表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

魔王お出かけする!

小さめの民家ほどある扉をくぐると、大型の船を三隻入れても余裕がありそうな大きな廊下、その一番奥に装飾された上質な椅子が備え付けられている。

そして、その椅子に腰掛けているのが今日魔王になる私こと、『サウスノ・TOティーオー・マンダー』だ。



「マンダー様おめでとうございます。次の魔王はあなた様になりました。」

 私の部下である『リュイッチ』が私にそう伝える。

「なあ、リュイッチ。魔王ってなにするんや?」

 一般的に使われている語、つまり標準語ではなく、私が滞在している国の方言「クウァルンサイ弁」でリュイッチに尋ねた。

「それは・・・魔族の統治や人間世界への侵略とかですかね?」

 せめて、仕えている王のスケージュールくらい把握しておけと、心のなかで思った。

「まあ、とにかくですね、先代の魔王様達のように良いご活躍を期待しております。」

 私の知っている先代の魔王たちは、自分の私利私欲のためにしか動いてなかったような気がする、という感想は置いておき質問を続けた。

「なあ、リュイッチ・・・。話変わるんやけど・・・。」

 少し間を開けて。

「先代の魔王達の死因ってなんやった?」

 リュイッチは考える素振りなく、即答で答えた。

「勇者です。勇者による殺害です。」

「せやでな。」

「はい。そうです。」

「うん。殺されてんでな?死んだんじゃなくて、殺されてんでな?」

「そういえばそうですね・・・。事故死や病死の魔王様というのは聞いたことがありませんね。」

「じゃあさ、俺ってどうやって死ぬと思う?」

 あまりにも意味不明な質問をされたリュイッチは、どう返せばいいのか迷っている様子だ。

「質問が悪かったな。えー・・・勇者が俺を殺しにくるよな?それまで俺は何してたらいいんかな?」

「だからそれは、魔王としてどっしり構えていればいいんですよ。」

「そうか・・・・・・・・・てっ、なんでやねん!!」

 思わず出たツッコミに、リュイッチは一瞬ビクつく。

「死因がわかってんのに、なんでどっしり構えてんねん!?お前、今日は休館日ですよって知ってたらそこ行かへんやろ?そういうことや!」

「いや・・・どういうことですか・・・。」

「だからぁあ・・・なんで自分より強い相手が来るってわかってんのに、何もしてないんやって話や!」

「ですが、魔王様より強い者等、今現在発見されてませんし。」

「ボケナス!そんなこと言っとるから、先代の魔王共が殺されとんねんやろ!

ええか?初期ステータスが高くても、勇者がレベルアップして追いつかれてもうたら、そのハンデの意味なくなるやん!?

そこをちゃんと計算に入れとけって話や!ゲホッ!ゴホッ!」

話しすぎて、むせた。

「ま、魔王さまの言いたいことはわかりましたよ。では、何をしたらいいんですかっ!?」

 いい年の大人が、泣きながら声を荒げて尋ねてきた。そして俺は、その質問を待ってたと言わんばかりに、おもわず口元がにやけた。

「俺も旅にでたらええんや。」

 圧倒的などや顔で、リュイッチに説明を続けた。

「死因である勇者を倒すことが最大の目的と考えた時、一番有効なんは強くなる前の勇者を殺すことや。せやけど、誰が勇者か正直なところわからへん。せやから、成長前の勇者を殺すことは無理や。と、言うことは、や。勇者が成長するのに比例して、俺も強なったら初期ステータスで圧倒してる俺が負けることはないやん。」

 説明を終え、座っている席から立ち上がる。

「早速、行ってくるわ!」

 近所のコンビニに行く感覚で、長期の旅の予定を告げる。

「じゃあな!」

(ポトッ)自分のマントから一冊の本が落ちた。リュイッチはそれを拾い上げ、内容を確認した後、先ほどまで泣いていた目が冷たい目に変わり自分を見つめてくる。

「魔王様・・・これは何でございましょう?」

「ん?俺の本やけど?」

「タイトルに、『全国制覇!楽しい観光地、おいしいお店、コンプリート図鑑付き。観光マップ』って書いてますけど・・・。」

「・・・・・・せやな!」

「目的は、勇者討伐のための修行ですよね?」

「せやな!」

「なのに、観光マップですか?」

「せやな!」

「せやな!っじゃ、ありませんよ!ホンッッッットウに、マンダー様は昔から自分の好きなようにして!以前ならまだしも、魔王になられた今、あなたに求められるのha・・・・・・ッ!」

違和感を感じたリュイッチは、魔王をよく観察した。

「これは・・・魔王様お得意の分身の術ッ!」

 分身の術といっても、プログラムされた言葉をひたすら喋るだけのそっくり人形だ。

「あぁ!ちゃっかり、本もなくなってます!!」

 リュイッチの手にしっかりと握られていた本は、すでに無かった。




【魔王城:外】

「アホめ!俺に説教すると、説教しているうちに逃げだすというのを、いつまでたっても学ばない奴め!」

 部屋から光速で逃げて来たマンダーは、城から離れたところで進むスピードを緩めた。

「まあ、ここまで来たらいけるやろ。よし・・・・今から俺、マンダーの冒険を始めるぞ!!」

 距離にして10キロほど、それを1分弱で進むスピードを持ち、その他のステータスでも圧倒している、高スペック魔王の勇者討伐のための大冒険がこれから始まる!

「まずは、アイテムコンプリートからや!!」

 否、楽しむためのただの観光が始まる!




【魔王城:内】



「あの・・・・アホ魔王!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「せやな!」




●第一話:魔王お出かけする。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ