北郷一刀の恋人たち
庭に出る四人
千葉家一行は『棺』を前に皆固まっていた
一人、空はウキウキ♪と説明を始める
本人曰わく、出来映えは人生の中でも
最高傑作だとか
あの虎徹が太鼓判を押すのだ
恐ろしく凄いのだろう
いや、既に入れ物の時点で凄いのだが
「ちなみに聞いてもいいかしら?
この入れ物だけど…」
蓮が空に問いかける
だよね…気に成るよね…
武器をしまう箱が『棺』はおかしいよね…
「何か………格好いいわね~☆
何か元はあるの?」
目をキラキラさせて蓮は『棺』を指差す
え…?蓮…何を言ってるんだ
『棺』だぞ?…日本でいうところの…
『棺桶』………ってああそうですよ!
この時代の人が外国の棺桶なんて
知ってるわけ無いですよね!
「一刀様の牙門旗の話しを聞いて…」
あぁ、話したね…【十】だろ?
全て、華琳が俺の名前を間違えた
ことから始まったんだ
華琳が家門旗を持って部屋に入ってきた
『貴方も一軍を率いる
身なのだから、牙門旗が必要よ
これは私からの贈り物』
華琳が机に牙門旗を広げる
深い紫の旗に金糸や銀糸での豪華な刺繍
そして中央には【十】の文字
『どう?最高の出来でしょう!』
『なぁ、華琳…何で"十"なんだ?』
『はぁ…何を言ってるの?かずと…
あなたの名前でしょう?』
『……華琳…俺の名前を書いてみて』
はいっと筆を渡す
『何よ?こうでしょ?』
見るとそこには『北郷一十』の文字
『華琳……俺たちってさ
もう長い付き合いだよな……なぁ?』
『か、かずと…?…あ、あれ…?』
華琳は作り直しをしようとしたが
家門旗の値段を聞いて俺は首を横に振る
タダではない。民のお金なのだ
華琳はそのあと何度も『北郷一刀』を
練習したとか…可愛いらしいよ、全く
「それで箱に『十』を書いたのですが
何か…違うと思い、考え直してしたら
一刀様の服に付いている紋を
思い出したのです♪」
紋?あぁ、襟元の【†】ね
聖フランチェスカ学園の制服だ
言わずとも分かるだろう?
「それで…似ていたので」
「付け加えたと…」
「一刀様は御使いさまですから」
「豪華絢爛、装飾過多になったと…」
「え、えーっと…か、一刀様…?」
気がつけば目の据わった一刀が
空を見つめていた
「作り直し!」
一刀は王の覇気を
無駄使いして虎徹を脅す
「か、かか、一刀様!?」
空は冷や汗をダラダラと流して
オロオロしている
「ははは…これが何か教えてあげよう…
これは『棺』…西洋の『棺桶』だよ
……虎徹くん」
「か、棺桶…」
衝撃の事実に、さらに冷や汗が増した
「うわ…縁起悪いね…」
桜は引きつった笑いを浮かべる
「ま、まぁ…見た目を変えれば大丈夫よ」
蓮に至っては目を合わせようとすらしない
「す、すぐに!お作り直しを!」
皆の目の前で解体…改造…
組み立て…塗装を行った…
「ふぅ…出来ました♪」
空は一仕事終えた爽やかな笑顔で
一刀たちに振り返り、額の汗を拭った
その完成した品を見て皆、驚愕する
一刀は一歩踏み出し…
笑顔で完成品の素晴らしさを語る
「さぁ、見よ!
素材は贅沢に大理石を99.9%使用!
色は漆黒で高級感溢れますね!
この計算された長方形!歪みも無く!
美しさと気品を漂わせます!
さぁ、正面を御覧ください!
『北郷家』の文字を彫り込み
豪華に金箔で彩色を施しました!
この世に一点のみ!後世まで
受け継がれること間違いないでしょう!
……ってバカ!!」
"すぱーーん!!"
「いったぁ!?」
ハリセンでおもいっきり空の頭を叩く!
「思いっきり『墓』じゃないか!
しかも『北郷家』ってなんだ!?
君は俺に怨みでもあるのか!?」
「ふぇ!?『墓』?……あぁ…てへ☆」
「てへ☆…じゃねぇー!」
"すぱーーん!!!"
「はぅぁ~~!!」
度重なる攻撃に目を回す、空!
「あぁ…二発も!私専用ハリセンが!」
"あわわ"と涙目で叫ぶ、蓮!
「大丈夫!これはお客様専用ハリセン!」
ビシッと親指を立てる、一刀!
「お客様専用!?何作ってるの一刀!?」
恐ろしき事実を知り驚愕する、桜!
ギャー!ギャー!騒ぐ四人を
武器の入った『墓』が悲しげに
見つめていた…
「出来ましたよ♪一刀様!」
あれから何回かの変更で形を変えた
パンドラの箱は見事に大変身
「うん、これなら!」
「格好いいじゃない!」
「さっすが!空ちゃん!」
三人は空の頑張りを褒め称える
皆の前には
一刀の目線の高さの【†】の形をした
(空が†を気に入ったため)
背に背負うことの出来るケース
(これは俺の要望)
純白のボディには金の装飾
(一刀はやっぱり純白!と蓮)
中央には銀で出来た髑髏が付けられていた
(髑髏は外せないよ!と意外にも桜)
皆の意見を取り入れた
†型武器ケースが完成した
ははは…華琳が好きそうだ…
ここまでで大変に時間を喰ってしまった
だが、ここからが本番なのだ
気になるのはその中身…愛刀たちの存在
空の話しでは九つあるらしいが…
「なぁ…空。一つ気になったんだが…」
†ケースを見つめてながら問いかける
「はい?何でしょう…?」
空が見上げてくる
あぁ…顔が汚れてる…
ポケットからハンカチを取り出して
空の頬に付いた油を拭う
「中には九つの武器が入って
いるんだよな?にしては…」
小さくない?と問いかける
「打ち直して、殆ど原形が変わった物
用途が変わった物ばかりですから」
例えば…と空はケースを指差した




