はじめまして!北郷さん!
「「じー……」」
視線を感じて周りを見ると
三国の皆が会場を撤収している中
蜀と呉の王たちがこちらを見ていた
「あ、続けて、続けて」
孫策がこちらの視線に気付き
気にするなと手を振った
「そ、そうですよ!私たちは空気か
何かと思ってください!」
劉備も顔を真っ赤にしてながら頷いた
「それじゃ、遠慮なく」
俺は頷き、華琳を抱きしめると
「で、できるわけないでしょ!」
真っ赤になり、腕の中でワタワタした
「はは…冗談だよ。ほら、華琳」
華琳の背中を軽く押すと、手甲を付けて
華琳の後ろに並ぶ
「…えぇ、そうね」
華琳は少し残念そうな表情を見せると
振り返って、孫策と劉備の元に歩み寄る
「ふふ…お邪魔したわねー
それより、華琳。そちらの御仁を
紹介してくれるかしら?」
「えぇ、いいわよ。あなたたちも
よく知っているでしょうけど。一刀」
華琳に促され、前に出る
「……」
「す、凄い、威圧感ね…」
孫策がごくりと喉をならし、一歩下がる
「あ…ごめん。こんな格好で
俺は北郷一刀。天の御使いだよ
今は、魏でお世話になってるんだ
一刀って呼んでくれ。よろしく」
「あの?写真の?優男が?」
目を丸め、俺を指差す
「ふふ…驚いた?天界に帰って
修行したんですって
実力はさっき見た通り
はるかに強くなって
帰ってきたみたいよ?」
「へぇ。あ、ごめんなさいね?
私は呉の王をしているわ
姓を孫、名を策、字を伯符
真名を雪蓮。よろしく!」
雪蓮が手を差し出してくる
その手を取り握手を交わした
「あ!私は蜀の王だよ!
姓を劉、名を備、字を玄徳
真名を桃香って言います!
よろしくね!一刀さん!」
「こちらこそ、よろしく。桃香」
がっちりと握手を交わすと
桃香は握った手をしばらく見つめる
「一刀さんって、手、大きい…」
きゅ、きゅ、と手甲越しに触られる
「え、えぇーと、桃香?」
「え?あ!あぁ!ごめんなさい!」
パッ!と手を離すと真っ赤に
なって頭を下げた
「ふふ…気に入ったなら
貸してあげるわよ?桃香
そのかわり…」
「い、いえ!結構です!華琳さんの閨に
向かうハメになるのは御免ですから!」
更に真っ赤になった桃香が
ぶんぶん手を振りながら後退る
「あら、残念ね」
華琳は肩を竦めチロリと舌を出した
「(本当にな…)」
心の中で一刀もそう、呟いたのは内緒の話
「ところで、アレ、一刀の仲間?」
雪蓮が物陰に隠れた怪しい2人組を
指差して苦笑する
「断じて違う」
俺も苦笑しながら首を振る
「そう。それじゃ、アレは
捕らえてもいいわけね」
「手伝おうか?」
「いいわよー。頭隠して尻隠さずのヤツ
なんか敵じゃないわ」
「一応、気を付けなさいよ?
武官は今、誰も動けないんだから」
「はいはい~」
ひらひらと手を振り敵の元に歩き出す
華琳の言った通り、今
この会場に武官はいない
居るのは各国の王と十五ばかりの兵だけ
先の騒動で皆、救護室に運ばれ
各国の軍師も王の命令で
武官の付き添いに行っているのだ
「いつでも、動けるように
しておいて。一刀」
「あぁ」
俺は華琳の言葉に頷くと
華琳と桃香の前に出る
兵も敵を逃がすまいと
出口を塞ぐように数人
雪蓮と敵を囲むように数人が立つ
雪蓮はチラリと配置を確認すると
敵に声を駆けた
「あなた達、気付かれているのを
知っているくせに逃げもしないなんて
一体何が目的なの?」
「「……」」
ゆらりと2人は立ち上がると
すらりと武器を抜き、歩み寄る
「っ!?一刀!こいつら
さっきの絡繰りよ!」
雪蓮が叫ぶのと同時に走り出す
しかし、その前に兵が立ちふさがった
「と!?何だよ!?」
「一刀!この兵も皆、絡繰りよ!」
華琳が死神鎌・絶で兵が振り下ろす
武器を防ぎながら叫ぶ
「くっ!罠か!」
拳で敵を凪倒しながら、雪蓮の元に向かう
華琳と桃香の方は、まだ敵が少ないのだ
「っとにもう!次から次へと何なのよ!」
「えぃ!たぁ!やった!倒れ…うわぁ!
また起きてきたよ~!?」
「はぁ。やっと想いが通じたと思ったら
帰っちゃうし。帰って来たら来たで
また、ワケの分からない騒動が起こるし
私たち、いつになったら、普通の恋が
できるのかしら。ていうか
それもこれも、あんた達のせいよ!
このガラクタ共!ボコボコにして!
バラバラにして!粉々にして!
猫のトイレにしてあげる!
覚悟なさい!」
若干1名、壊れた少女の声を聞きながら
敵を殴りつけて前に進む
「くっ!敵が多すぎる!」
若干、数は減らしたが、まだ辿り着けない
「っ!?しまった!」
そんな時、前方から雪蓮の声が聞こえた
見ると、武器を落としてしまったようだ
それを好機と見たのか、絡繰りが
一斉に武器を振り上げた
「ま、大丈夫だろ」
絶対絶命のピンチ
しかし俺は落ち着いたもので
襲い来る目の前の敵を軽くなぎ倒す
だって、雪蓮には彼女がついてるんだから
突如、俺と同じ漆黒の鎧を着た女性が
桃色の美しい髪をなびかせて
雪蓮の前に現れた
「伏せなさい!」
"ガキン!"
女性は雪蓮を伏せさせると
太く長い太刀で絡繰りの攻撃を防ぐ
「まったく、世話がやける娘ね」
力を入れ、弾き返すと横に一閃
周囲を囲んでいた敵をぶっ飛ばした
「……ごめんなさい、助かったわ」
「いいから立つ!次が来るわよ」
「え、えぇ…」
雪蓮は武器を取ると女性に
背を預け、剣を振るっていく
俺はその光景に頷くと
倒れたガラクタの頭を踏みつけ
周囲を見渡す
「まだ、こんなにいるのか
いつの間にか増えてないか?これ」
"ドサ"という鈍い音を聞き
華琳と桃香の方を振り向くと
黒いポニーテールを揺らした黒騎士と
鬼の仮面と鎧を付けた金髪メイドが
華琳と桃香を守るように立っていた
「あなた達は?」
華琳が眉をひそめながら黒騎士を見る
「ふふ…誰だと思う?」
「分からないから
聞いているのでしょう?」
「ふふ…答えはね
生きていたら教えてあげるよ!」
襲い来る絡繰りたちを
軽くいなしながら、華琳と黒騎士は
くるくると回り、敵を斬り伏せていった
「劉備さん!行きますよ!」
「は、はい!」
「そう♪上手ですね!」
「あ、ありがとうございます!」
「ほら、こういう場合は、こうです♪」
「なるほどー、こうですね♪」
「はい♪流石、劉備さんですね」
「えへへ~♪」
変な講義をしながらメイドさんと劉備は
着々と絡繰りを再起不能にしていった
「おい、北郷。こちらも
囲まれていることを忘れるな」
「ご主人様!余所見してると
私が全部、倒しちゃうわよ~」
「あ、おい、少しは残しといてくれよ?
俺も遊びたいんだから」
「ここは早い者勝ちだろう!」
JM左慈!が腰を落とし拳を構える
「そうよん!さぁ!私とヤリたいヤツは
いるかしらん?」
貂蝉が前に出ると、何故か、絡繰り達は
お尻を押さえて後退った
分かるぞ…お前ら
しかし、同情などしている場合ではない
俺は首を捻り、肩を回すと
拳を打ち合わせ、前に出る
「さぁて、派手に遊ぶぞ!」
「「応!!」」
俺たちは、目の前の敵に飛びかかった
「終わりか?」
周りを見渡し敵がいないか探る
この会場の絡繰りは一掃出来ているようだ
「貂蝉、俺達は捕り逃しがないか
周囲を見て回ろう」
左慈がくるりと周りを見回し呟く
「えぇ、そうね!」
二人は警戒をしながら会場を出ていった
「一刀ー、熱い」
俺のマントを引っ張りながら
小さな黒騎士が見上げてくる
「敵は?」
「この会場にはいないようです
兜はもう、取っても大丈夫かと♪」
メイドさんに問いかけると
コクリと頷いた
「ていうか、着替えない?
このままじゃ、話にくいし」
桃色髪の黒騎士が肩を竦めて、提案する
「正直、賛成。華琳、更衣室を
借りていいかな?」
「え、えぇ。いいわよ」
華琳が指差す方に
皆で連れ立って歩いて行く
更衣室で着替えを済ませると
先に俺が出て行く
女の子は色々手間がかかるんだよ
会場に戻ると目を丸めた三人が立っていた
「ほ、本当に一刀だったのね」
第一声からご挨拶だね、華琳さん
「え?まだ、疑ってたの?」
「だ、だって、身長も前より高かったし
体格も逞しくなってたし
何より、強かったし」
「それは、前の俺が弱すぎたって
ことだよねー」
苦笑しながら、三人の前に立つ
「改めて、ただいま、華琳」
「お、お帰りなさい///」
華琳の頭をポンポンと撫でると
雪蓮に向き直る
「さっきはごめんね。俺が北郷一刀です
改めて、よろしく」
微笑むと手を差し出す
「え、えぇ!こちらこそ…よろしく」
雪蓮と握手交わすと桃香に向き直る
「期待はずれでごめんね?
こんな俺だけど、これからも
よろしくお願いします」
「そんな期待はずれだなんて!
一刀さんは期待以上の人だよ!」
握った手をブンブンと振りながら
こちらこそ~!と真っ赤になって頷く
「でも、本当に強くなったわね、一刀
あの一緒に居た人たちも強かったけど
あの人が先生なの?」
「うん。俺の先生たちだよ
紹介するから。ほら、いい加減
出てきなよ。気配、丸分かりだから」
「「「うっ…バレた」」」
更衣室の扉が開くと中から
静々と三人が現れた
「「「ぇ…ええぇぇ――――!!?」」」
背後の王たちから
凄まじい叫びが上がる
まぁ、当然だろうね…




