とある村娘の恐怖体験
これは少し前、恋人と別れた頃の話です。
数日前から私は仲の良い友達数人と森の国に来ていました。
友達が私のためにその国への渡航計画を立ててくれたのです。
今では珍しい森での生活と村の生活では考えられない豪華なコテージでの数日間は恋人との暮らしを忘れさせるには十分なものでした。
しかし、明日帰る段になってそれは起こったのです。
何が起こったのかは覚えていません。
ただ何かが起こったのです。
そして私はコテージを出て夢中で走っていました。
どこをどう走ったのかわかりませんがどこかのお屋敷か城に迷い込んだようで私は誰もいないまっすぐな廊下を走っていました。
ㇷと前に小さく扉が見えました。それは出口だと思って走っていくとその前に人が立っていました。
「おや、こんなところで何をしているんだい?ここは君が来る場所ではないよ?」
そういって声をかけてくれた老人の言葉に私は耳を貸さずにその扉に飛びつきました。
「御待ちなよ。そっちに行ってはいけないよ」
止めに入る老人を私は振りほどこうと振り返りその顔に少し疑問が残りました。
どこかで見たような気がするからです。
「君は来た道を帰りなさい。何があったか知らないがこの先に行ってはいけないよ」
そういって私を扉から離す老人の顔を凝視してふと思い出したのです。
それは近所に住んでいた世話好きな隣のおじいさんでした。
でも、彼は私が小さいときに死んだはずです。
それに気が付いたとき言われたとおりに振り返って走ろうとして・・・
彼を扉に突き飛ばしました。
戻るぐらいなら私は扉の先に行きたかったからです。
そうするとどうでしょう。
彼はバラバラになって一言いいました。
「痛いなぁ」
彼は消え、扉がひらいたではありませんか。
その先は直角に曲がって斜めに上がっていく坂の廊下が続いていました。
それをドンドン進んでいくと廊下のつき当たりの壁にまた扉がありました。
その前に椅子がありそこに老婆が座っています。
それは数年前に死んだ祖母でした。
「あぁ、ここまで来たのかい。駄目だよ。この先に行ってはダメ」
「ごめん、でも私その先に行きたいの!おばあちゃんどいて!」
「駄目だよ。あなたが行かないといけないのはその後ろの道さ。大丈夫怖いものと会わない道を教えてあげるから。お戻りなぁ」
その言葉に私はまた来た道を見てやはり前の扉に飛びついたのです。
魅力的な話でしたがどうしても後ろからくる恐怖に勝てなかったのです。
すぐに扉は開きました。
「行ってしまうのかい?」
そういう彼女はげっそりとやせ衰え目や口が黒くなり薄くなって消えてしまいました。
怖くなって私は扉の向こうに走り出します。
そして左手に坂道の廊下が続いていました。
そのあと、死んだ弟に数日前に見送ってくれた両親、そしてさっきまで一緒だった友達たちが止めに入りますが私はその静止を振り切って走り続けました。
どれくらいたったのでしょうか。
まっすぐになった廊下で何かにつまずき私はこけてしまいました。
すると横から光が差したのです。
そこが出口だと思いました。
そちらに行こうとしてそこに少女が何か丸い板を持って立っていたのです。
光のせいで顔が見えませんが知らない子だと思いました。
でも、どこかで見たようなとも思います。
「あらら。ここまで来ちゃったんだ。だけど、この先に行っちゃだめだよ」
その少女をどこかで見たのだろうかと思ったのですが思い出せません。
でも、どっかであっているか見ているんだろうと思いました。
「通してください。その先に行きたいんです!」
懇願する私の声に顔が見えないのに彼女が困った顔をしているのがわかりました。
すると後ろから声がしました。
私を呼ぶ声でした。
その声に私はその出口に向かって走りかけ
「こうなりたいの?」
彼女が掲げる何かに移るそれを見て私は恐怖で立ち止まってしまいました。
ぐちゃぐちゃとした顔がそこに移っていました。
だけどそれはなぜか私だとなぜかわかったのです。
恐怖に足がすくんでしまいました。
するとかなり近くで私を呼ぶ怒鳴り声が聞こえました。
振り返りそこにいる人に対する恐怖で私は固まり、その人が突っ込んでくるのがゆっくりと感じられたのを覚えています。
しかし、何かに片手を引っ張られて逆の腕に衝撃が走って・・・そのあとの記憶がありませんでした。
どれくらいたったのでしょうか。
私は元居たコテージで目が覚めました。
心配そうにのぞき込む友達たちは安堵していました。
そんな友達に私がどこでいたのか何があったのか聞いてみました。
困った顔の友達たちはぽつぽつと教えてくれました。
私はこの国の国境線である崖の上で腕を大きく切り付けられ倒れていたそうです。
そしてその崖の下でナイフを持った飛び降り死体が見つかったそうです。
それは元恋人でした。
私に暴力をふるい続けていた恋人だったのです。
それに恐怖していましたがふと昨日の不思議な体験を友達と何をするでもなく残っているこの土地の人に話しました。
こういう不思議な体験はしゃべったほうが忘れやすいと聞いたからです。
そして、最後にあの少女はだれだったのかと話をくくりました。
正直答えが返ってくるとは思っていなかったのですが
「それは、あの肖像画の人ではないですか?」
友達たちが誰だろうねぇと話すその横から声がしました。
見るとこの土地の人は後ろの壁を指さしました。
振り返るとそこには小さな肖像画が確かにあります。
小さな女の子が一抱えある虹色に輝く大きな丸い何かを抱えて座っている絵でした。
「彼女はこの国の代表です。時折あの世に連れていく人を呼んで試すそうですよ。そして合格したらあの世へと連れていくんです。良かったですね。あなたは連れていかれなくて」
そういうと彼女はにっこり笑い、壁のほうに歩いて行って壁に吸い込まれるように消えていきました。
「え?」
「ん?どうしたの?」
「え・・・・えっと?さっきここに現地の人いたよね?話を聞いてたよね?」
「何言ってんの。さっき出ていったじゃない。話し始めたときは私たちだけだよ。それより早く荷物まとめて早く医者に見せないと」
黙々と荷造りをする彼女たちに
慌てて私は振り返ります。
そこには肖像画がありました。
さっきよりもっと笑顔な気がしますが、それは私の錯覚だったのでしょう。




