明かされる歴史
「統一して三年という短い国では
あったけど、大陸統一を果たした
魏を治めた曹操の男でしょう?」
大陸を統一して三年……?
「十分に天下を取ってるわ♪
国が滅び命尽きるまで
相手は居なかったと古書にも残ってるし
本当に愛されいたのね、一刀は☆」
国が滅び…命尽きるまで…?
いや、確かに今でも魏があるなんて
思ってはいない
栄え続けた国なんてない
歴史がそれを物語っている
盛者必衰、諸行無常って言葉に間違いなく
魏を始めとする三国もそうなることは
避けられないと思っていたが…
三年というのはあまりにも早すぎる
「なぁ…蓮…"魏"は何で滅んだんだ?
まさか"天下三分"が…」
「違うわよ、天下三分は守られていたわ
互いが互いを監視し暴政を防いでいたし
それ以前に曹操も劉備も孫策も
民を一番に思う人物達だったから
そんなことも起こるはずがなかった」
「じゃあ何で…」
「三国には敵がいたのよ…
その余りに強大な力に三国は飲み込まれ
混乱状態に陥り連携も浅いままに
各国が滅ぼされていったのよ
後に曹操の子だという者が現れて
大陸を統一したのよ」
曹操には子がいないはずなのにおかしな話
でしょ?と蓮は眉間に皺を寄せた
魏が消え、蜀が消え、呉が消えた?
敵?曹操の子?
これは俺の知ってる歴史に近い話なのか?
「後の話では、三国の混乱も
大人しいかった反乱因子を
焚き付けたのも
後の曹操の後継者も全て
一人の人物が計画した
もののようなのです」
空が補足をしてくれるが
話は余計に複雑になったようだ
「一人?誰なんだ?そいつは」
「残念ながら、これは口伝ですので
はっきりとしたことは…」
すみません、と空は謝る
俺は彼女を手で制して考え込んだ
俺が消えて三年目に何かが起きた
瞬く間にそれは三国を混乱に陥れ
均衡を破る。瓦解したところを
順に潰していったんだろう
潰す順番は恐らく関係ない
後に書に残す際に
並び変えればいいんだから
重要なのは三国が滅んだ事実と
後継者の存在だ
誰かが歴史から外れた世界を
強制的に正史に戻したのか
はは…まぁ、こうして武器が
遺っていたり
曹操の子に矛盾があったり
犯人は爪が甘いヤツだろうことは
簡単に推測できるけどな
まぁ…どんなヤツだろうと許さないけどな…
私たちは彼の表情の変化を見た
いつも優しい彼が今…
拳を握りしめ、歯を食いしばり
鬼のような表情で地を見つめていた
覇王色に若干ながら紅蓮と漆黒が
混ざり彼を包んでいる
"憤怒"という言葉が相応しいだろう
私たちにできるのは…そう
「一刀…」
そっと握りしめた拳に手に置く
「大丈夫だよ…古書には御使いの名は
無かったんだよ?一刀は居なかった…
三国が滅んだその時に
でも、帰れば変えられるかも
しれないんだよ。ううん…きっと
変えられるよ!帰ってみんなを救うの!」
私たちにできるのは一刀を支えて
背中を押してあげることくらい
一刀は顔を上げ私たちを見つめる
キョトンとしたあと
満面の笑顔になって私たちをまとめて
抱きしめてきた
「わわわ!」
「あはは!」
「きゃ!」
やっぱり一刀は男の子だよ
こんなにも胸板は広く、抱きしめる腕は
力強い。きっと…うん…一刀なら
皆を救えるよ。だから…私たちも覚悟を
決めなくちゃいけないね…
力を…力を一刀につけさせないと
精神、肉体、魂にいたるまで
何者にも…そう…天命すらも
書き換えるほどの力を
私たちは一刀の温もりを感じながら
互いに頷き合った




