今、果たされる約束
『じゃあね!また会いましょう、一刀!』
心で愛する者への再会を誓い
友の元へ歩き出した私に迷いはなかった
一刀はきっと帰ってくる
そうね…。私も驚くような土産を持って
来てくれることを期待して
気長に待ちましょうか
ゆっくりと二人の横に歩み寄りながら
一人、クスリと微笑んだ
「ごめんなさい、待たせたわね」
「ほらほら!早くしないと
宴が始まっちゃうわよ!華琳!」
孫策がにこやかに笑いながら
宴の会場を指差し
「そうですよー!華琳さん!
料理も無くなっちゃいます!
さっき厨房が敵襲を受けたと
報告を受けましたし!」
うんうん、と頷きながら劉備は
三国の酒豪たちのつまみと
消えた料理たちに黙祷を捧げた
二人は私の手をとると
会場に向かって走り始める
「こ、こら!危ないわよ、二人とも」
苦笑しながらも、私は身を任せた
三国の王がこうして手を取り合えることが
何よりも嬉しいのだから
「「「乾杯!」」」
三国の皆が杯を打ち合わせ
一気に飲み干すと高々と掲げた
「遠路遥々よく来てくれたわ。二人とも」
杯を干し、二人に向き直ると笑顔を向ける
「いえいえ。三国のみんなが一同に会す
大切な機会ですもん。苦労なんて
感じる間もなく、あっという間に
着いちゃいますよ」
桃香はちびちびと酒を傾けながら笑顔を
返す。顔はほんのり朱に染まっていた
相変わらず酒には弱いのかしら
「しかも、大開にお酒の呑めるし
駆ける足も早くなるってものよ!」
ゆっくりと酒を口に含み
味と香りを楽しみながら
雪蓮は満足そうに頷く
「そういえば、さっき小耳に
挟んだんだけど噂の彼は
いつ帰ってくるの?」
「あ!私も聞きましたよ!真桜ちゃんが
言うには『バージョンアップ!』とか
いうのをして帰ってくるんですよね?」
「「ばあじょんあっぷ?」」
聞いたこともない言葉に首を傾げる
雪蓮も傾けていることからどうやら
天の言葉で間違いないようだけど…
「えーと確か、より機能が上がることで
今まで出来なかったことができるように
なること、だったような」
「機能…才能でもいいのかしら」
ぼんやりと一刀の機能や
才能に思いを巡らせる
「っ…///」
と、ある一点に思い当たってしまった
みるみるうちに、顔が赤くなっていくのが自分でも分かる
「ねぇ、御使いの機能って…なに?」
雪蓮が真剣な顔でこちらを見てくる
「……"さっ"」
私は無意識に目を反らしてしまった
はたと気付く。今のはまずい
自分でも分かるほど明ら様に怪しかった
案の定、雪蓮は何か気付いたのか
「ちょっ!何よ!その反応は!
凄く、気になるじゃないの!いいわよ!
他の将から聞いてやるから!
凪!ちょっと、こっち来なさい!」
手近で料理をつついていた楽進を
呼び止め、手招きする
「は?私ですか?何でしょう?」
「御使いがバージョンアップして
帰ってくるのよね?」
「え、ええ。そう、聞いていますが」
凄い形相で詰め寄られ、凪は一歩後退する
「で、御使いの機能って何なの?」
「は?」
「魏の皆が待ちわびるほどの
凄い力って何なの!?武!?知!?」
「いえ、隊長の武は兵と変わりありません
知は稀に思いもよらない発想をしますが
軍師ほどの知はないかと」
「武でも知でもないの?一体、何者?
あの華琳が酷くご執心な相手って?」
「ちょっ!ちょっと!何を言ってるの!」
「え?違うんですか?」
「桃香まで何を言ってるのよ!
一刀は違うわよ。その何て言うか…
そう!一応は仲間なのだから
心配するのは当たり前でしょ?」
「真桜ちゃんに聞いたけど
華琳さんは"御使い様の写真"を
肌に離さずに持ってるって…」
「わ――!わ――!」
叫びを上げながら桃香を追い掛ける
くっ!意外と足が速いじゃない!
でも、これ以上、桃香に余計なことを
喋らせるわけにはいかないわ!
意を決して、私は目標に飛びかかった
「へ?わわわ!?あた!?…きゅ、きゅ~~~…」
「ふ、ふふふ…。よし、これで大丈夫ね…」
何とか、危機は脱したようだ
目を回した桃香を見下ろし
満足げに微笑むと皆へ振り返る
するとそこには雪蓮を中心に
"にや~"笑う集団が立っていた
「かーりーん」
「な、なによ…」
「あなた、御使いに惚れたわね?」
「な!?」
ほれ、と雪蓮が取り出したのは一枚の写真
慌てて衣服を探るが、そこにあるはずの
感触が感じられなかった
「揉み合いの拍子に落としたわよ
大事な物なのでしょ?」
苦笑しながら雪蓮は手渡してくる
「…ありがとう」
写真を受け取り、しばらく見つめ
胸ポケットに仕舞った
ぽんぽんと叩いて感触を確かると
安心感がほんのりと胸に染み渡る
「でも、華琳が惚れるのも分かるわ
いい男じゃない!女にしか
興味ないのかと不安に思ってたけど
本当、安心したわ
魏の世継ぎは安泰ね」
雪蓮がうんうんと頷くと
後ろの皆も頷いた
「別に顔だけじゃないわ
一刀には、一刀にしかない
いいところがあるのよ」
写真の入ったポケットを手で押さえ
目を瞑る。思い出すのは共に過ごした日々
「そうですね」
私が呟くと後ろから凪の声が聞こえる
振り返ると、そこには魏の武将や
軍師が立っていた
皆、一刀との日々を思い出したのか
彼と同じ、優しい目をしている
「ふふ…これほどまでに慕われているとは
天の御使いという男、是非とも会って
みたいものだな、雪蓮」
皆の様子を見て、呆気に取られていた
雪蓮の肩を周瑜がポンと叩いた
「冥琳?ええ、そうね…どんな男なんだろう」
二人は魏の重鎮たちの優しい雰囲気を
通して、まだ見ぬ御使いに想いを馳せる
「てなわけで!こんなこともあろうかと! 用意させて頂きました!」
会場に設置された舞台の上に
魏の工作担当にして三国一の絡繰り師
李典こと真桜が大きな箱を運んできた
「何?私は聞いていないのだけど?」
不思議に思い、私はステージ上の
大きな箱と真桜を見つめ首をかしげる
「ふっふっふっ…三国の皆さんを
驚かせよう思て、秘密裏に
用意してたんです
大将、許可くださーい」
「危険はないのでしょうね?」
「ありまへん!」
胸を張って真桜は応えた
「ふぅ…まぁ、いいわ。見せてみなさい」
「さっすが!大将!ほな、行きます!
1/1絡繰り一刀くんの登場や!」
"ガチャン!"
「「「「!!?」」」」
真桜が箱から伸びたレバーを引くと
わずかに、扉が開く
演出か、扉の隙間から煙が漏れ出してきた
"ぎいぃぃ"
扉が開かれていくと
中から"北郷一刀"が現れた
「……凄いわね…まるで本物じゃない…」
私は恐る恐る、近づいていき…
ふと不安で立ち止まる
警戒するように遠巻きに見て回ると
真桜に向かって問いかけた
「ねぇ、真桜…」
「何ですか?」
「この角と、この紐は必要なの?」
絡繰り一刀の頭と背中を指差し首を傾げる
「え?あぁ、それは隊長に
教えてもろたんですわ」
「一刀に?」
「何でも、天の世界には
人造兵器っていうんがあって
そいつには角とこの紐がついてる
らしいんですわ。絡繰り一刀くんは
それを元に作成したものなんです」
「……本当、変な世界ね…天の国って」
顎に手を当て、今まで一刀が教えてくれた
天の国に想いを馳せる
聞けば聞くほど、理解不能な世界だ
「それじゃあ、動かしますわ」
箱の後ろに回るとレバーを上げる
瞬間、絡繰り一刀の瞳に光が宿った
"ドッ!…ドッ!…ドッ!…"
ぎこちない動きながらも
一歩、また一歩と動き始める
「華琳様、こちらへ」
夏侯淵こと、秋蘭が私を呼び
庇うように前に出た
何かあっては遅いと
用心しての行動なのだろう
「ありがとう、秋蘭」
さり気ない心遣いに私は微笑む
「ギ……ギギ…」
しばらく歩くと絡繰りが停止する
「…なんだ、真桜。どうしたのだ?」
急に停止した絡繰りに
春蘭が眉をひそめる
「あれー?どないしたんやろ?
設計は完璧な筈なんやけど
人と変わらん動きを見せて
皆を驚かせる筈が。何や失敗かー
すみません、大将。また、次の機会に」
「えぇ。残念だけど、ここまで
作り上げたのなら完成は近そうね
次を楽しみにしているわ、真桜」
爆発もなく、何事も起きずに
停止した絡繰りに
ホッと皆が胸を撫で下ろす
そんな中、真桜は一人
はぁーとため息を吐き
絡繰りを回収しようと近づいた
「っ!真桜!伏せろ!」
「へ!?はいな!」
"シュ!"
突然の凪の声に真桜は考える間もなく
地面に伏した
瞬間、真桜の上を何かが通り過ぎる
『なっ!?』
会場に緊張が走る
真桜の命を刈り取ろうしたもの
それは、停止した筈の絡繰りだった
絡繰りは手を突き出し、真桜の頭を
握り潰さんとしたのだ
「馬鹿な!止まったのではないのか!?」
「何や知らんけど、暴走しとる!」
転がりながら、私たちの元に辿り着くと
武器を構えて叫んだ
「全く!こんな日まで
何をやってるのよ!」
私も武器を取り出し構える
「あはは!でも、楽しいわよね!
こんな緊張、久しぶりだわ!」
雪蓮も目を輝かせて武器を構え
「華琳さんに負けてからの修行の成果
今こそ、試すときだね!私だって
少しは強くなったんだから!」
桃香も武器を構えて敵を見据えた
三国の王たちにならい、武官たちが
各々の武器を構え、前に出る
「ふふん…愛紗!」
「ん?何だ、春蘭?」
「料理勝負は華琳様たちに言われ
結局、決着つかずのままだったな
どちらが、あの人形を討ち取るか
勝負しようじゃないか!」
「ほぅ!この『関羽雲長』に
武で挑むのか。いいだろう
武神と言われた、私の力、見せてやる」
「ふ。いいだろう。では尋常に」
「「勝負!」」
「「はあああぁぁ!!!」」
二人は駆け出し、各々の武器を
絡繰り目掛け振り降ろした
"ガキン!!"
「「!?」」
二人は渾身の一撃を放った
だが、堰月刀も餓狼も絡繰りに傷ひとつ
つけることができなかった
すべての攻撃が絡繰りの
硬さに阻まれてしまったのだ
「真桜!どういうことなのだ!」
堪忍袋の緒が切れた春蘭が説明を求める
「すみません!春蘭様!春蘭様が
隊長を追い回す勢いで、また壊される
やろうと思ったんで、滅茶苦茶頑丈に
作ったんです!」
「それにしたって硬すぎじゃないのか?
くっ!攻撃の衝撃が帰ってくるようで
手が痺れてしまうぞ!」
関羽が武器を振るうが、どんなに
力を込めても、断ち切れることはなく
衝撃がそのまま返ってくる始末である
「一旦退け!姉者!愛紗!」
秋蘭の言葉に二人は
歯を食いしばると後退した
入れ違いに戦闘に入ったのが
魏の親衛隊、季衣、流琉
そして、蜀の力持ち魏延(焔耶)
「季衣!流琉!私が隙を作る!
二人は横っ面から叩き込め!」
「任せて!」
「はい!」
焔耶が中央から、金棒を振り下ろすと
絡繰り一刀は両手でこれを防いでみせた
「今だ!」
「「せいやぁー!」」
両手の塞がった絡繰りの両側から
プレスするように、鉄球と
巨大ヨーヨーが襲い来る
「ギ…ギギ…!」
「なに!?」
絡繰りは焔耶の金棒を押し返すと
両手を広げ、襲い来る巨大武器たちを
片手で止めてしまった
「ならば!」
焔耶は金棒を振り上げると
無防備な絡繰りの頭に
思いっ切り振り下ろした
「ガ!?ガ!!ギギ…」
絡繰りは力なく膝から崩れ落ちると
そのまま、倒れ伏してしまった
「やった…のか?」
「やったんでしょうか?」
「もう一発、いっとく?」
「そうだな」
「「「せーのー!!!」」」
三人は頷くと、物言わぬ絡繰りに向かって
各々武器を振り下ろした
地が割れんばかりの轟音と共に土埃が舞う
「なっ!?」
「えぇ!?」
「うそ!?」
土埃が舞う中、三人の声が響いた
武将たちは武器を握りしめ
土埃に目を凝らすと
「くはっ!」
「ぐっ!」
「かは!」
土埃の中から三人が吹っ飛ばされ
壁に叩きつけられた
命に別状はないようだが
意識を刈り取られて
しまっているようだった
それに伴い、武将たちが次々と
挑むも、僅かな傷を着けるだけで
停止に至るまでのダメージを
与えるまでには至らない
一人、また一人と武将が倒れていく
状況は絶望的だった
そんな中、華琳は見ていた
皆が敵に集中し、交戦しながらも
一人、また一人と倒れて行く中
一人だけ空を見つめていた
「華琳様!!!」
その視線を遮るように
赤い光を瞳を宿した人形が立ちふさがる
激しい交戦だったのだろう
愛する人を真似て作られた人形は見る陰もなく、顔半分は下地の鋼が出ていた
髑髏が剥き出し、見る人に恐れを与える
しかし、華琳は人形を見ることもせず
空を見上げ続けた
「華琳様!お逃げください!」
腕や足を押さえた武官たちが
地に伏ながらも必死に叫ぶ
それを嘲笑うかのように人形が
ゆっくりと手を振り上げていった
「華琳様――――!」
しかし、華琳は家臣の声も
絡繰りの動きにも反応せず
ただ上を見つめ微笑んでいた
やがて頂点に上げられた絡繰りの腕が
止まり、一気に振り下ろされる
「おかえり…なさい…」
その瞬間、皆は確かに聞いた
華琳の優しく、それでいて嬉しさを
隠しきれないほどに震えた声を
『ただいま、華琳』
瞬間、会場を包み込むほどの
爆音と共に土煙が辺りに広がる
「っ!華琳様――――!」
皆、覚悟した。近くに居るだけで
この衝撃だ。まともに受ければ
間違いなく、この世にはいられないだろう
あの時、華琳は逃げる様子がなかった
それだけで分かる。この土煙が晴れれば
広がっている光景は絶望的なものだろう
「華琳…様…華琳様…」
皆、ぼろぼろと涙を流しながら
土煙の先を見つめる
すると突然、土煙を引き裂いて
何かかが飛び出して来たかと思うと
自分達の遥か後方で激突したような音が
会場全体に響き渡る
皆、驚き音がした方へ振り返る
そこには、壁に叩きつけられた絡繰りの姿があった
「な!?何が!」
華琳が立っていた場所を再び見ると
土煙から、華琳の姿が出てくる
「ご無事!だったんですね!」
「えぇ、この通り。怪我ひとつないわ
彼のお陰でね」
「彼?」
華琳が後ろを指差すと
土煙から黒い甲冑の騎士が
漆黒のマントを揺らし現れた
「「っ!」」
皆はその風貌に戸惑う
「さてと、まだ、敵は動けるみたいよ?
どうするの?」
『……』
騎士は頷くと猛然と走り始める
「オオオォォォ!!!」
「「!?」」
対する絡繰りも叫び声を上げ、走り始めた
会場の中央で絡繰りが黒騎士に殴りかかる
黒騎士は軽く流すと絡繰りの頭を掴み
壁や屋根を伝い、高く飛び上がる
そして、会場の中央に向かって
掴んだ頭を叩きつけた
"ドオオォォン!"
「「………」」
皆はただ茫然とその光景を見つめていた
回収されていく停止した絡繰りを眺めていると
不意にマントを引っ張る感触がした
「ねぇ…」
『………』
振り返ると華琳がマントを
掴んで立っていた
「あなた…北郷一刀よね?」
『あぁ…間違いないよ』
俺は静かに頷く
「…そう。よかったら
顔を見せてくれないかしら?」
『…それは出来ないかな』
「なぜ?」
「あそこでまだ、コソコソと
見ている連中がいるからな」
庭の影で、フードを被った明らかに怪しい連中が、こちらの様子を窺っている
「アイツら。あの時のヤツの仲間ね?」
『え?』
「何を驚いているの?貴方が私を
天の国に呼んだときの話よ?」
『え?だってあれは俺の夢で幻想や幻を
形にした姿なんじゃ…』
「私もこちらに戻って仙術について
調べてみたの。人は夢の奥深くで
繋がっているんですって
丁度、一刀が術を使った時に
私も眠っていた為に偶然にも
私の魂が一刀の世界に行けたみたいよ」
『へぇ。じゃあ』
「えぇ、そうよ。あの世界で
あなたに丸裸にされたのは
ここにいる"私自身"よ」
『すみませんでした!』
「まぁ、過ぎたことだし、もういいわよ
それに一度、肌を合わせた仲だし…
今更よ……」
『でも、さらに綺麗になってた』
「黙りなさい、バカ///」
"ぽか"と胸を叩く
『ははは…ごめんな
でも、今はもっと綺麗になった』
「だ、黙りなさいってば///」
"ぽかぽか"
「はぁ…今のでよく分かったわ
貴方、本当に一刀なのね
昔のまま、本当に変わってないわ…」
『華琳の側に居るために色んなことして
結果、こんな風になったけど
俺はあの頃ままだよ。覇道を共に
歩むことを誓った御使いのままさ』
「あら。大陸を平定した今
私の覇道は終わったのだけれど?」
『私を待たせた仕返しよ』と
華琳は悪戯っぽく微笑んだ
『それじゃあ、新たな誓いを立てよう』
華琳の手を取ると片膝を着く
『華琳、君を愛してる
順境にあっても逆境にあっても
病気のときも健康のときも
生涯、愛と忠実を尽くすことを誓う』
「(………………ボン!)」
華琳は真っ赤になり
ふらふらとよろめく
『か、華琳!?』
慌てて、卒倒しそうな華琳を抱き留める
「だ、大丈夫よ…はぁ…ふぅ…」
抱き留めた腕の中で
華琳はぶんぶん首を振りながら
真っ赤になった顔を冷ますように
自身の手でパタパタと仰いた
『返事を聞いていいかな?』
「っ~~~!……はぁ、分かったわよ
順境にあっても逆境にあっても
病気のときも健康のときも、生涯
愛と忠実を尽くすことを誓うわ!」
真っ赤になった華琳は、どう!?と
目尻に涙を溜めて、きっ!っと睨む
『ありがとう、華琳』
「ふ、ふん!次、勝手に居なくなったり
したら承知しないわよ!一刀!」
『あぁ、居なくなったりしない
ずっと側に居るよ。俺の気持ちと
華琳の気持ちと、コレに誓う』
懐から、ある物を取り出し
華琳の左手の薬指に填めた
「……?この指輪は?」
『俺の世界での婚約の証
二人を繋ぐ、証だよ』
「婚約の指輪……一刀の指輪は?」
『あるけど?』
「貸しなさい」
首から下げた指輪を華琳に手渡す
「ほら、貴方も手を出しなさい」
『え?あぁ、うん』
左手の手甲を外し、華琳に差し出す
「ん……これで、よし!」
俺の手を撫でながら満足げに微笑んだ
「これで、貴方は本当の意味で私の物よ
いいわね?私の知らないところで
浮気なんかしたら…分かってるわね?」
『わ、分かってるよ!大丈夫!
絶対しないから!』
「ふふ…それでいいわ。でも、そうね
私の認めた相手ならいいわよ?
相手も望み、合意の上ならね
相手の気持ちに応えられないような
男なんて、私も願い下げだし
やるからには、この大陸全ての女性を
手にしてみせなさい!」
『大陸全部って…流石に無理というか
怖いというか…やけに華琳は余裕だな
本音は何だ?』
「一刀の物は、同時に私の物だもの
一刀を餌に大陸全部の女の子を
私の閨に呼ぶためよ」
『へぇー…』
「な、何よ…!?」
『いや、だってなぁ…』
「その代わり、私は貴方の物
なんだからいいでしょ?」
指輪を付けた左手を見せる
『…まぁ、いいのか?』
俺は彼女の薬指に填めたれた婚約指輪を
見つめると、小さく苦笑した




