑顔を浮かべながら店主に疑問をぶつけた。
「夜でも営業してるんですね、助かりました」
「はは、奴らに萎縮して体を小さくして生活すんのも癪だろ? 夜開いてる店があるだけで皆、ちったあ気持ちが強くなるかな、と思ったのさ。しかし客はほとんどいないがね。嬢ちゃんみたいに根性のあるやつは中々いないんだよ」
赤ら顔で頭の禿げた店主は得意そうに帳台の下からボウガンを出した。しっかり聖別した矢がセットしてある。自分の身は自分で守るというのがこの世界の住人には染みついているらしい。
「お嬢ちゃん、気を付けな。あまり夜遊びせずちゃんと帰るんだよ」
「いえ、助かりました。ありがとうございます」
はい、華川里佳です。状況を説明いたします(敬礼)。文字通りに夜の街を「飛ばし」ながら、向かった先は、というと電器店です。ゲームではもちろん立ち寄ることも無かったんですが、世界観は現代に近くショッピングモールでのおデートシーンも有ったので、あると思ってました。手に入れたのはこれ。樹脂硬化用のブラックライト(特大)とスタンガンだ。
えーっと、こっちの世界の論理は分かりゃしませんが、何故夜だけ魔物が現れるのか。まずこれを考えるべきでしょう。
はい、ここで問題。昼と夜の違いは? 迷ったときは定義に帰りましょう。証明問題の基本、これ大事。はい正解! 太陽が出ているかいないか、が定義に基づく最大の違い。といっても、この世界の技術レベルは、ほぼ私が元いた我らがニッポンと変わらない訳ですから、夜も電気が通っていて明かりは点きます。
太陽光と電飾の最大の違い。それはお肌の大敵紫外線! 前世では紫外線を忌み嫌い、なるべく屋内にこもって生きてきた訳ですが、今はエ○ザイルも焼き尽くせそうな程のブラックライト抱えて街を徘徊する羽目に。もちろん作業用ゴーグルも忘れずに買いましたよ。こういうのはきちんとJ○S規格のを買いましょう。
もう一つの武器、スタンガンは対人間の護身用。魔物が溢れて崩壊しかけた世界。アポカリスものでは人間が一番危ない。皆さん知っての通りです。
大体、魔物って魔力のエキスパートなんだから正々堂々と魔法や霊装でやりあって勝てるはずない、と思うんです。レスリング初心者が試合に出て丸腰で吉○沙保里にタックル仕掛けにいくようなもんです。確実にやられる。
じゃあどうするか。レスリングで戦うからいけないんです。勝ちたいならヨーヨーなりオセロなりパ○ドラなり自分の得意なフィールドに持ち込んでしまえばいいんであって、所詮素人が鍛えても吉○ネキは倒せません。はいそこ、チートとか言わない!
魔物が霊装を使うなら、こっちは文明の利器でぶっ潰す。手段なんかどうでもいい、魔王倒して私がその座につきエグモント様に忠誠を誓わせてあんなコトやこんなコトさえ出来ればそれでイインダヨ、グ○ーンダヨ。
飛行もいいんですが、夜の上空は結構冷え込むので帰りはブラックライトつけて雑魚どもを追い払いながら寮まで徒歩。門は案の定閉まっていたため、そこだけ「飛行」を使い窓から自室へ。明日に備えて早く寝よう。