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今日の華琳さん家  作者: 黒崎黒子
64/121

桜、蓮、空


「ただいま、華琳」


華琳の前に立ち、そう告げたのは

姓は橋、名を玄、字は公祖、真名を桜


華琳が通っていた私塾の先生

無名だった華琳が周囲から

一目置かれるようになる切っ掛けを

作ってくれた人物

華琳の恩人中の恩人だ


「帰ってきたわよ、雪蓮」


雪蓮の前に立ち、そう告げたのは

姓は孫、名を堅、字は文台、真名を蓮


呉の初代王にして雪蓮の母親

雪蓮の性格を作り上げた原因であり

雪蓮がこの世で唯一恐れる人物

武、政、人徳、全てに秀で

生きていれば、間違いなく天下を

取っていたのは呉に違いなかった


「お久しぶりですね、桃香さん」


桃香の前に立ち、そう告げたのは

姓は盧、名は植、字は子幹、真名は空


桃香と公孫賛の通っていた私塾の先生

古今の書に通じ、博学で

節義も高かったことから人望が厚い

朝廷に召され、博士となった経験がある

武にも秀でており、その才を買われて

太守に任命されたこともある

今は太守を下り、私塾で生徒と

共に過ごす日々に喜びを感じている

三人は微笑むと優しい目をして

立派になった子を見つめる


「「……」」


対する華琳と雪蓮は

目を丸め立ちつくした


「お久しぶりです♪先生~♪」


桃香だけは空と手を合わせ騒いでいる


「一刀…私、夢を見ていのかしら?

 目の前に、亡くなったはずの

 橋玄様がいらっしゃるの」


「最後まで看取って葬儀まで開いたのに

 目の前にいるなんて、化けてでたとしか

 思えないわよ」


華琳と雪蓮が目の前の二人を

指差しながら、青筋を立て俺を見る


「いや、夢でも幻でもないよ

 ましてや、幽霊でもない

 生身の人間だよ。三人はそれぞれの

 事情で皆の前から消えたんだ」


「「事情?」」


「それは、本人たちから説明があるさ

 今は二人がしなきゃいけないのは」


そう言って、華琳と桜の手を重ね

雪蓮と蓮の手を重ねる


「帰ってきた皆を

 祝福することじゃないのかな?」


「そうね…、お帰りなさい、橋玄様」


「えぇ、ただいま、華琳」


「お、お帰りなさい。か、母さん」


「うむ!今、戻ったわよ、雪蓮」


四人は、はにかみながらも

互いの再会を祝した

「一刀様!」


「ん?」


空が目を輝かせてこちらを見る

興奮覚めやらぬ!といったところか


「少し、お話ししてもいいですか?」


「あぁ、俺も左慈と貂蝉に用があるし

 あと、どっかにいる于吉と合流しないと

 桜、蓮、空、しばらく頼むね?」


「「「えぇ!(はい!)」」」


そう言うと、手を振って会場を後にする

背中から、ぎこちなくも温かい

少女たちの声が聞こえる


「きっと、大丈夫だろ」


俺はそう、呟くと見回りをしている

貂蝉と左慈を探すために屋根に登る

見渡しやすいからな


「お、ここにいたのか…三人とも」


屋根に登ると思わぬ顔に出くわす

着替えを済ませたのか、いつもの格好の

左慈と貂蝉、そして于吉がいた


「久しぶりだな、于吉

 元気そうで何よりだよ」


「ええ、一刀くんもお変わりなようで」


二人は微笑むと屋根の上に腰掛けた

それにならい、あとの二人も腰掛ける

四人の視線の先には、会場で話す

少女たちの姿が映っていた


「良かったわね、みんな」


「会いたいと願う人に会えるのは

 いつの時代も嬉しいもんさ

 それが二度と会えないと

 思っていた人なら尚更だよ」


分かるだろ?と左慈と于吉をみると

二人は苦笑しながら頷いた


「さて、再会を祝すのもいいが

 今は当面の問題を片付けようか」


俺の言葉に皆が頷く


「今回の、絡繰り騒ぎ…どう見る?」


「そうですね。絡繰り集団は明らかに

 敵の仕業で間違いないでしょう

 一刀くん型の絡繰りは分かりませんが」


アレか。未来から来た人型兵器と

新世紀な人型兵器を足して割ったような

明らかにオーバーテクノロジーの絡繰り


「あれは調査が必要だな

 貂蝉、機械は得意だろ?任せるよ」


「むふん!分かったわ!」


「これを見てください」


于吉が懐を探り、何か取り出した


「これ、ICチップじゃないか!?」


于吉の手に握られていたのは

俺たちの世界ではありふれた物

当然、この世界にあるはずはない


「兵型絡繰りを一機回収して

 バラしてみました。外観は普通の

 絡繰りと変わりありませんが

 中身はとんでもない

 完全にオーバーテクノロジーですよ」


「敵は相当の技術を持っているわけだ

 この世界では有り得ない。つまり、だ」


そこまで言って左慈を始め、皆が見てくる

「敵は天の御遣いで

 間違いないってことか」


ICチップを握り締め、粉々に粉砕した


「これから、敵は様々な手段を講じて

 三国を滅ぼしにくるでしょう」


「だが、尻尾が掴めていない

 分かったのは、天の知識や技術を

 持っているということくらいだ」

オーバーテクノロジーの結晶ともいえる

絡繰りたちを思い出しながら頷く


「そうね~敵が何人いるのかも

 未だに分からないし~」


「当然、敵の本拠地も分からなければ

 敵の大将が本当に、平行世界の

 俺なのかも分からないよな

 無理やり、協力させられている

 可能性もあるわけだし」


「そうだな。北郷、機械は得意なのか?」


「いや?人並み程度だよ

 ICチップやロボットの作り方なんて

 考えたこともない」


こんなの作って!と頼めば

実現してみせる真桜は本当に凄いよね


「李典ちゃんか…ご主人様!私、ちょっと

 試したことがあるのよん

 李典ちゃんを借りたいんだけど

 いいかしら?」


「いや、それは華琳に聞いてくれよ」


さすがに、魏の将を俺の独断で

動かすわけにはいかないだろう

ここは、魏王にお伺いを立てるのが

筋というもので…


「別に、いいわよ?」


"ジャン!ジャン!ジャン!"


「げっ!?曹操!!?」


突然、銅鑼の音と共に華琳が現れる

左慈は華琳の顔を見ると

叫びを上げて、貂蝉の後ろに隠れた


「はぁ…別に取って食べたりしないわよ」

そんな左慈を見て皆、苦笑する


「……く、首チョンパ」


「しないわよ。事情は橋玄様から聞いたわ

 親孝行、大いに結構。これからも

 一刀を宜しく頼むわよ。左慈

 それで、私を屋根に置き去りにした件は

 不問にしてあげるから」


「わ、分かった。が、頑張る」


華琳の微笑みに

左慈はカクカクと何度も頷いた

そういえば、前から思ってたんだけど

華琳の噂をすると必ず、彼女が現れるのは

何か仕掛けでもあるんだろうか?


「それはね、秘密よ♪」


しれ、と答えると華琳は俺の隣に座る


「顔に出てた?」


「ふふ…えぇ、ばっちりと」


華琳は本当に可笑しそうに笑うと

真剣な顔で俺たちを見る


「一刀。それに、貴方たちにも話があるの

 今から緊急で三国会議を行うから

 皆、下に集まりなさい」


「あ、あぁ。分かった」


いいか?と三人を見ると皆、無言で頷いた


さて、大荒れな会議になりそうだな

「それでは、会議を始めるわ」


中央に曹操、右に劉備、左に孫策

三つの玉座に腰掛けた三国の王たちが

ぐるりを周りを見渡すと三国の武将と

知将が頷いて、私語を止めた

玉座の前には進行役として夏侯淵が立ち

三国の王を様々な状況でも守護出来るよう

甘寧と周泰が側に控えている


「先ずは皆に、紹介したい者がいる」


曹操が手をあげると会議場の扉が開き

三人の女性が入場してきた


「こちらの方たちは、我々の師であり

 三国の客人である

 右から、橋玄様、櫨植様、孫堅様よ

 無礼のないようなさい」


「「お…お母様さん!?」」


『文台様!?』


呉の将が立ち上がり、まるで幽霊を

見たように固まってしまった


「たっだいま~♪」


孫堅文台は手をひらひら振りながら

呉の皆に軽く、本当に軽~く挨拶する

まるで、旅行に行って

ついさっき帰ってきたような軽いノリだ


「ねぇ…さい


孫家の末の妹が、唖然とした顔で

黄蓋を見つめる


「なんじゃ?尚香しょうこう殿」


黄蓋は何か納得したような顔で

孫堅を見ていた


「あの人が、私のお母さんなの?」


「そうじゃ。孫堅文台様。呉の建国者に

 して、前王。江東の虎と呼ばれた

 英雄にして、尚香様の母様じゃ」


「っ…お母様―――!」


孫尚香は走り出し、孫堅に抱き付いた


「っと…小蓮シャオレン!?」


孫堅は本当に驚いた顔をして

尚香を抱き留める


「本当に…本当にお母さんなの?」


尚香が顔を上げ、期待と不安の

入り混じった表情で見つめた


「えぇ…お母さんよ」


驚きに染まった表情も一瞬

優しい母の表情で尚香の頭を撫でると

屈んで、真っ直ぐに

尚香の揺れる瞳を見つめた


「最後に会ったのはまだ、貴女が乳母に

 抱かれていた頃ですものね

 覚えていないのも無理ないわ

 寂しい思いをさせて、ごめんなさいね

 ただいま、小蓮…」


「お母様…お母様――!!」


尚香は、むせび泣きながら母に抱きつく


「……」


その様子を孫権が静かに見つめていた


「孫権殿!」


"トン!"


「ひゃ!?」


黄蓋に背中を押され、孫権が前に出る


蓮華レンファ…」


孫堅は現れた娘を見て微笑むと

片方の腕を広げて見せた


「ただいま、蓮華」


「…おかえりなさい!お母様!」


孫堅は飛び込む娘を抱き留め

しっかりと娘たちを抱きしめた




「それじゃあ、また後でね」


「はい(うん)…」


孫堅に促され、二人は席に戻る


「ごめんなさい。進行の邪魔を

 してしまったわね」


玉座に振り返ると、深々と頭を下げた


「いいわよ。美しいものが見られたもの」

曹操は手で制して微笑むと

顔を上げるように告げる


「それでは、会議を始める」


夏侯淵の声が響くと、ざわついていた

空気が再び引き締まった


「議題は李典の絡繰り騒動について

 ですが、華琳様。その前に

 お聞きしたいことがあります

 最後に現れた者は何者ですか?」


夏侯淵が振り返り、曹操を見ると

三国の将も玉座を興味深げに見つめた


「そうね…まぁ、今回の騒動の

 真相を知る人物でもあるし

 皆にも伝えたいことがあるのだけど

 二人はどう思う?」


曹操が劉備と孫策を見ると

二人は笑顔で頷いた


曹操は頷き返すと、静かに手を上げた


すると会議場の扉が開かれ

一人の黒騎士が静かに中央へ歩いていく


その様子を三国の皆が凝視していた


中央に着くと、騎士はぐるりと見回すと

肩越しに華琳を一瞥した


「ふふ…紹介するわ。私の夫よ」


その様子を眺めていた曹操は

口に手を当てると小さく笑いながら

とんでもないことを告げた


「「「……え?」」」


三国の皆が、曹操と黒騎士を

見ながら固まってしまった


「ま、待ってください!華琳様!

 こ、これはどういうことですか!」


夏侯惇が立ち上がり、納得できないと

異議を申し立てる


「(ほら、華琳…こうなったろ?)」


一刀が曹操をチラリと見ると、華琳は

ちろっと舌を見せ、夏侯惇に向き直る


「どうもこうも、聞いたとおりよ?

 その者に求愛され、私が受け入れた

 ただ、それだけよ。世継ぎの問題も

 あったけど、これで安心でしょう」


「そんな……隊長は?

 隊長はどうなされるのです!?」


「そ、そうなの!隊長が帰ってくるまで

 皆で待とうって決めたのは

 どうするんですかーなの!」


楽進と于禁が立ち上がり叫ぶ


「ウチは一刀を待つことだけ考えて

 ここに残ったんや。華琳がそんな

 ふざけたこと言うんやったら

 ウチは辞めさしてもらうわ」


張遼が立ち上がると

静かに退出しようとした


「はぁ、話を聞きなさい。しあ


華琳が声をかけると同時に

黒騎士が張遼の前に立ちふさがった



「なんや…どけや!」


張遼が武器を構え威嚇する


「(ふるふる…)」


黒騎士は静かに首を振ると

張遼の武器に手を置いた


「っ!?」


"カチカチ…"


張遼が振り払おうと力を入れるが

ピクリとも動かない


「(…いい加減、教えてもいいだろ?)」


そのまま、黒騎士は曹操を見る

彼女は首を竦めてため息を吐いた


「分かったわよ、もう

 もう少し焦らしたかったんだけど

 仕方ないわね。兜を取りなさい」


「(こくん…)」


"カチン、カチン"


黒騎士は頷くと、兜の留め金を外していく


その光景を目の前の張遼は

武器を構え、静かに見つめていた


ゆっくりと兜を黒騎士が脱ぐと

その下の顔が現れた


日本人特有の黒い髪と、黒い瞳

黄色の肌の青年はにこやかに

微笑むと、兜を脇に抱えて言った


「ただいま…みんな」


「…え?」


それは誰の声だったのか

間の抜けた声が会議場に響く


「え…?か、一刀?」


張遼が武器を下ろし、目を丸めて近づく


「ただいま、しあ


一刀は手を伸ばして張遼の頬に手を添えた


「一刀…ほんまに、一刀なんか…?」


その手を振る手で掴むと頬を擦り寄せた


「あぁ、そうだよ

 ずっと、待っててくれてありがとう

 黙って帰ってごめんな…霞

 ローマに一緒に行くって約束

 今でも、有効かな?」


「当たり前や!ウチが生きてる間は

 ずっーと有効やで!一刀!」


"ガバッ!"張遼が抱きついてくる

一刀はそれをぶれることなく

しっかりと受け止め、抱きしめた


「一刀ー!一刀ー!」


張遼が抱きつきながらも、その瞳から

波がポロポロとこぼれ落ちる


「な、泣くなよー」


「泣くに決まってるやーん!

 会いたい人にやっと会えたんやもん!」


うわーん!と泣いてる張遼の頭を

撫でながら、その後ろを見ると

魏の皆がこちらを見ていた


「お帰りなさい!兄様!」


「お帰り!兄ちゃん!」


「流琉!季衣!」


典韋と許緒が走り寄ってくる


「「「隊長!」」」


「凪!真桜!沙和!」


続けて、楽進、李典、于禁の三羽烏


「お兄さーん!」


「一刀殿ー!」


「帰ってきたわね!変態!」


その後ろから、頼れる魏の軍師たち

程リツ、郭嘉、荀イクが猛ダッシュ!


「北郷!逃げろ!」


「北郷!死ね――――!」


笑顔で刀を振り上げた夏侯惇を

止め切れなかったのか

夏侯淵が必死の形相で追いかける


"ドドド…!"


少女たちがこちらに向かって

猛然と走ってきた!!!「ちょ…ちょっと待てー!」


俺は叫んだ!魏の将が大勢で

こちらに向かって走ってくるんだ!

見ろよ!


"ドドドド…!!!"


全員を受け止めるなんて無理だろ!?


「か、華琳!」


曹操に止めて貰おうと玉座を見ると


「(にこ♪)」


まぁ♪素敵な笑顔♪


「う、裏切りもの―!」


「霞とイチャつくからよ…ばか…」


左手の薬指の撫でながら呟いた

華琳の言葉に、隣に座る王たちは

クスリと微笑んだ


「お、落ち着け!みんな!」


逃げようとすると、何故か動けない!


「し、霞!?」


「男なら、潔く覚悟決めや♪」


張遼が、がっしりと体をロックしていた


「待て!待て!本当に待ってくれ!」


「「「もう、待てなーーーい!!」」」


そう叫んで、魏の武将、知将が飛んだ!


「くっ!?っ~~~分かった!来い!

 みんなまとめて受け止めてやる!」


キラキラと目を輝かせた少女たちを

受け止めるため、腰を落とす

倒れても受け身は取りたいなー…正直


"どしゃーーー!!!"


「「「わあああぁぁぁ…!!!」」」


雪崩のように皆が押し寄せ

あっという間に飲み込まれてしまった


「華琳…さすがに、一刀も

 ヤバいんじゃない?」


「華琳さん…恋ちゃん(呂布)でも

 さすがにあれは耐えきれるとは

 思えないんだけど…」


「だ、大丈夫でしょ…?…大丈夫よね…?

 やっぱりダメかしら……」


それを見ていた玉座の三人は立ち上がる

完全に、顔が引きつっていた


そんな、三人を余所に魏の少女たちは

目を回していた。調子に乗りすぎたのか

勢いを殺し忘れていたのだ


「あー…あの勢いでは助かるまい

 今回で、華琳さん家も終了かの?」


「えぇ…主人公が死んでしまっては

 物語どころではないですしね…」


蜀の弓兵、厳顔と黄忠が首を振り

不吉な言葉を口にする


「何のことか分かりませんが

 流石に、あれはやり過ぎでしょう

 思春殿…逃げた様子はありましたか?」


周泰が冷や汗を流しながら甘寧を見る


「い、いや…見えなかったな

 あの下に居ることは間違いないだろうが

 正直、生きているとは思えん」


甘寧も山を見つめながら、首を振る


「はわわ…!大変でしゅ!」


「あわわ…!え、衛生兵を!」


孔明と鳳統が小さな体をワタワタさせて

走り回る。会議場は完全に混乱していた


「くす…」


「「「?」」」


突如、響いた声に皆が動きを止めた

「くす…くすくす…」


皆が声のする方を見ると三人の女の子が

可笑しそうに笑っていた


「あ、ごめんなさい…ぷ…あはは…!」


「あはは…!大丈夫だよ!」


「ふふ…そうですよ

 一刀様なら大丈夫です!」


橋玄、孫堅、廬植が

口に手を当て笑っていた


「だ、大丈夫って…」


孫権が訝しげに、三人を見る


「何たって…ねぇ?」


「うん!一刀ってねぇ?」


「えぇ…彗星を素手で

 止めたこともありますから」


ねー!と三人は顔を見合わせるて微笑んだ


「「「え、えぇ!?」」」


「よっこいしょ」


その声に皆が驚愕した表情で振り返る


「はぁ。だから待てって

 言ったのに危ないだろう?」


山の中から一刀は出てくると

服を叩いて、埃を落とした

一人ひとり山から救出すると

ため息を吐いていた


「すまん、北郷」


「ごめーん、兄ちゃん」


「すみません、隊長」


全員を救い終えた一刀は

目を回した軍師たちを抱え歩き出す


「季衣、流琉」


「うん!」


「ここにどうぞ」


二人の用意した椅子に軍師たちを

座らせると肩を回して、華琳を見る


「どうした?」


「いえ、何でもないわ」


華琳は胸を撫でながら、玉座に座った


「?」


「驚いたわね…無傷で出てくるなんて」


「本当ですね…」


他の王、二人も感嘆した様子で座った


「では、会議を再開する」


「議題は絡繰り騒動についてだ」


気を取り直した秋蘭(夏侯淵)が

声を上げると場は一応の静けさを見せる

俺は前の特別席にいる

桜たちの横に立った


「一刀」


「んー?」


隣に並んだ桜が小脇を小突いてくる


「視線が熱いねー…羨ましい♪」


それは感じていた。四方八方から何とも

言えない視線を感じるのだ

魏のみんなを見ると、にこやかに

手を振ってくる。一応、小さいながらも

手を振り返した


「しかも、魏だけじゃない。蜀、呉

 も熱心に一刀を見てるわよ?」


「とくに、武官は凄いですね

 今にも、飛びかかって来そう」


蓮と空も面白そうなことになりそうだ

と喜んでいる


「んー、俺はあの視線が一番、痛い」


ジリジリと睨みつけてくる華琳さんの

視線が痛いのなんの


「あー…あれ、一刀が私たちの

 側にいるからだよ、きっと」


「?…何で、それで怒るんだ?」


「「「はぁ…」」」


三人の盛大なため息で

その日の会議は幕を下ろした


「…なんだよ?」会議で絡繰り事件の犯人は

別に居ることが発覚した


暴走した絡繰りは、真桜の用意した

絡繰りではないことが分かったのだ

外見はよく似ており、しかもレバーなどの

場所も寸分の狂いもなかったために

真桜も気付けなかったようだ


「んなら、ウチの絡繰りはどこに?」


真桜の呟きから、数刻後

バラバラにされた『真・絡繰り一刀』が

街の井戸から発見された


「……許さん」


真桜は呟くと、工房に籠もってしまった

回収された『真・絡繰り一刀』と

『偽・絡繰り一刀』『絡繰り兵』が

工房に運び込まれたと聞いたが

その後、姿を見た者はいない


「用もあるし、私が行くわねん」


真桜は貂蝉に任せることで三国は満場一致

その後、何度か工房を訪れた貂蝉の話では一応、真桜は無事らしい


一安心と思いきや、新たな問題が発生した


「一刀、今でも政務はできる?」


「あぁ、問題ないよ」


「それじゃ、前のように政務と警備隊長を

 お願いできるかしら?」


「あぁ、分かった。政務は秋蘭に

 ここ2年の動きを聞けばいいかな?」


「えぇ。風や稟にも聞いておきなさい

 あと、今は昔のように政務に根を

 詰めなくていいわよ

 できる範囲でいいわ

 敵の捜索と、三国の調和の維持に

 努めてちょうだい」


「了解」


「あと、この魏領には三国の皆に

 留まってもらうことにしたわ

 期間は一刀の話から、一年を目安にね」


「一年か。でも、国はどうするんだ?」


「丁度、良かったのよ。三国は次世代を

 考えていた時期だったの

 そのための引き継ぎもしてきたし

 武官や文官も育ててきたわ」


「重鎮がいない政務や部隊で

 経験を積ませるためか」


「勿論、三ヶ月に一度は帰るわよ

 それで、悪いのだけど…」


「その警備が必要ってわけか」


「えぇ…敵は国ではなく

 主要な人物を狙ってくるわ」


「敵の狙いは歴史の再編

 狙われるのは、恐らく」


「秋蘭…」


「それだけじゃない。国を滅ぼすなら

 頭を狙うのは鉄則だろう?

 華琳、雪蓮、孫権、桃香は

 必ず狙われるよ」


「ふぅ。人気者も楽じゃないわね」


「はは…余裕だなー」


「ふふ…勿論よ!だってあなたが

 私たちを守ってくれるのしょう?」


「あぁ。君も、君の大切な人も

 俺が守ってみせる」


「……」


「俺も消えない!」


「ふふ…えぇ!期待しているわ」


二人は城壁からしばらく、街を眺めていた


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