胡蝶の夢
三国志の世界へとタイムスリップして
しまった主人公・北郷一刀。
ワケも分からないまま一刀が
出会ったのは"曹孟徳と名乗る少女"
そう、この三国志は英傑たちが
女の子として存在していたのだった
現代の知識を
己の覇業の助けにしようと、一刀を
保護した曹操。
戦いや仕事、日常を共に過ごす中で
お互いが気づかぬまま惹かれあっていく
二人。
そして、魏の英傑たちもまた一刀に
惹かれいった。
現代の知識を利用して強力な戦力を得た
魏は諸侯を次々と吸収。
残るは魏・呉・蜀の三国となる。
呉との決戦。呉は敗走し、蜀と手を組んだ
いよいよ決戦。
そんな時に事件が起こる。
仲間の窮地を救った一刀は身体の喪失感を感じ倒れてしまう。それが始まり。
その仲間はそこで死ぬはずだった。
一刀が自分の意志で歴史を変えたのだ。
そこで一刀は気づく
『歴史を変えれば、この世界から
自分は消えてしまうだろうことに』
苦悩する一刀。
そんなとき、曹操と仲間の
大陸制覇にかける熱き純粋な想いを聞く
『あぁ、俺はこのために
ここに来たんだ。』
一刀は彼女たちの願いを、想いを
叶えるため。そして、民の笑顔のために
己が身を犠牲にする覚悟を決める
『自分は消えるだろうこと』を隠して
"負けるはずだった決戦"へと
向かおうとするのだった
そんな一刀の様子に気づいた曹操は
一刀を問いただす
そして、真実を知った曹操は
決戦に出ることは止めず
『後悔はない』とただ、そう告げた
一刀はそんな彼女を好きになったことに
気づき、より一層に守りたいと思う
様々な想いを胸に決戦の地『赤壁』へ
一刀は現代の知識を総動員し
『蜀呉の"即興の策"と"火計"』を阻止する
それが決定打となり魏は勝利を勝ち取り
蜀呉は敗走した。二度の大戦で
呉に抵抗する力はもう無く、残るは
蜀との大戦となった。
互いに兵を多く失い、これ以上の
犠牲を出さないために大将の一騎打ちを
曹操は提案、劉備も承諾し、全てをかけた
一騎打ちが始まる。立ち合いは呉の孫策。
互いの大陸制覇にかける想いをぶつけ合い
決着は曹操の勝利で終えるが
曹操は意外なことを申し出るのだった
『天下三分の計』
大陸を三つに分けて統治する。
呉は呉を、蜀は蜀を、そして魏は魏を。
互いが互いを監視することで
暴政を未然に防ぐ。民を思っての策。
北郷一刀が願い、考え抜いた策であった。
魏の曹操は、蜀の劉備、呉の孫策に
そう告げたのだった
三国はこの提案に同意し
真に大陸は平定されたのだった
その晩、蜀では『三国同盟』の宴が
催されていた
三国の将も兵も互いに酒を酌み交わし
互いを讃え、互いを敬い、互いを想う
『いつまでもこの平和が続いて欲しいな』
一刀はそんな三国の笑い声を聞きながら
自然とほころぶ
そんな一刀に曹操は声をかけ酔い醒ましに
と連れ出したのだった
空には満月と満天の星
近くには小川が流れているのか水の音と
虫の声が聞こえる
前を歩く曹操に無言でついて行く一刀。
すでに大陸平定を成した為か身体の喪失感はピークを迎えていた
手を見ると僅かに透けている
『大陸は平定され、これからがあなたの
知識が生きてくる。そう思わない?』
『だよ…なぁ…』
一刀の気配が希薄になったことに
気づいたのか曹操は立ち止まる
『…帰るの?』
『あぁ。そうみたいだ。』
『そう、でも私は後悔していないわ。
私は私の欲しいものを目指し
歩んできたんだもの。
誰に恥じるも、誰に詫びるもないわ。』
『あぁ、それでいい。』
『あなたは後悔しているの?』
『後悔してたら、歴史を変えるような
こと最初からしてないよ。』
『ええ…』
『君に会えて良かった。』
『当然よ。私を誰だと思っているの?』
『誇り高き魏の…いや…大陸の王。』
『それでいいわ。』
『これからは劉備や孫策がいる。
彼女たちと力を合わせて俺の知る
歴史以上の素晴らしい国を
創っていってくれ。』
『ええ…あなたがその場に居なくて
死ぬほど悔しがるような、最高の国に
してみせるわよ。』
『はは…そう言われると
帰りたくなくなるな。』
『帰らなければいいじゃない。』
『でも……もう、終わりみたいだ。』
『どうして?』
『大陸が平定されたことで
俺の役割が終わったから。』
『終わりにしなければいいじゃない。』
『曹操の夢みた願いが叶ったんだ。
それを見ていた俺も終わらないと。』
『だめよ。認めないわ。』
『俺だって、認めたくないよ。』
『だったら…!』
また、気配が希薄に
もう、意識をしないと感じ取れないほど
『でも…やっぱり…無理みたいだ。』
『どうしても逝くの?』
『あぁ。』
『恨んでやるから。』
『はは…怖いな。
でも嬉しいとも思える。』
『っ……逝かないで…』
『さようなら、誇り高き王。』
『一刀…』
『さようなら、寂しがり屋の女の子。』
『一刀…っ』
『愛していたよ、華琳─────』
『一刀…!』
曹操の真の名を呼び
────────────
彼の気配は完全に消えた
『一刀…?』
華琳は振り返るが
そこには彼の姿はない
『……ば…かぁ……ばかぁ…』
『ずっと…側に居るって…
言ったじゃない…』
『本当に…消えちゃ…うなんて…
なん…で…一緒に…
…居てくれないの…?一刀…』
『ぅう…うぁあああぁぁん…!!』