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第一話

転生ジャンルにとうとう手を出してしまいました。

 乙女ゲーを友人に押し付けられまして。

 女の人間関係というのは面倒なもので、これは適当な期間でクリアした上に(遅すぎても早すぎてもいけない)、それぞれのエンドや攻略キャラについてはもちろん、サブキャラについても一通りの感想を言えて、友人が小ネタをぶっ込んできたときに笑えるくらいにはやっておけ、という無言の圧力です、はい。


 プレイ時間を少しでも短縮すべく、ネットの某百科事典で調べた結果によれば、いわゆる人外設定というやつで、顔だけはいいが面倒臭そうな性格の悪魔だの流行りの吸血鬼だのが何故か知らないが転校してきたヒロインを気に入り、ヒロインは断れない性格のせいで押し流されるようにゴールイン、という眠くなるようなストーリーだ。

 skip、skip、と連打してストーリーも歯が浮く台詞も読み飛ばし、ひたすらネットで調べた正解の選択肢を選びつづけ、お遊び程度の戦闘をこなすだけの簡単なお仕事☆(※ただし時給はでません)を何とか眠らずにこなしていったのだが、私はある場面で刮目した!


 攻略キャラどものご実家(笑)に使える魔王の腹心の部下、エグモント様が、どストライクでした(※攻略不可)。

 ビジュアルは当然のこと、正直割りといっちゃってる魔王を補佐する頭の良さ、クールだが人間のヒロインをさりげなくアシストしてくれる心の広さ、そして魔王に代々仕え、任務に忠実な忠誠心。

 

 私は身もだえた。運命の出会いとはこれだ!

 二次元と三次元の狭間、そんな物に悩む日が本当にくるとは思わなかった。

 エグモント様が出てくればskipを止めて、数少ないシーンを丁寧に堪能する。ああ、今日もお麗しい。


 しかし、その楽しい時間は、アホな魔王のお陰で無惨にも砕け散ったのでした。人間のヒロインとの恋愛なんてパパ許しません!という極めて個人的なご家庭の事情で人間全体を敵視。そのバカ親っぷりを発揮してエグモント様を連れて戦いを挑むも敢えなく敗北。


 いやね、いいんですよ。魔王が倒されようが、謎の力で生き返って改心してドラ息子と感動の再会しようが。そんなのはどうでもいいんです。好きにやってください、ヨカッタデスネ。

 私が許せんのはだな、そんな大魔王様を庇って戦闘の最中にエグモント様が、エグモント様があああっ!

 しかも、魔王のチート性能で生き返らせるのも可能なはずなのに、何故かエグモント様放置。

 何なの? バカなの死ぬの? あ、一遍死んだか。死んでもバカは治らないって。これ豆な。


 最悪な気分でゲームをやり終えた私は、寝不足でふらふらした頭で友人にゲームを返すべく家を出ました。また何故かタイミング良くそこに突っ込んでくるトラック。その時私が思っていたのは、多分「魔王絶許、いつか倒す」だったんでしょう。


 いやー、最後の願いっていうのは案外叶えられるものなんですな。そのゲーム内に転生したみたいです。わーい、パチパチパチ。

 でもね、神様、このポジションはどうかと思うんですよ。いやね、いいんですよ。普通は誰しもこの座を望むんで。乙女ゲーってそのためにありますし。

 でも、私が愛してやまないのは魔王の従者のエグモント様なわけで。お前らみたいなぬるま湯で育ったドラ息子に興味は無いんだよ。

 転生なんだからさ、もうちょっとエグモント様に近い席に入れてくれても良くないですか?なんでそもそもの騒動の原因、ヒロインの華川里佳に転生してるんだよおぉ……。


 そう当初は思っていたのですが。ヒロインの華川さんは案外高スペックキャラでして。まあ、化け物と恋愛しちゃえるくらいですから? 超高性能な霊感装備に新体操部で鍛えた軽く柔軟な体は中々のものです。

 それに。エグモント様のためだけに攻略本だけでなく、設定資料集までも購入しましたからね。案の定エグモント様についてはほとんど載ってなかったけど。お陰さまで人間sideも化け物sideも、一般ピープルが知り得ない事実まで精通しておりますです、はい。人間が持っている対化物用の武器の性能からどら息子の足のサイズまで。

 知は力なりって本当。ここを読んでらっしゃる皆さんには言うまでもないですが、ゲームする上でもっとも重要なのは情報です。


 おっとここらで軌道修正。

 要は、エグモント様の死を回避するためには魔王倒せばいいんじゃないか! むしろ私が魔王になってエグモント様の忠誠心に物言わせて色々とアレな命令して大人なプレイを……とか思った訳じゃないですよ。十八禁じゃなく十七才以上推奨ってことはやりすぎると朝チュンに飛ばされてしまうからね。いつも思うが一才の差ってそんな重要かい?


 そんなわけで、この世界のただの人間には興味ありません。人類が魔物に浸食されて滅亡しそう、なんて事は華麗にスルーして、魔王の座を手に入れる。それが私の目標となったのだった。


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