表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日の華琳さん家  作者: 黒崎黒子
78/121

我!魏と共に!

「「北郷」」


「兄ちゃん!起きて!」


「兄様!起きてください!」


「一刀~、いつまでも寝とらんと目覚ましや~」


「「「隊長!」」」


「お兄さ~ん。朝ですよ~」


「一刀殿ー。早く起きないと、悪戯しますよー。主に、風が…」


沢山の人から名前を呼ばれ、俺は目を覚ます


「んんー…ん?」


「一刀…起きなさい…。こんなところで寝ていては、風邪をひくわよ」


「ん?…華琳?…って、うおっ!?」


目をこすりながら起きると、椅子を囲うように魏のみんなが立っていた


「今から、皆でお風呂に行くのだけど。あなたも、来ない?」


「兄ちゃん!一緒に行こう!」


「兄様!お背中、流します!」


「へ?いや、ちょっと待って!」


季衣と流琉が手を握りしめ、混乱している俺を引っ張り起こす


「て言っても、答えなんか端から聞いてないわ。強制よ。春蘭、秋蘭!一刀を逃がさないように、縛り上げておきなさい」


「「御意!」」


「え?ちょっ!?待っ!?」


簀巻きにされ、布で口まで塞がれる


「凪、真桜、沙和。一刀の着替えと、風呂用具は?」


「ここに!」


ちょっ!?どこから、持ってきた!?

まさか、マイ・バック!?

ヤバ!?あの中には…


「因みに~こんなのも入ってたの~」


「隊長の秘蔵の艶本(十八禁本)やでー。『巨乳美少女白書』やて♪大将、どないしましょ?」


「きょ…。焼きなさい!!!」


「ムオオオォォ――!!?」


「ふん!桂花、風、稟?風呂場には、敵影はある?伏兵は?」


「ありません!いつでも、占拠出来ます」


シクシク…俺のお宝が…

ん?占拠って…?風呂場で何する気だよ?


「はい~。皆さんは、ぐっすりお休みなのですよ~。


「今日は色々あって疲れていたようです」


「そう、よかったわ。でも、そうね…霞!」


「分かっとる。もしも、空気読めんヤツが来たら、ウチの機動力で倒したらええんやな?」


いや、それダメだろ…


「ええ、お願い」


いいの!?


「任しとき!"迅速の張遼”の力、見せたるで♪」


「ふふ…期待しているわ。それじゃ、行くわよ!一刀を掲げて、いざ風呂場へ!全軍、前進!」


「「「応っ!」」」


ちょっ!?だ、誰か…助けてぇ―!!


こうして、ワケも分からないまま、俺は身内によって拉致られた


風呂場へ着くと、無抵抗の俺は脱衣所へ投げ込まれる


「秋蘭。これを表にかけて来て」


「これは…。なるほど」


華琳から木札を手渡された秋蘭は、まじまじと見つめると納得したように頷いた

木札には『準備中』の文字


「さて、念には念をいれるわ。もう一度、偵察よ!」


「「「御意」」」


華琳の号令で、皆が風呂場のありとあらゆる場所を調べ始める


一体、彼女たちは何をするつもりなんだ?


「敵影なし!」


「よし!みんな、突撃準備に取りかかりなさい!あ…一刀はコレを着けて、しばらく待つのよ。代わりに、声は返してあげる」


「ぷは…!って、開放された瞬間、目隠しですか!?」


簀巻きで転がされていた俺は、華琳に目隠しをされる

もう好き放題ですね、華琳さん!?


「隊長、すみません」


「まぁ、アレやで、隊長。音声のみでお楽しみください♪ちゅうヤツや」


「世知辛い世の中だな…。凪、真桜…」


「そうしないと、隊長、何かムラムラしてきた~!とか言って、襲ってきそうなの~」


「なの~じゃない!沙和、万年発情してるみたいに言わないの!!!」


「違わないでしょ!女とみれば、猿みたいに腰を振り出す万年発情期全身孕ませ白濁男!!!」


「桂花、もはや、それは人でも猿でもないだろ!」


「少なくとも、一刀は人じゃないでしょ?」


「か、華琳~…」


「ふふ…、冗談よ。一刀は大切な仲間であり、三国の平和の象徴よ。ここにいる皆も、ちゃんと分かっているわ。ね、桂花?」


「確かにこの男は、今や三国の平和には無くてはならない存在になりました。ですが…」


「そうね。だからといって、私たちを蔑ろにして良い、という言い訳にはならないわ。分かるわね?一刀?」


「ごめん…」


「私たちの身体を気遣ってくれたことは、嬉しく思うわ。でもね、念願叶ってやっと、会えた相手と繋がれないなんて、悲し過ぎるじゃない。確かに、言葉も大事よ。想いを伝えるには、最も早急で的確な行為だと思うわ。でもね、こう言っては元も子もないけど、言葉は所詮、言葉なのよ。間違いもあれば、嘘もあるの。分かる?不安なのよ、あたし達は。だから、心や言葉だけではなく、身体を欲するの」


「……」


華琳の言葉に、俺は言葉を失った。当然だ。彼女たちを傷付けまいと振舞った結果、不安を与え、親しいはずの俺を連れ去らなくてはならないほど、彼女たちを追い込んでしまったのだから…


「これだけ私が言っているのよ?まだ、迷うの?いいわ、一刀!言ってみなさい、私は誰!?」


「君は…誇り高き魏の…いや、違う…。…そうか。そうだったな。君は、誇り高き大陸の王!曹孟徳!」


「そうよ!私は大陸の王よ!大きくなったからってなによ!たったそれだけのことで、この、私が動じるものですか!私たちの器はそんなに小さくないのよ。それは、今まで一緒に過ごしてきた貴方が一番分かっていることでしょ!?」


「そうだな…。俺が間違ってたよ、華琳。本当、ごめん!華琳…みんな!」


俺は頷くと、上体を起こし正座すると深々と頭を下げた


「…ふう。分かってくれると信じていたわ。だからこそ、こうして…」


小さな手が、頬に添えられる。この手を俺は知っている。俺の最も愛する人、華琳の手だ

その手で、ゆっくりと目隠しが外される。開かれた世界に、俺は再び言葉を失った


「!?」


「皆で、貴方に…奉仕しようと思えたのよ…」


はにかんだ華琳を中心に、春蘭、秋蘭、季衣、流琉、凪、真桜、沙和、桂花、風、稟がタオル一枚を巻いた姿立っていたのだ


「……」


「……」


「……」


「…な、何か言いなさいよ、一刀」


「え!?ああ!ごめん!あまりにみんなが綺麗で何も言えなかった」


「「「き、きれ…!?」」」


「そ、そういうところは相変わらずね…貴方…」


「ま、まあ、一刀やし?なぁ?」


「うむ。しかし、逆にそれが安心するから不思議だ…」


「そ、そうか?どうせ、世辞だろう?」


「あはは…春蘭様。兄ちゃんは、お世辞とか言える人じゃありませんよ」


「だね。兄様は、本音しか言いませんから」


「ですね~。白状するなら、お兄さんを信じていない人なんて、誰一人いませんよ」


「ましてや、不安に思っている人など、一人もいません」


「つまり、あんたはまんまと私たちの策に嵌ったのよ、ニブチン変態鈍感男!」


「えーっと…つまり、華琳どういうこと?」


「つまりは、私たちを放って置いた、お仕置きよ。不安に思ったり、疑ったりしたことは無いにしても、その…分かるでしょ!?」


華琳は真っ赤になると、口を尖らせソッポを向いてしまった


「あ…なるほど!寂しかっ…ゴフッ!?」


「それ以上言ったら、な、殴るわよ!!?」


「も、もう殴っちゃってますよ、華琳様!」


「あはは!ええやん、華琳。ほんまのことやし。そうやで、一刀。華琳だけやない、ウチも皆も寂しゅうて、恋しゅうて、待ちくたびれたんや。せやから、こうして動いたちゅうわけや!分かったかー?色男」


「そうだんたんだ。ほんと、ごめんな」


「いえ、こちらこそすみません。正直、やり過ぎかとも思ったのですが…なにぶん、自分も…その…」


「そうなのー!凪ちゃん、ずっと待ってたのー!隊長が帰って来てから毎日のように、三つ指揃えて部屋の前で待ってたのー。警邏の時も、今か今か待ち構えて、悶々とした日々を過ごしてたのー!」


「さ、沙和!何を言って!?」


「それは、北郷隊の三羽烏全員に言えることでしょう?毎日のように、一刀殿の寝室の前に来ていると、侍女から聞いていますが」


「り、稟はん!?シー!!!それは、言わん約束やで!?」


「ちなみに、稟ちゃんもその一人ですけどね~」


「ふ、風!?それをいうなら!」


「はい~。風も、お兄さんの部屋に幾度と無く侵入しては、無人の部屋に涙した一人なのですよ~」


「…あんた、言ってて恥ずかしくないの?」


「いいえ~?本当のことですし~。桂花ちゃんこそ、今のうちに言っておくことは言っておいたほうが、後々のためですよ~。罪悪感に苛まれたお兄さんが進んで、部屋を訪れるようになるかもしれませんよ~?」


「そんなの、こっちから願い下げよ!」


「おやおや、素直じゃありませんね。では、恥ずかしがり屋の桂花殿に代わって、私が言うとしましょうか。侍女の話では…」


「稟!殺すわ!それ以上、言ったら殺すから!」


「ふふ…じゃあ、私が言うわ」


「か、華琳さま!?」


「あのね、一刀。侍女の話だと、桂花は貴方の部屋に行っては、誰も居ないと分かると、深いため息を吐いて帰って行ったそうよ。それが、週に二回はあったそうよ」


「そ、それは!北郷がまだ帰って来てない頃の話で…」


「そうね、一刀が帰ってきてからは、毎日、中庭に罠を仕掛けていたわね。まるで、構って欲しい子どものように」


「ち、違います!誰が、北郷なんかに構って欲しくてそんなことなんか!」


「あら?私はてっきり、私にお仕置きされたいがために、私用の罠を作っているのだと思っていたわ。まさか、一刀のための罠だったとはね…。ふふ…そうだったの…」


「え?あ、はい…。あれ?い、いえ!違います!あれは…!」


「これこれ、桂花ちゃん。落ち着いて~。間違いでも華琳様のための罠、なんて言っちゃダメですよ~。王へ危害を加えるための罠なんて、反逆者にしかなりませんから。華琳さまも、お戯れは程々に~」


「あ!うぐぅ…。か、華琳さまー…」


「ふふ…、ごめんなさい。あまりに、反応が可愛かったから、つい、ね。でも、これで一刀も分かったでしょ?」


「うん。やっと、桂花がデレた」


「デレてないわよ!!!」


「てのは冗談で。皆がどれだけ想ってくれてたか、よく分かったよ。みんな、ありがとう。本当、俺は世界一、幸せものだよ」


皆を見つめ返し、満面の笑顔で微笑んだ


「「「でしょう?」」」


「ふ、ふん!」


華琳を中心に皆が、はにかんだ笑顔で頷き返す

やっぱり、桂花はツンだったけど…

それも含め、本当に心が温かった


「ああ…まったくだ…」


俺はぽつりと呟くと、何度も頷く


「それじゃ、完全に心のシコリを取るために、幸せを肌で体感してもらうために、一刀には頑張ってもらおうかしら?」


「え?本当にするの?」


「当たり前よ。そのために、ここに居るんですもの」


「いやでもさ、ほら、魏は俺たちだけじゃないだろ?天和、地和、人和だって居るわけだし!不公平になるじゃないか!」


「あぁ、それなら、心配ないわ。だって」


華琳は脱衣所の入り口を見ると、小さく微笑んだ

この流れは…まさか!?


「あれー?もう始まっちゃたかなー?」


「うわ!?どうしたの、一刀!?なんで、簀巻きなわけ!?新しい趣味!?」


「ちぃ姉さん、違うわ。たぶん、一刀さんが逃げないように縛り上げられたのよ」


「なんだ、そういうこと。てっきり、変な趣味に目覚めちゃったのかと、思ったじゃない」


「むぅー!一刀、酷いよー。私を置いてけぼりにするなんてー」


「そうそう!ちぃのことを仲間外れにするなんて、許さないから!ちぃだって、一刀のこと大好きなんだよ!」


「私たちを危険から守るために、色々動いてくれたのは知ってる。でも、私たちは一刀さんと一緒に居たいから、無理を言って、左慈さん達に連れてきてもらったの」


「天和、地和、人和…」


「て、わけだからー。私たちも一刀と一緒にシュギョー?するねー。よろしく!一刀!」


「修行!?」


「うん♪」


「私たちは別に、武を求めるわけじゃないわ」


「ちぃたちは、アイドルだもん!ステージをもっと、駆け回りたい、もっと、この声を大陸の隅々まで届かせたいの。だから、一刀!ちぃたちを、もっと上のアイドルにして!」


「もっと上のアイドル…?歌唱力は誰よりもあるんだから、今更…あ、そうか」


「そう、もっと体力を付けたいの。喉だって鍛えようと思えば、鍛えられる」


「目標はー」


「「「天に届くほどのアイドルになる!」」」


張三姉妹は天を指差し、満面の笑顔で微笑んだ


「天に…か。ははは…、分かったよ!マネジャー、引き受けた!」


「これで、一刀の杞憂は無事解消ね!それじゃ…覚悟はいい?」


「っ!?デシタネー…」


「頑張ってね♪一刀!」


「ちょ、ちょっと待った!その前に、縄を外し…!」


「ダーメ♪…まずは、誰から行こうかしら?」


華琳が思案しながら周りを見渡す


「無論、華琳様が一番手ですよ。なぁ、姉者?」


「えぇ…そうですね。ここは、華琳様が行くべきでしょう」


「そうと決まれば、ウチらは風呂に行くでー!一刀!しっかり、華琳を"りいど"するんやで」


「え?あ、あぁ。分かった」

「ちょ!え!?あなたたちも一緒じゃないの!?」


「大将…野暮を言ったらあきまへんて。ウチらは、後でゆっくりと相手していただきますから」


「そうなのー。隊長が居なくなってから、一番多く、隊長の部屋を訪れた華琳様が、ここは独占するといいのー」


「さ、沙和!?」


「華琳様…。隊長が居なくなってから、一番悲しんだ人を、自分たちは知っています。誰にも見せないように、陰で泣いていたのも知っています」


「あ…」


「帰って来て、誰が一番喜んだかも知ってますよー。いつも、華琳様はお兄さんの側から離れようとしませんでしたしー」


「そ、それは…」


「ですから、華琳様…。華琳様が"一刀殿拉致の号令"をかけた時、皆で決めたのです。華琳様と一刀殿だけの時間を作る…と」


「私はそんな薄情鈍感無責任男に、華琳様を任せたくありませんでしたけど、華琳様の幸せを思うなら、それが一番でしたから…仕方なく、頷きました」


「そうだったの…」


華琳が見渡すと、皆は笑顔で深く頷いた


「ふぅ…分かったわ…。皆の言葉に甘えるとしましょう」


華琳が頷くと、皆は風呂道具を持って大浴場へと入っていく


「では、我らは風呂に突入だー!」


「春蘭様!走ると危ないですよ!」


「あはは!案ずるな、季衣!風呂場に罠などあるはず…!?ごふっ!?」


「うわっ!?春蘭なにしてんねん!?」


「大変だ!春蘭様が石鹸を踏んで、転倒を!」


「姉者…姉者ああぁぁー!!!」


何やら、大浴場で事件が発生したらしいが、大丈夫か?


「はぁ…。何やってるのよ、あの子たちは…」


「あ、あはは…大丈夫だろ?それより、華琳、移動しない?」


「え?移動?」


「脱衣場は流石に…ね?何だか落ち着かないし。雰囲気ないし。実は、俺専用の風呂があるんだ」


「一刀専用のお風呂?」


「うん。ここ、大浴場の隣に、二人くらいは入れる、風呂があるんだ。因みに完全、防音だよ」


「そう。いいわ、連れてって」


「の前に…コイツどうにかして…」


俺は動かない身体を、もぞもぞとさせると苦笑した


「あ、ごめんなさい。すぐ、解くわ」


「ありがとう…」

やっと解放された俺は大きく伸びをすると、華琳に向き直る


「それじゃ、行こうか…華琳…」


「ええ」


手を差し出すと、華琳は笑顔で手を取り頷いた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ