竜の羽根に乗って届けよう。
タナカハナ様の自由投稿企画『人外宅配便』参加作品第四弾です。
婚約者様は竜騎士様のキャラクターが
やく、一名出演してます。
(職場ですから)
今回は飲酒はなし。
よろしくお願いいたします。
今日は雨だね~。
雨カッパ着用かぁ。
視界悪いなぁ…。
あいつは大喜びだろけどね。
「おはようございます、ハロルドさん。」
私は先に竜舎にきて自分の竜を世話している
ハロルド・セーライトさんに言った。
「おはようございます、サヤノさん。」
金髪碧眼の美青年は微笑んだ。
綺麗な竜と美青年、絵になるなぁ…。
可愛い彼女と同棲してるらしいけど。
見るのはただだよね、眼福、眼福♪
「おはよう♪翼今日は雨だから撥水符貼らないとね。」
私は愛竜に言った。
『雨?大好き~、ぬれていきたい~。』
翼が心話で言った。
この、水大好きドラゴンめ!
あ、なんか、ハロルドさん笑ってる?
この心話聞こえた?
普通、人は相棒のドラゴンライダーにしか聞こえないのに?
「荷物が濡れると不味いから駄目。」
私は言った。
『ちぇ、爽やかな野原のケチ!』
翼がすねた。
まったく、困った竜だよ。
私は翼人だ。
でも、あんまり飛べないんで
故郷のキャピレート大陸を飛び出して
マユタータム大陸にある
ラーセルート竜王国の竜の宅配便に
就職したんだけど。
ドラゴン急便に吸収合併されました。
で、この間日本支部に異動させられたんですよ。
本名は爽やかな野原で略称サヤノです。
「ああ、ハル君は竜人の血が濃いから聞こえるのよね。」
事務職の立山さんが言った。
じゃあ、あの会話丸聞こえじゃん。
「歓迎会、居酒屋摩訶不思議なの、日時は大丈夫かしら?」
立山さんが続けて言った。
「はい。」
別にいいのに。
ありがたいけどね。
「サヤちゃん、今日も可愛いね♪」
指導役の井上 雫さんが言った。
私の翼が中途半端にしまえないのが
可愛いとあった当初から言われて
困っている。
だから、背中から翼人にしては
小さい翼が出ている。
覆うのも身体に悪いんだよね。
痛いんだよ、よく仕舞えないから。
その割りに先祖がえりなのか
尾羽も有るしさ。
不都合な身体だよ。
人化講座通おうかな?
一次界にいる限りは必要性感じなかったんだけどね。
「僕は君みたいな可愛い子の指導員になれて嬉しいよ。」
井上さんは微笑んだ。
「井上さん、それで、どっちが受けで攻めなの?」
立山さんが言った。
……私、女なんですけど。
「そうですね、わかりました、攻めて行きましょうか。」
井上さんが言った。
せ、攻める?な、なにを?
「あのさ、井上君、立山君、セクハラ発言はしないように、サヤノ君が引いてるぞ。」
高田主任が止めてくれた。
「セクハラじゃないです、アピールしてるだけですよ」
井上さんは微笑んだ。
なんか、猛禽類に狙われてる小鳥みたいな心境だな。
雨降る錆色の空に
翼が飛び立った。
雨粒が顔に当たる。
『キャッホー、撥水符が邪魔だけど、気持ちいい!』
翼が言った。
「全くもう。」
私は言った。
今日は平山神社仏閣地区だそうだ。
神殿が沢山あるらしい。
「こんにちは、りゅ、ドラゴン急便でーす。」
そのなかでも最大の平山神社に降り立った。
木々の緑が美しい。
まあ、雨降ってますが。
「はーい、判子でーす。」
小さい黒いウサギの女の子が
おじいちゃん神官さん?と出てきた。
「あ、夢穂ちゃん可愛いね♪巫女さんの格好してるの?」
井上さんが言った。
知り合いらしい。
可愛ければ誰でもいいんかい。
「うん、ひいおじいちゃんのお手伝いしてるの、パパとママはお仕事中だから。」
女の子は言った。
「偉いね、夢穂ちゃん。」
井上さんが頭を撫でた。
ドラゴン急便は家族的な付き合いが
モットーだったっけ?
「お姉ちゃん、羽根が生えてるの?いいなぁ、夢穂も飛びたい。」
夢穂ちゃんが言った。
私は曖昧に笑った。
私の翼はキャピレート大陸で役人候補に上がるほど弱い。
翼人は、基本的に飛べる人が外で働き
翼の弱い人が役人になり国を動かしているんだ。
私は、逃げたんだよね。
マユタータム大陸に。
「夢穂、荷物を受け取って、全国占い師協会からだよ、きっと。」
おじいちゃん神官さん?が言った。
なんかさっしたみたいだ。
「うん、パパとママに早く帰ってくるように言ってね。」
夢穂ちゃんが手を振りながら言った。
「わかったよ。」
井上さんが言った。
「ありがとうございました。」
私はよくわかんないなって思いながら言った。
「夢穂ちゃんは犬神夢穂ちゃんって言うんです、宮司さんは父方のひいおじいちゃんです。」
井上さんが言った。
と、言うことは、あの黒柴ワンコとウサギ…
五穂さんと大夢さんの娘かい。
似てるかも、あの落ち着きが無いところが
五穂さんに…。
「まあ、頑張ろうか。」
井上さんは微笑んだ。
この人も変態行動がなければ格好いいんだけどね。
雨降る空の下
『雨雨ふれふれもっと!』
雨乞いする相棒翼の声を聞きながら
宅配作業は続いた。
「ああ、私も撥水符はっとくんだったよ。」
私は着替えながら呟いた。
雨のせいで羽根と髪はボフボフに乾いてる。
「酒のんで暖まんなよ、のみにいこうよ♪」
五穂さんは言った。
「大夢さんにお仕置きされるわよ。」
立山さんが言った。
ああ、五穂さんはお酒大好きらしいね。
「……うう、娘が待ってるから帰ります。」
五穂さんは言った。
そんなに怖いんだお仕置き…。
あの優しそうな大夢さんっていったい?
「サヤちゃん、帰ろうか。」
外に出ると井上さんに手をつながれた。
「帰れますよ。」
近くの光田コーポだし。
「可愛いね♪」
井上さんは微笑んだ。
「いいな、サヤノさん井上さんとラブラブ?」
五穂さんの声がする。
「どっちかって言うと拉致よね。」
立山さんが言ってるのが聞こえる。
「人聞きの悪いこと言わないでください。」
井上さんがニコニコいってあるきだした。
「あ、さようなら。」
私は言った。
うん、井上さん、私、拉致られてるような
気がしてならないんだけど。
どうしても、そう思うんだよね。
お願い、手を離してください。