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今日の華琳さん家  作者: 黒崎黒子
72/121

絶対王女

『さあ!決勝の駒を揃えましょう!蜀代表、呂布将軍!魏代表、張遼将軍!前へ!』


「よ!久しぶりやな~、恋。こうして、手合わせすんのは董卓軍以来やっけ?」


「…ん」


「ほな、やろか…。今日こそ、勝ち星貰うで!」


「ん!…来い…!」


『いよいよ、本大会も終盤!決勝へ駒を進めるのはいったいどちらの選手なのか!Are you ready?』


空が二人の間に立ち

くるくると回りながら、盛大に叫ぶ


「「……」」


『FIGHT!!!』


「…そこ」


「なっ!?」


手が振り下ろされた瞬間、霞の堰月刀の刀身が唸りを上げて飛んでいった


『へ?』


「「「え?」」」


「あれ?ウチの堰月刀、何処行った?」


刀身の無くなった堰月刀を見た霞は、キョロキョロと周りを見渡す


「…ごめん…早く…ご主人様と…試合…したかったから…本気で行った…」


「あ、ええねん。恋が本気でくるのは分かっとったから。ただ、武器を真っ二つにされるとは思ってへんかったから、ちょっと驚いたわ」


「…ごめん…」


「ええて!恋も一刀と試合したかったんやんな?」


「(こくこく…)」


霞の言葉に恋は何度も頷く


「ウチはもう、前の試合で答えは見えてんねん。好きな人と一緒に居るために強くなる。そのために、修行して出直すつもりや。恋も見つかるとええな、ずっと探してるもん」


「ん…ご主人様なら…きっと知ってる」


「そやな。ところでウチの堰月刀の先っぽ、知らん?」


「ん?…あそこ…」


恋が指差した方向を見ると、玉座に座った華琳がニコニコと微笑んでいる

その隣の玉座には失神した少女が座っていた

少女の頭数ミリ上には刀身が刺さっていた


「あ、あははは…ごめん!桃香!」


「ごめん…桃香…」


「(しーん…)」


二人が、失神した桃香に向かって頭を下げる

反応がない


「あ、当たったんちゃう?」


「たぶん…大丈夫…」


二人は冷や汗を流しながら王ブースを見上げる


「大丈夫よ。こちらはいいから。廬植様、判定をお願いします」


華琳が苦笑しながら、ひらひらと手を振ってみせた


『は、はい…。武器破壊により、戦闘不能と判断。勝者!蜀代表、呂布将軍!』


「「「お…おおおぉぉぉ…!!!」」」


「本当、大丈夫かいな…桃香?」


「…大丈夫、当たってない。たぶん…」


「たぶんって…」


不安げに二人は王を見上げると、華琳が桃香に近寄るところだった


「いい加減、みんなも心配してるわよ?起きなさい。桃香…」


「(しーん)」


「はぁ…仕方ないわね…。コホン」


咳払いをした華琳は桃香の前に立つと拳を構える


「私のこの手が真っ赤に萌える!桃香を起こせと轟き叫ぶ!曹家直伝!覇王!昇竜破!」

黄金の覇王色を纏った拳を桃香の鳩尾に一発叩き込むと、すかさず自分の玉座に座り平静を装う


「ゴフッ!?…はっ!?いたたた…!なに!?スッゴいお腹に鈍痛が!?」


「大丈夫?桃香?お昼に何か悪い物でも食べたんじゃない?」


「え?いや…この痛みは腹痛じゃないと思うけど…」


「そんなに痛いの?曹家直伝の痛み止め、飲む?」


お腹をさすりながら首を傾げる桃香に薬を手渡すと、華琳は改めて玉座に戻る


「ありがとう…うへ~苦い…」


「良丸、口に苦しって言うじゃない。よく効くから私もよく使っているわよ」


「華琳さんのお墨付きなら安心だね。でも、本当、何だったんだろ…」


「腹痛よ」


「そうかな?」


「お薬、効いてきたでしょ?やっぱり、腹痛よ」


「う、うん…確かに痛みはないけど…お薬ってそんなに早く効くの?」


「当然よ、曹家直伝なのだから」


「自身あるんだね…」


「えぇ!だって、曹家ですもの!」


「へ、へぇ…」


「ほら、桃香、決勝が始まるわよ!」


「う、うん…」


華琳が前を向くのに倣い、桃香も前を向く


「覇王拳って…単なる、グーパンチだよな」


一部始終を見ていた俺は、苦笑しながら後ろの二人に振り返る


「だな」


「うまいこと、ごまかしたみたいですけど…あの薬は前に、私があげた物ですよ?」


「曹家直伝じゃないの?」


「単なるビタミン剤ですよ」


「はは…この外史の覇王は頭も舌もよく回るな」


「えぇ…私たちの知ってる"曹孟徳"とは大違いですね。いつも、蜀の王、北郷一刀に負けたことに引け目を感じていた、彼女とは大違いです」


「この外史の華琳は嫌いか?」


「ふふ…」


「あはは…」


俺の言葉に左慈と于吉は苦笑すると、王様ブースを見上げる


「曹孟徳を嫌うヤツなんて…」


「この世界にはいませんよ…」


ポツリと二人は呟くと、俺を見つめる


「まぁ、お前ほど曹操を愛している人間もいないだろう。北郷」


「ですねー…」


「ば、バカ!それは…」


『一刀ー!そんな所にいないで、早く舞台に戻りなさい!何時まで経っても始められないでしょ!』


「か、華琳!?」


「ほらほら~、愛しの彼女が呼んでますよ~?」


「そうだぞー。早く行け。俺たちは忙しいんだ」


「ここで、モショモショご飯食べてることが忙しいと?」


「ステージの設備等は仙術を使って居るんですよ?これだけの設備を動かしているですから、今でも凄まじいエネルギーを消費しています。こうしてご飯を食べなければ、今頃、カピカピのミイラになっていますよ」


「そ、そりゃ、悪かった」


「おう!はぐっ!もぐもぐ…ごくん!反省するといい!」


「でも、左慈は仙術を使ってないんだから食べなくて良いよな?」


「ふっ…俺は、成長期なんだよ」


「ほぅ…」


俺はニヒルに微笑むと、懐に手を入れる


「っ…ガタガタ…!!!」


『遊ぶなー!かーずーとー!!!』


「…ちっ…命拾いしたな、左慈…」


振り返ると、観客席から飛び降りる


「強くなりましたね…一刀くん」


「ガタガタ…!」


震える左慈を横目に見ながら、于吉は苦笑するとオニギリを頬張った


「何より、それを御する覇王曹操の器というのも恐ろしいものです…絶対強者…いえ、絶対王女…ですか。ふふ…一刀くんが全てをかけて、救いたいと思う少女の行く末…もう少し見てみたいですね?」


「そうだな。だが、とりあえず、今は…」


「えぇ…あそこの鼠を退治しなくてはいけませんね」


「大丈夫なのか?」


「栄養も休憩も沢山とれて、氣は回復しています」


「そうか…なら…」


「えぇ…」


「遊びを…」


「研究を…」


「「始めよう…」」


にたりと狂気に満ちた笑いを浮かべ、二人は観客席の隅にいる黒服の女たちを見つめた

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