少女は想う
貂蝉の背中が見えなくなると
黒髪を揺らして
周作が腕を絡めてくる
「ん?どうした?」
「ん~?えへへ♪」
豊満な胸が一刀の腕に押し当てられる
「はぁ、胸、当たってるぞ?」
自由な方の手を頭に当ててため息を吐く
「当ててるんだよ?」
ほらほら~と緩急をつける
「ふふ…どう?欲情した?」
妖美な表情で一刀を見つめた
「そ、そりゃね。で?どうしたんだ?」
むにむに…むにむに…
さすがにヤバいので引っ剥がしにかかる
「むー!や!」
ぎゅーっと巻き付いて離れない
「はぁはぁ、わ、分かった。とりあえず…
どうしたのか教えてくれないか?」
「ん~、気になることが多々あってね~」
「さっきのこと?」
あっちの世界のことだろうな…
「一刀…よかったの?帰らなくて。」
「ん?今、帰っても意味がないしな。
華琳にどやされるのが目に見える」
「その…華琳さんて…恋人?」
「華琳はね、俺の大切な人だ。
魏の王であり、大陸の王。
そして、寂しがり屋の女の子だよ。」
「そうなんだ…」
腕に込める力が明らかに無くなる
今なら簡単に剥がせるが…やめとこ
「周作…?」
"ビク"
俯いた周作の肩が震えた
「…一刀は…いつかはその人の
ところに帰るんだよね…」
声に嗚咽が混じっている
「あぁ、必ずあの世界に帰るつもりだ。」
「一刀…そばに居てよ…好きなの…
初めて会ったときから…ずっと…
好き…お願い…ひとりにしないで…」
腕に巻きつく力がなくなり
袖を掴むのがやっとのようだった
「…そうだったのか…周作…ごめんな…」
そんな、袖を掴む彼女の手を
痛めないよう優しくほどいた
外され手は助けを請うようにさ迷い
やがて救い主が現れないと悟ると
力なく下がった
「っ…ぅう…」
周作は深く俯き熱い涙を零す
涙は地に落ちて濡らす
涙が止められない
「周作…」
ほら、一刀が心配してる
にこにこと、いつもみたいに笑わなきゃ
気持ちとは裏腹に涙は止まらない
あぁ、私、本当に一刀のこと大好きなんだ
そのとき、自分の気持ちを再び認識して
涙は更に溢れ出した
「腕やら袖やらを掴まれてちゃ
気持ちを伝えることもできないからな」
"ぐい"
声と同時に強く引っ張られる
「…え?」
そして…少女を暖かな温もりが包んだ
見上げると大好きな彼の笑顔
「俺も大好きだよ…
周作…よかった…両想いだな」
にこっと一刀は周作に笑顔を向ける
「一刀…?両想いって………んん!?
ぷは!か、か、一刀!?」
戸惑う少女の唇を一刀は奪った
唇を重ねるだけのソフトキス
いきなり激しくはしない。マナーは守る
「一刀…」
「周作…」
二人は熱い視線を交わすと小さく微笑み、手を取り合って、我が家に入って行った
どうなったかって?そりゃ、秘密さ…