日進月歩
「ん…休憩、しようか?」
絶え間なく攻撃をする五人を去なしながら、話し掛けるが全く聞く耳を持つ様子がない
「休憩なんか必要あらへん!」
「そうだ!我らにそんな暇はない!」
「ええ、もっと強くならなきゃいけないの!」
「ご主人様!さぁ、行きますよ!」
「ん…まだ、やれる…!」
俺の言葉を挑発と取ったのか、より五人の攻撃が激しくなる
「だから、違うって。疲れて武器を振っても、怪我しちゃうかもしれないからさ?ね?休もう?」
「「「「「嫌だ!」」」」」
「はぁ…」
断固として止める様子のない五人に苦笑しながら、太刀を構え直した
こりゃ、どういっても聞かないな
「仕方ないか……覇っ!」
「くっ!?」
「きゃ!?」
「えぇ!?」
ひしめき合うように取り囲む五人に、凪の一閃を放ち吹き飛ばすと、自分からラインを出る
「はい。休憩ねー」
「ぶー!ぶー!私、まだやれたのにー!」
膨れる皆の頭をポンポンと撫でると、その場にどっかりと腰を下ろし、武器の点検を始める
刃がすっぽり抜けて、誰かに刺さったりしたら事だからな
しばらく、ぶーたれていた五人も渋々ながら、武器を点検していく
「なぁ、みんな。今から、他の人の稽古を見に行ってみないか?」
「見取り稽古ですか?」
「うん。他の人も気にならない?」
「なるわけないわよ。自分のことで、手一杯ですもの。未だに、一刀の本気は引き出せないし。全然、自分の力が上がってる気がしないもの」
ヒラヒラと手を振ると、雪蓮は地面に南海覇王を突き立て、刃に写る自分を見つめた
修行を始めて、一カ月。そろそろ、だとは思ったけどやっぱりか
五人は今、苛立っている
成長している自分が見えないから
確かな目標はある。だけど、それがあまりに大きく、ぼやけてしまっているから比べようもないんだろう
なら、師として出きることはただ一つ
「それを確かめに行くんだよ」
気付いてもらうために、手を引いて導くくらいだろう
「「「?」」」
首を傾げる五人を連れて、まずやってきたのは孫堅が指導する呉の修行場
「ほらほら、蓮華!防戦一方でどうするの!?あんまりつまんないと、うっかりバラバラにしちゃうわよー?あははは…!!!」
「くっ!?本気ですか!?ていうか、もう動きが、見えません!もう少し、優しく、きゃ!?」
太刀を寝かせ、防戦一方の蓮華に師匠は容赦なく打ち込んでいく
愛用の幅広の太刀を振る速さも、打ち込みの強さも、俺との稽古と変わらない
どうやら、本気でやってるようだ
「わととと!…ひゃ!?危なっ!」
しかし、蓮華もよく避けるなー。最早、見えてもいないだろうに。
「あーあ、あれじゃ駄目ね。何とか、ギリギリでかわしてるみたいだけど、完全に追い込まれるじゃない。むしろ、攻撃相手に避ける方を決められてるし、主導権は完全に母さんだし。はぁ…大体、見えないって、普通でしょ?私でも、できるわよ」
二人の稽古を見ていた雪蓮が、ぼやきながら太刀を振る
確かに、その早さ、打ち込みのキレは蓮と変わりがないようだ
「ふふ…そうだね。さぁ、次に行こう」
「え?もういいの?」
「うん。いいよ」
俺は小さく笑うと、まだ見つめていた五人の背中を軽く押して、次の場所へと向かう
続いてやってきたのは蜀
そこでは、不動の櫨植先生に一人ずつ斬りかかっていた
「やぁ!はぁ!たーっ!」
「そうそう、そこをそうすると、こうなります。ですから、ここをこう!」
「へ?あっ!危ない!愛紗ちゃん!」
空の巨大金鎚に弾かれた太刀が、くるくる円を描いて、こちらに飛んでくる
「え?…と!…はぁ…」
愛紗は難無く、回転する太刀の柄を握ると軽く振って持ち替え、桃香に手渡した
「桃香様、武器はしっかりと持ってください。あと、刃がぐらついていますよ?しっかりと、点検してください」
「ふぇ?う、うん、ありがとう…愛紗ちゃん」
「桃香…握る場所を変える…長く持つと振り回される…短く持つといい…」
「え?あぁ!言われてたのに、忘れたよ!ごめんね、ありがとう、恋ちゃん!」
その後も、何点が問題のところを二人に指摘され、桃香はグループに帰って行った
「ありがとー!頑張るね!」
「えぇ!気合いです!桃香様!」
「ん、頑張る!」
「ふふ…これもよしだな…さぁ!次だ!次!」
「え?ご主人様!?」
「ん?…まだ…見ていたい…」
「うんん!十分、収穫はあったよ」
例のように、首を傾げる五人の背中を押してやってきたのは、魏
そこでは、ちょうど、一対一で稽古をしていた
「あれ?桜に対しての、掛かり稽古じゃなかったの?」
「ん?あぁ、一刀か。うん、この後にやるよ?今は、それぞれに苦手な武器を相手に闘わせてるの。戦場じゃあ、苦手とか言ってられないしね~」
桜が一人一人の動きを見ながら、的確に指導をしていく
流石は、江戸で道場を開いて頂けはある
桜の指導は分かりやすいもんなー
俺も出来るなら、生徒に戻りたいよ
「ふむ。秋蘭の相手は凪か。確かに弓は、懐に入られなければ強いが…そう上手くはいかんか」
「そやな~。凪もアホちゃうし、気弾を上手く使うて戦いよるわ」
見れば、凪はなかなか、面白い戦い方をしていた
弓に対して気弾を打ち出し、舞い上がった土埃を目眩ましに白兵戦へと持ち込んでいくのだ
「ふふん!まぁ、秋蘭の持ち味は弓だけではないからな!」
「あら、ほんまや。上手いこと、拳を去なして間合いを取りよった」
白兵戦は得意じゃないんだが、とか前に言ってたわりに、凪に遅れを取らない体捌きには驚かされる
やはり、魏の旗揚げ当初から戦場で活躍していた分、経験は上かな
「華琳様の相手は……は?」
なぜか、華琳の方を向いた皆が口をあんぐり、驚いた
「グスン…やぁ!…はっ!…ふぇ…たぁ!」
視線を送ると、その先で、愛する少女が泣いていた。それはもう、思いっきり泣いていた
なぜなら、立ち合いの相手が…
「あらん?どぅしたのん?そんなに、縮こまっちゃって~?そんなんじゃ、アタシには届かないわよん?ほうら~!もっと、熱く!激しく!飛び込んでらっしゃい!」
「ひっ!?」
アイツじゃ、仕方ない
「桜、あれは?」
「え?あぁ、華琳のこと?言ったでしょ?苦手な武器を相手に戦わせてるって。だから、貂蝉に頼んだんだよ?」
「あぁ…」
「どぅふふ!こら~!待ちなさ~い!逃げちゃ駄目でしょ~う?」
「いやああぁぁー…!やだー!こっち、来ないでよー!」
そこにはもう、戦いなんてものはなく、ただ逃げ回る少女を追い回す変態しか居なかった
そんなの見せられたら、魏武の大剣が黙ってるわけないじゃん!?
貂蝉!逃げろ!斬られるぞ!
「…ふむ。華琳様。足が速くなられたな…」
「へ?」
しかし、隣から聞こえた声はそんな関心するようなものだった
「あれ、いいのか?華琳、泣いてるぞ?」
「別にいいのではないか?これは、苦手を克服するための、修行なのだろう?なら、ここで助けに入っては、華琳様の成長の邪魔にしかならん。ただ、私は見守るだけだ」
ふん!と息を吐くと、腕を組んで追い掛けっこを見つめる
組んだ腕が僅かに震えているところを見ると、今にでも飛び込んで貂蝉を斬り倒したいに違いなかった
「そうか…」
「あはは…!成長したやんか、春蘭!」
「意外ね~、春蘭の口からそんな言葉が出るなんて。少し、見直したわよ?」
「ふん!言っていろ!」
鼻を鳴らし、ぶっきらぼうにそう答えると、春蘭は再び周りを見渡す
訝しいげに眉を寄せると、振り返り俺を見上げてきた
おやおや、こりゃ、何かに気付いた様子だな?
「しかし…、さっきも思ったことだが…」
「どうしたの?」
「いや、北郷。皆、休ませた方が良くないか?」
「何で、そう思うの?」
「だって、なぁ?三国の皆を見てきたが、動きも遅いし、正直、強くなっているように見えん。むしろ、疲労が溜まって動きが鈍くなっているのではないか?」
同意を求めるように、皆を見回すと苦笑しながら皆も頷く
どうやら…皆も春蘭と同じことを感じているようだ
「ふふ…だってさ、桜」
「へぇ…そう、感じてるんだ」
桜を見ると、複雑そうに微笑みを浮かべ弟子たちを眺めた
「この子たちはね…全然、疲れてなんかないよ?ましてや、動きが鈍くなってもいない。それどころか、日に日に、強くなってるよ」
「強くなっているだと?嘘をつくな!明らかに、早さも、打ち込みのキレも、私の感じる中で最悪のモノだぞ!?」
歯痒そうに唇を噛み締めると、睨み付けるように俺を見る
ちょい待ち、何故そこで、俺が怒られるわけ!?担当、この子!隣で可愛らしく小首を傾げているこの子ですから!
「当然だろう!?」
「当然やなー」
「当然ねー」
「当然ですね…」
「ん…当然…」
「理不尽!スッゴい、理不尽だから!」
「まぁ、ほら、師範だって連れて来たのは一刀なわけだし。校長?だから、ね。総合的な責任は一刀に行くわけよ」
「あ、そう言われると納得…って!ちょいと、夏侯敦さん!?」
雪蓮の言葉に頷くと、首筋に冷たい感触…
ワァーオ!なんて、懐かしい感触でしょう!
走馬灯のように駆け巡る、若か厘し日の思い出…
楽しかった、魏での生活…
理不尽な理由で、春蘭に追い掛け回され、首をハネられようとした毎日…
あぁ、何もかもが懐かしいなぁ…
って!そんな、思い出に浸ってる場合じゃなかった!
「強くすると言っておきながら、この体たらくはなんだ!北郷!責任を取って、首をハネられろ!」
「ちょっと!待て!話せば!分かる!」
「聞く耳!持たん!って、あ、こら!避けるなー!」
春蘭の猛攻を飛んだり跳ねたり、転がったり滑ったり、あらゆる方法で避けていく
どれも、ギリギリ紙一重!
クソー!やっぱり、そうだ!
コイツ、全然気付いてない!
「本当、待て!ちょっと、前の春蘭なら避ける自信はあったけど、最近の春蘭は本気で避けないと難しいんだからさ!もっと、穏便に!」
「なーにー!?それは、ちょっと前まで、指先一つで倒せるほど、私が弱かったということかー!?」
「そこまで、言ってないだろー!?」
「あーもう!うるさいぞ!黙って、その首、置いていけ!」
春蘭お得意の大上段斬り!
しかし、それは、それだけは!長年の経験で見切っているのだよ!
「はっ!秘技!真剣白刃取り!」
「と見せかけ!ただの、蹴りだー!」
「なっ!?グハッ!!?」
ば、バカな…春蘭が…頭を使った攻撃…しかも、フェイク作戦だと…!?
「あっはっはっ…!北郷、敗れたり!さぁ、そっ首叩き落としてやろう!」
「くっ…無念…」
ヨロリと立ち上がる俺の首に、春蘭は太刀を当てるとニンマリと微笑む
勝利を確信した笑み…
あぁ…俺の物語はここで終わるのか…
ごめん、親父、母さん、爺ちゃん
先発つ不幸をお許し下さい…
手を合わせ、目を瞑る
まぁ、楽しい人生だったよ…
最後に、心で呟いた
「はいはい。お馬鹿はそこまでよ」
「む、橋玄様?」
振り下ろされる太刀を自身の太刀で受け止めると、桜は苦笑しながら弾き上げる
「自分の師に、武器を振り下ろしてどうするのよ。相手が違うでしょう?」
「し、しかし、コイツは…」
「勘違いしないの。別に誰も弱くなんてなってないわよ。みんな、強くなってるわ。魏に関しては私が保証するわ。まぁ、他の軍を見ている二人も、きっと同じ意見でしょうけど」
「どういうこと?じゃあなんで、こんなに皆が弱く見えるかしら?」
「せやな…。みんな、強うなっとるって言われても、この違和感は拭えんで?」
「あぁ、それ?簡単だよ?って、一刀?いつまで、やってるの?」
手を組んで神に祈る俺の脇を小突いて、桜は苦笑すると、皆に向き直る
「ほら、一刀が説明しないから、みんな、混乱してるでしょ?」
「おぉ!俺、生きてる!?」
「大丈夫。ちゃんと、首も繋がってるよ。たぶん…」
「たぶん?」
「その首が飾りじゃないことを証明するためにも、みんなに説明して違和感を解消してあげたら?」
「あぁ、そうか…説明ね…」
俺は首を触りながら、ゆっくりと説明していく
「みんな、確かに強くなってるよ?」
具体的に言えば…
蓮華は今、修行を始めた頃の思春くらい
桃香は、修行を始めた頃の星くらい
華琳は修行を始めた頃の夏侯淵くらいになっている
勿論、比べた人たちはもっと強くなっていて、それこそ、目の前の五人の修行を開始時に手が掛かろうとしてるわけだけどさ
「「「そうか?」」」
で、当の本人たちは首を捻るわけよ
コレが示す答えはただ一つなんだけどね
「つまり、五人も強くなってるんだよ。それも、皆より何倍もの速さで」
「へ?うちらが?」
「そうだよー。だから、周りの皆が弱く見えるんだよ。たぶん、五人とも私たち師範に近く成ってきてるんじゃないかな?」
桜はニコニコと微笑むと、突如、愛紗に斬りかかる
愛紗は堰月刀で軽く太刀を去なすと、目を丸めて桜を見つめた
「と、突然、何をなさるんですか!?」
「ほら、簡単に止めちゃった」
「え?何をです?」
「しかも、分かってないでしょ?今の、私の全力だったんだよ?」
「「「え?え?ええぇぇ!?」」」
運動場に、五人の驚き満ちた声が響き渡る
今、目にした動きが、師範の全力だと言われたのだ。そりゃ、驚きもするだろうさ
「なんとも、呆気ない…。そう、思った?」
「は、はい」
「あはは…でもね、それが現実なんだよ。次元の違う相手と毎日、戦ってるんだもん。気付かなくて当然だよね?」
私も気が付いたらこうなってたもん、と桜は微笑むと、愛紗の手を握り締め見つめる
「あなたは、もっと、もっと強くなれるわよ。五虎の総大将、関羽雲長。私たち師範は、いわば、達人と一刀の間の存在だから。でも、あなたが目指すのはここじゃないでしょ?」
「橋玄様…」
「…頑張ってね、愛紗ちゃん。一刀の隣、任せたよ」
「は、はい!頑張ります!」
「うんうん。いい返事だよ♪…さぁ、私は私の仕事をしないとね」
深く頷き手を離すと、背中を向けて手を振った
早く行け、ここは貴女たちの居る場所ではない、と言うようにヒラヒラと手を振り続ける
…まるで、自分には行けない場所へ旅立つ子を見送る母のように、その背中は、優しくも寂しげだった
「…ばか。お前も俺の隣で戦うんだよ、桜。ずっと…これからも先もな」
「っ!?」
「…さぁ、行こう。俺たちの修行場に」
「北郷…」
何度も振り返る少女たちを引き連れ、歩き出す
「っ…ご主人様…」
何かに気付いたのだろう、五人は何度も桜を見返しては、何か言いたげに俺を見つめてくる
「良いんだよ…」
分かってるよ。彼女は振り返っている
ポロポロと涙を流して、俺の背中を見つめているだろう
分かってるよ、それくらい
そして、何か言い出そうと頑張っているんだろ?
でも、彼女は意地っ張りだから、言えないんだ
弟子の手前、大人ぶって言えないんだろう
分かってるよ、だから俺は、彼女に助け舟を出す
不器用ながらに、自分に言える一番の言葉を言うよ
「先に行って待ってるぞ。すっと、待ってる。だから、必ず来いよ、隣に。皆を連れて、必ず。出来るだろ?"愛弟子"」
「っ…当然だよ!」
彼女の涙に濡れる声を聞いて頷くと、再び、ヒラヒラと手を振って歩き出した
弟子はずっと、弟子ではいられない
いつかは、師に追い付き、追い越してしまう
愛情を持って育てられているなら、余計にそうだ
そして、彼女と俺も例外ではく、それはやってくる
師を超えた弟子はやがて、大きな舞台へと上がって行くのだ
しかし、俺と彼女が違ったのはその関係
愛情が誰よりも深かったことが、師弟子の関係をより強固のものとしたのだ
師と弟子は逆転し、再び修行は始まる
ただ、互いが互いの側に居るために
互いの背中を守るために
師弟子を二転三転しながら、修行は続いていった
しかし、ある時から弟子は弟子のまま、師は師のままとなる
ゆっくりゆっくりと、弟子が成長するなか、師はその何倍もの速さで成長していったのだ
そこに、気付いた師は…成長を止めていた
武器を取っても、出来るだけ半分以下の力で戦うようにしていったのだ
いつか追い付く弟子のため、今の場所で師は待つことにしたのだ
しかし、弟子は違った。弟子は更なる弟子に、想いを託し師を支える人材を育成しようとする
それに気付いた師は、何も言わなかった。いや、言えなかったのかもしれない
成長を諦める弟子の気持ちを…少女の気持ちを理解出来なかったから
だから、前線では戦いたくないのだろうとか、王たちに華を持たせるつもりなのだろうとか、安直な理由を付けて、師も諦めたのだ
それから、長い日々を経て、やっと…やっと師は弟子の気持ちを理解する
言葉にはしなかったが、手を振る少女の背中が…大人のフリをした少女の心が、叫んでいたのだ
『置いていかないで…私を一人にしないで…一緒に連れて行って』
俺が連れて行くのは簡単だろう
手を引いて、同じ場所に連れていけばいい
でも、それでは、少女は納得しない
いつか再び、自分の立っている場所を見回した時、場違いに感じるだろう
自分で望み、歩み、手に入れた場所だからこそ、執着心も強くなるのだ
いざ危機に陥った時、失いたくない、守り抜きたいと言う気持ちは、何倍もの力を引き出す
それこそが、力を手にするという本当の意味
彼女が、俺の師であり弟子が教えてくれた大切な気持ち
だからこそ、俺は言ったのだ
『ずっと待つ』と
『ほら、一刀…頑張ろう!最後まで見てるから!』
彼女がそうしてくれたように、次は俺が待つ番なんだから
「さーて!休憩終わり!うかうかしてると、抜かれちゃうかもしれないし。気合いを入れ直して、取り組もうか」
「ふふ、そうですね…」
「桜…きっと、強くなる…それに会わせて、みんなも…もっと、強くなる」
「そうだね。うん、きっとそうだ」
肩越しにチラリと見ると、小さな少女が、魏の面子と貂蝉を交えて暴れまわっていた
皆、師の変貌に目を丸めて逃げ回っている
「ぷっ、頑張りすぎ、桜」
小さく微笑むと、それからは振り返ることなく自分たちの修行場へと向かうのだった




