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今日の華琳さん家  作者: 黒崎黒子
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与えられた救いと親孝行 ~『悪』は世を救う~

懐かしい夢を観た気がする

私は今まで寝ていたようだ


「あはは…泣いちゃってるよ…

 やだなぁ…もう…」


私は涙を拭うと、しばらく目頭を押さえた


「ぐす……ふうぅぅ…よぉし!」


気合いを入れて起き上がろうとするが…


「っ!?いったーーー!!!」


私の全身を激しい痛みが襲った

思わぬ痛みに驚愕する

これは知ってる


「はぁ!はぁ!筋肉痛だ…でも、何で」


理由が分からない…

というか、何で寝てたのかすら

覚えていない


分かることは…今、大変に

喉が渇いていることくらい


「それはですね!周作さん!」

「お前が大変な病気にかかったからだ」

「ひぁあああ!!!?」


あたしが寝ていた場所の両側から

知らないの男たちが現れる

私は混乱するしかないわけで

逃げようにも身体は思うように

動かないし


「おやおや、心外ですねー恩人に

 向かって叫びをあげるとは」

「おい、于吉。やめないか

 意識がなかったんだ。記憶も

 混乱しているに決まっている」


「だだだだ、誰でおじゃりますか!」


私が誰ですかね!?


「おお!左慈!新しいジャンルですよ!

 麻呂です!マロ!Japan色が一気に

 高まりますね!」

「混乱にも程があるだろ

 千葉、検査だ。これは何本だ?」


男は指を立てて私に見せる


「はい!スー!」


元気に手を挙げ答える

腕イタ―――ッ!


「ぶっ!日中コラボ!」


眼鏡が笑う。コイツ…眼鏡、割ってやる


「こら、于吉!邪魔するな

 では、これは?」


「はい!ワーン!」


反対の手なら!やっぱりイタ―――ッ!


「ぶっ!犬!」


眼鏡がまた笑う

よし分かった!絶対眼鏡、割ってやる!


「大丈夫そうだな。頭以外は」


おうおう!言うな!

ダーリンには届かないが

意外とイケメンの兄さん

その額に描いてある柄を『肉』に変えるぞ訂正しな!


「頭、なに?」


ニコニコと微笑む、これは警告


「いや!頭正常!寧ろ、素晴らしい!」


あらやだ、好青年♪合格だわ!

まぁ、一刀には及ばないけど、ね


「そうだ!一刀は?

 というか、あなた達誰!?

 喉渇いた!眼鏡、絶対に割ったるぞ!」


私は優しく疑問と希望を伝える


「眼鏡!?」


眼鏡は半歩下がる

ふ、甘いな…そこはまだまだ間合いだぜ

本当に甘いよ、眼鏡

和菓子に砂糖かけるくらい甘い


「って一緒やんか!あはは!」


私は自らの額をペチペチ叩いた


ヤバ!何か楽しい~!




「おい、そろそろ輸液を交換しなくて

 いい…のか…?」


俺は出来上がった輸液を持って

桜の部屋に来た


左慈たちが等間隔で何度も取りに来るから

輸液パックを交換にくる時間も

分かるようになった

しかし、今回は一向に現れる気配がない

故にこうして様子見がてら持ってきたのだ


「眼鏡…眼鏡を割る…!?

 命より大切な眼鏡を割るって

 言うんですか!?外道!」


先ず、目に入ったのは

眼鏡を握りしめて部屋の隅で

震えている于吉


というか、眼鏡、どんだけ重要なんだよ

命より大切って


「くっ…何を間違った!?

 輸液の配合か?いや、頭だ!

 頭の話に触れたからだ!

 俺の『紋』が!『監視者の紋章』が!

 ていうか"肉"ってなんだ!

 くそ、なぜ落ちない!油性ペン!?

 バカな!何でこの時代に!」


次に鏡の前でぶつぶつと

呟いている左慈を発見

何やら額の『紋』に非常事態が

発生したらしい


油性ペン?

あぁ、俺が空に話して

作って貰ったヤツだな…

飛び火の匂いがする

言わぬが吉!


最後にベッドの上で

ニコニコして、それらを見ている桜


どうもあれが混沌の中心のようだ


「ふふ~ん。眼鏡!残念だが、そこも

 間合いなのさ!変な笑いは命取り

 お父様に習わなかったかな?」


『父』の俺すら、そんなこと知らないよ


「どう?肉の気持ちが分かった?

 牛丼食べたくなったでしょ?

 牛丼を作れるのは一刀だけよ!

 でも、あげない!一刀は私の

 モノなんだから!あははは!」


肉の気持ちが分かったら

牛丼は食べれないと思うんだ

あと、俺はいつから、お前のモノに

なったんだ?俺は華琳のモノだぞ

まぁ、お前は俺のモノだけどな!


「とりあえず、中心を止めるか…」


俺は桜に歩みより頭を撫でた


「そこらへんにしとけ、桜」


「はふ~♪こ、この感触は!

 この絶妙な位置、この絶妙な温かさ

 そして、大きさ…

 あ、あなたは隣の本田さん!」


「惜しい!本田さんて誰だよ!

 ていうか、この家、隣ないじゃん!」


「ナイス・ツッコミだね~♪

 マイダーリン☆」


桜は『惚れ直したぞ~♪』と

俺の胸にのの字を描いた


「そりゃ、どうも。俺も愛してるよ」


気持ちがこもってないのは

自分でも承知している

こんな状況で愛を語れるほど

俺は図太くないんでな


「で?二人とも、どうしたんだ?これは」


二人は引きつった笑みを浮かべ

俺を見つめた


「ふふふ~一刀」


抱きつく桜の頭を撫でながら

俺は二人に事の次第を聞いた


「どうやら、まだ意識がはっきりして

 いないようですね」


于吉は眼鏡を胸ポケットにしまうと

スペアなのか、赤ブチの眼鏡を

かけて近づいてくる

一歩一歩じっくりと

そのまま、桜の死角である

俺の後ろに隠れた


「混乱しているんだろう。もう少し

 様子を見る必要がある」


左慈は未だに鏡の前で悪戦苦闘している


「そういえば、喉が渇いているようですね

 一刀くん、スポーツドリンクは

 出来ていますか?」


「あぁ、出来てるよ。持ってこようか」


「あぁ!いいです!私が行きます!

 一刀くんがいなくなるとまた

 暴れ兼ねませんから。それでは」


于吉は桜から決して目を離すことはせず

ゆっくりと後退り、最後まで背中を

見せることなく、部屋を出て行った


その間、ずっと桜は

于吉を無表情で見つめていた


于吉、お前の判断は正しい

背後を見せていたら確実にヤラれていたぞ


「桜。すぐに飲み物がくるからな」


「うん♪」


頭を撫でると桜は気持ち良さそうに

目を細めた。猫みたいだな、本当


「虎も北郷の手にかかれば、猫に等しい

 やはり、お前は凄いな。父であること

 誇らしく思うぞ」


左慈が微笑みながら近づいてくる

額が赤いのは見なかったことにしよう


「すまないな、こいつが迷惑をかけた

 桜、この人はお医者さんだよ

 君の命の恩人だ。お礼と謝罪を」


悪戯をしただろ?と桜を真っ直ぐ見つめる


「あ、あぅ…あ、あの!

 危ないところを助けてくれて

 ありがとうございました

 その、変なことしちゃって

 本当にごめんなさい」


桜はモジモジしながらも頭を下げる


「あぁ、大丈夫だ。気にするな

 元はといえば、俺たちが悪かったんだ

 患者が回復する姿は

 何回見ても嬉しいものでな

 つい、はしゃいでしまう」


回復、おめでとうと左慈は

笑顔で頷いた


「わぁ、一刀!なんか、一刀と同じ

 雰囲気があるよ!この人!」


と少し興奮気味に左慈を指差す


「「そうか?……ぷっ」」


「あはは!ほら一緒!」


桜の言葉に俺たちは反応するも

何となしにその声が重なり

つい可笑しくなって笑ってしまった


「おや!楽しそうですね!」


于吉がちょうど部屋に入ってくる

手には飲み物があった

それを于吉は桜に手渡す


「わぁ!ありがとう!」


桜の回復も、もう間近だ

「ところで周作さん

 体調が崩れだしたのは

 いつからですか?」


于吉が椅子に座り、桜に問診する


順序が逆に感じると思うが

原因を突き止めることで

再発、蔓延を防ぐことに

繋がるからだそうだ


「んと、二日前の昼の稽古あたりかな…」


桜が体調を崩したのは

二日前の昼食の後から

そして昨日の朝、桜は稽古を休み

昼から身体動かなくなる

そこから于吉と左慈の治療が始まった


「潜伏期間を考えて

 原因があるとすれば二日前の朝

 三日前の夜ですね。その間で

 周作さんだけが口にしたものは

 ありますか?」


そうか。御飯だとみんなが

口にしているから、みんなが

コレラウイルスに感染している

ことになる。でも、誰も発症は

していないのなら…

必然的にそういうことになる


桜が何かに触って物を口にした可能性は

極めて低い。俺が来る前から

桜は、うがい手洗いを徹底していたのだ


『人に指導する者が体調管理を

 怠るなんて話にならないよ~

 私の目が黒い内は一刀にも

 しっかりやってもらうから♪』


というくらいだしな


「不覚ね。私とも在ろうものが

 これじゃ、あの子に顔向けできないわ」


桜がため息を吐き、何事か呟く


「あの子?」


「んー?なに?一刀

 あ!私が食べた物だっけ

 えっと…んと……あっ」


桜が頬に指を当て、しばらく考え

何かに思い当たったようだ


「桜?」


冷や汗を流す桜を覗き込む


「っ!?え?あ!何でもないよ!

 知らない人から物を貰って

 食べたりしてないもん!」


「千葉…お前…食べたのか…」


「食べたみたいですね…」


「桜…何をしてるんだよ…」


三人の呆れた視線が桜に注がれる


「な!食べてないよー!

 数が微妙だったから全部食べちゃえ

 何て思ってないもん!」


「千葉…」


「しかも…全部ですか…」


「桜…お前…」


三人は呆れを通り越して感心すら覚える


「あっ!ああぁ…あぅー…」


桜は真っ赤になって縮こまった


「どうやら、原因はそれですね

 その、物とは?」


「食べてないもん…」


ぷくーっと頬を膨らませ拗ねる

意固地になってるな


「桜…俺、嘘つく子はキライだ」


俺は悲しみを全面に出して呟いた


「食べました!なんか"どーなつ"とか

 いうヤツ。間に一刀が前に作った

 "くりーむ"が入ってたよ!」


美味しかったなーとよだれが垂れる


こいつはもう…はぁ…


「これは気になることを

 聞きましたね、左慈」


于吉は左慈を見て目を細める


「ふむ、"ドーナッツ"か?

 確かにこの時代にはない品物だな

 北郷。確か、西洋菓子の店を

 出していたな。そこにドーナッツは

 あるのか?」


「執事喫茶"羽十羅"のことか?

 あぁ、あるけど、クリームは

 サンドしてないな。クリームを

 単品で売り出したけど

 やっぱり、クリームだけだとな…」


ドーナッツだけの売り上げは上々

しかしクリームは使い道がまだ

浸透していないのか

まだ、売れていない


空のメイド喫茶には

格安で下卸ししているが


今度、実演販売してみるか?


「ふむふむ…貂蝉、お願いします」


顎に手を当てた于吉は

突然、襖の向こうに声をかける

やっぱりヤツが居たか


「えぇ♪行ってくるわ」


と声がしたが、すぐに気配は消えた


「ほぅ、北郷。気付いていたのか」


俺の様子に気付いたのだろう

左慈は感心したように呟く


「当たり前だ。あんな、桃色オーラは

 ウチには1人しかいない

 あと、お疲れさま、蓮、空

 そんな所にいないで入って来こいよ」


名前を呼ばれ彼女たちが入ってくる


「あら?バレちゃった」


「修行の成果が出てますね♪一刀様」


「お疲れさま、二人共

 布団を敷いてある。休むといいよ」


「ありがとう~♪」


「すみません、少し休みます」


二人は欠伸を噛み締めながら

布団に潜り込んでいく


「北郷…お前…あの二人にも

 気付いていたのか」


左慈は驚愕したように俺を見つめる


「え?あぁ…于吉が声をかけた時にな

 びっくりしたのか、一瞬だけ

 二人が動いたんだよ」


「その一瞬を…いや、本当に

 修行は効果があったようだ

 正直、あの二人の気配には

 俺は気付けなかったからな」


納得したのか椅子に背中を

預けて、微笑みかけてきた


多分、それは違うよ…左慈

君は一晩中、桜の治療に当たって

くれたんだ。疲労が感覚を

鈍らせているだけだろう


「ふふ…同じ条件なんですがね

 どこまで気付いているのやら」


于吉は苦笑して左慈に目を向ける

左慈も苦笑して肩を竦めた


「では、周作さん。貰った相手の

 特徴は分かりますか?」


質問はまだ終わっていなかったようだ

犯人は誰なのか、確かに気になるな


「特徴か…声は女の人だったよ?」


「声?顔は見てないんですか?」


「あー、顔を隠してたから」


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