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今日の華琳さん家  作者: 黒崎黒子
14/121

メイドさんの正体とは!?

金色のストレートヘアーを揺らし

スタスタと店の奥へ消えていく


「今のが…刀匠…?」


「えぇ、この店の店主でもあるわね」


あぁ…あの買い物袋の中身

…幻覚じゃあなかったんだ


うん、おもいっきり食材の買い出しだね


しばらくすると、店主は荷物を置いて戻って来た


一刀の前にやってきた少女は、フリルのミニスカートをチョンと摘み、小さく礼をする


「ようこそ、お越しくださいました

 詳しい話は奥で致しますわ

 さぁ、こちらへ」


メイド服を身に纏った刀匠が

手で奥へどうぞと促す


「さぁ、こちらへ」


3人が通されたのは応接間

意外と普通の部屋だ


応接間の中に入ると

メイド刀匠はソファーに座るように促した


「お久しぶりです。桜さん、蓮さん」


刀の調子は如何ですか?と二人の刀を

受け取り、刀を鑑定する


「蓮さん…刀は手裏剣ではないのですから

 投げるなどなさいませぬよう…

 柄のところに僅かですが歪みが出てます

 から調整いたしますね

 あと、物干し竿にされたと嘆いています

 この使い方も誤りですよ…桜さん」


「「ごめんなさい…」」


二人はシュンとなり謝る


「桜さんの刀ですが…乱戦でもあった

 のですか?刀身が今にも柄から抜けそう

 なくらい、振られたようですが」


「あれね」

「あれだな」


二人は一人を見る


多分、蓮が来た日のことだろう

あの乱心振りは凄かったからな


「ご、ごめんなさい~」


桜はさらに小さくなる


「それでは2本ともお預かり致します」


刀を入ってきたメイドさんが持って行く


「それでは…」


とメイド刀匠は一刀に目を向ける


「ご挨拶が遅れましたね、私はこの茶屋と

 裏の鍛冶屋を営んでおります

 姓を長曽禰、名を虎徹

 今は虎徹とだけ名乗っていますわ♪」


小首を可愛らしく傾げて笑顔を見せる

眉で綺麗に切り揃えられた前髪が揺れた


「虎徹さん…えっ!?」


一刀は思わず立ち上がる


信じられない…この…少女が…虎徹?


―虎徹―


現代に名を残すほどに有名な刀匠で

彼の刀は国宝に指定されているほど


虎徹の作刀は地鉄が緻密で明るく冴え

鑑賞面にも優れ、切れ味鋭いと

名刀として名高いが


実は、虎徹は元来、甲冑師である

籠手、兜、鍔などに才を発揮する

名工であった


50歳を超えてから刀工に転じ

老いるほどに輝きを増していった

異色の刀工である


「如何なさいましたか…?」


小首を傾げて一刀を心配する少女


「あ、いや、大丈夫です

 俺は北郷一刀…一刀と呼んでください」


これから宜しくお願いしますと頭を下げる


「一刀さん…良いお名前ですね」


宜しくお願いします♪と

少女も頭を下げてくれた


少女の顔を一刀はまじまじと見つめる


「!?えっ…と…一刀さん…?」


小首を傾げて頬に手を当てる少女


その肌は潤いとハリがあり

唇は、ぷるぷるとキスしたくなるほど

紅色の目はおっとりとして…うるうると

見つめ返してくる

全体的に劉備さんのような

柔らかいイメージ

年も劉備さんと同じくらいか


「…虎徹さん…」


もう一度…名を呼んでみる


「…は、はい…」


少女は目をうるうるさせて

もじもじとその声に応える


「可愛いな…」


そんな様子に一刀はポソリと呟いてしまう


「「「!?」」」


突然立ち上がた一刀に面食らっていた

二人も、一刀の言葉に反応してしまう


「か~ず~と~?」

「あはは!手が早いわね、一刀!

 でも、誰か忘れてない?」


「そんな!可愛いだなんて…///

 私…初めて言われました~///」


「……はっ!いや、違っ!

 違わないけど!けど、違うんだ!」


3人の様子に自分が迂闊なことを言った

ことを悟った一刀は弁解をするが

聞き入れてもらえるハズもなく…


結局、2人にど突かれました…

いや…本当に…ごめんなさい


そんな一刀を虎徹は見つめていた


「………ぽっ///」



それから何とか事態を落ち着かせ

虎徹と刀の話に移る


「一刀様に刀を…ですか…?」


虎徹は一刀を見る、目が合うと

"ぽっ"と頬を染める


「うん♪お願いできるかな?」


「が!?いや…虎徹さん、何でもないよ」


桜は影で一刀の足を踏みつける

恐ろしい師範だ…


「そういうことなら、お任せください

 では…一刀様…こちらへ」


一刀の手を取り、ついて来るように促す


「へ?あぁ、分かった」


二人もついて行こうとしたが

虎徹は手で制して、すぐに済みますから

と告げて一刀を連れて行ってしまった


部屋に残された桜と蓮の二人


「ねぇ、蓮ちゃん…刀作るとき何した?」

桜は二人が出て行った扉を見つめ、問う


「え?普通に刀の要望を伝えて

 終わりでしょ?」


アンタも一緒だったでしょ?と蓮は

桜を見る


「だよね…ところで蓮ちゃん…

 二人が入っていった、この扉…

 奥に何の部屋があるか分かる?」


「え?虎徹の部屋でしょ?何度も

 一緒に泊まりに来てるんだから

 アンタも分かるで……ん?

 あ、やば!」


「一刀が危ないよ!」


二人は部屋に飛び込んだ




明るい廊下を抜けた先の部屋

そこに通された俺は困惑していた


「あれ?ここ、工房じゃないのか…?」


刀の構成を二人で考えるとばかり

思っていた一刀。それに伴い案内先も当然

工房だと思っていた


しかし、目前には可愛い物で溢れた

まさに女の子の部屋…


「私の…部屋…です…一刀様…」


"カチン"


扉の鍵を後ろ手に閉めて

虎徹が一刀の前にやってくる


「あ、そうなんだ。あれー虎徹さん?

 何で鍵なんかかけるの?」


「一刀様…」


虎徹が胸に飛び込んでくる

うるうると目を潤ませて

柔らかそうな唇を近づけてくる


「"空"とお呼びください…」


「それ…真名だろ?なんで」


「私は刀の声を聞くことができます

 どのように使われ…どのように感じ…

 どのように思ったか…全てを聞いて

 刀を労う意味で直していくのです」


あぁ、だからさっき…


「刀が教えてくれました

 今日、帰ってきた刀たちは貴方様にも

 使われたのですね。貴方様と過ごした

 日々をとても楽しげに話していました

 私の刀たちを大切にしてくださった

 貴方様なら私はこの身を委ねても

 よいと思ったのです

 お願いです…一刀様…空と…」


「…ありがとう、空…」


真っ直ぐ空を見つめ礼をいう


「それでは…一刀様…」


"しゅる"


空はメイド服の胸元に手を持って行き

大きなリボンが解くとブラウスのボタンを外し始めた


「そ、空!?」


「何を慌てていらっしゃいますの?

 この身を受け入れてくださるのでしょ?

 一刀様…抱いて…ください…」


もう目の前には一糸纏わぬ空が


「…空…」


喉が乾く…胸が騒がしい…抱きたい…

だけど…


"バサッ!"


空の布団のシーツを剥ぎ取ると

空に頭から被せた


「一刀様…これは…どういう…」


「早く服を着てくれ」


「っ……はい…」


空は一刀の強い口調に素直に

従うしかなかった


"しゅる、パチ、パチ、しゅる、きゅ"


後で服を着付ける音を聞きながら

一刀は扉に近づけて

鍵を開ける


"カチン"


「っ!……終わり…ました…」


後で空の震える声が聞こえる

一刀は後を振り返って空に歩み寄り

服の乱れを確認する


よし!


「…理由をお聞かせ…願えますか…」


「ん?気づかない?」


一刀は扉を見る


「え…?」


"バターン!!"


「一刀!無事!?」

「こらー!虎徹!

 私の男に手を出したら許さないわよ!」

「ちょ!蓮!?一刀は私のだよ!?」


扉が開け放たれ2人が飛び込んできた


「何やってんだ…2人とも…」


一刀は頭を抱えてため息を吐く

空は驚きのあまり声を出せないでいた


「あれ?一刀…?」


「見たとおり、無事だよ。

 何で真名の交換で命が危うくなるんだ?

 教えてくれ、周作センセー」


ツンツンとおでこを突く


「あ、あはは!勘違いしちゃたかな~!」


いや~ごめん!ごめん!と頭をかいて

蓮は謝る


「蓮、お前も同罪」


ツンツンとおでこを突くの刑執行


「うー、ごめんってば…」


そんな様子を見ていた

空はふと気付いた……


もしあのまま…行為に及んでいたら

責められるのは部屋に連れ込んだ自分


『私を護るため…いや…ここにいる

 皆の笑顔を護るために…』


二人を叱りながらも笑顔を零す一刀と

叱られながらも安堵を見る2人

それに気付いた自分も笑顔になっていた


「一刀様…ありがとうございます…」


空は小さく呟く


「……ん?何か言った?

 あ、そうだ…刀の話だよ!」


一刀は聞こえないフリをして話題を変える


「ふふ…ええ…刀でしたね…

 工房へ参りましょう、お二人もどうぞ」


空は微笑みながら

3人を促して部屋を出た


「一刀様…本当にお優しい方…」


その呟きを聞き取れたものはいなかった



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