日陰期 ⅰ
罪
そっと 目を閉じても
それは浮かび上がる
奥歯を噛み締め 肌に爪を立て
額に汗が浮かぼうとも
それは消えない
それは 罪
夜半に私のドアを叩く
それは 嘆きのように
また 土砂降りの雨のように
ヘッドホンに心塞いでも
それは私を眠らせない
それは 罰
少年と灯
あるときは冷静さを
またあるときは アイデンティティを
何かのために 失ってきた
少年は 灯を見つめる
誰かの言葉が胸を打つことも
また 誰かの好意が 逆に胸に刺さることも
これといって 感じたことはなかった
少年は 灯を吹き消す
終わりは また別の
そこから繋がった何かの始まりであることは
それとなく これまで
飽きるほど聞かされてきた
しかし少年には 疑問があった
未だ終わる気配を見せない この命は
何の「始まり」を目指して
すり減っていくのだろう?
それは到底
生きている限りは
知り得ないものであった
少年は
また
灯を点した
地上
昔々、ある男が
地面から生まれた
時を同じくして
ある男が
空から生まれた
二人はいつしか大人になり
旅をし始めた
ある夜は荒野で
またある夜は海のそばで朝を待った
世界は広かった
果てしないもののようにさえ思えた
彼らが 巡り会いさえしなければ。