浮気相手(ヒロイン)の攻略ノートが杜撰すぎて、元敏腕秘書は全力で添削することにした
~赤ペン一つで、お花畑令嬢を社交界の華にプロデュースしたら、なぜか王太子妃専属文官にスカウトされました~
前世は敏腕秘書だった伯爵令嬢クラリス。ある日彼女が拾ったのは、自分から婚約者を奪おうとするヒロインの書いた『逆ハーレム攻略ノート』だった。
恐る恐る中身を読み進めると、そこにあるのは計画と呼ぶのも憚られるほど杜撰な内容。あまりの計画性の低さに、前世の血が騒いでしまったクラリスは、匿名で「適切な攻略計画」を赤字で添削し始める。
――狙う相手の好みは? 効率的なスケジュールは? 不敬にならない社交術とは?
そこから始まった、ノート越しの奇妙なマンツーマン指導。
「その待ち伏せは投資対効果が悪すぎます」
「王太子殿下を狙うなら、まずは周囲から仲良くなりなさい」
クラリスの完璧な指導により、無鉄砲なお花畑でしかなかったヒロインは社交界のトップへ駆け上がり、見事に王太子殿下の婚約者の懐にまで入り込んでしまい――?
赤ペン一つで運命を書き換えた、有能すぎる秘書令嬢の痛快逆転ストーリー。
伯爵令嬢クラリス・リトラーには前世の記憶がある。
とはいえ覚えているのは、この世界より遥かに発展した日本という国で秘書として働いていたことくらいだ。
かつての彼女にとって、仕事は生きがいそのものだった。
学生時代から語学や歴史を学び、外交官を目指して努力した日々は、何物にも代えがたく充実していた。結局、外交官になる夢は叶わなかったが、積み上げてきた知識を活かせる秘書の仕事も気に入っていて、会社へ向かう足取りは、毎日期待と喜びに満ち溢れていた。
王国でも指折りの歴史を持つ、リトラー伯爵家の長女となった今のクラリスにとって、そんな前世の記憶は寝る前に時折思い出す、夢物語のひとつに過ぎなかった。
この国で貴族女性が職に就くのは、嫁ぎ先のない末娘がやむを得ず選ぶ、妥協の道でしかない。女性たちは然るべき家に嫁ぎ、夫を支えることこそが最も輝かしい人生だと信じられている。
我が家では、弟が家門を継ぐことが決まっている。だが、まだ5歳と幼いが故に、彼が成人して一人前になるまでの間は、クラリスが婿を取って家族を支える予定だ。
その運命に疑問を抱いたことはない。けれど、前世の記憶がふと頭を掠めるたびに、全力で好きな仕事に打ち込む自分の姿を密かに妄想してしまうのだった。
十五歳から三年間、国内貴族や一部の平民が通う王立学園は、放課後も学園内に残り活動する生徒が多い。勉強するにしても、交友関係を広げるにしても、訓練に励むにしても、ここより整った環境はないからだ。
併設されたカフェテリアでは令嬢たちが話に花を咲かせ、訓練場からは金属のぶつかり合う音と令息たちの荒々しい掛け声が喧々と渦巻いている。
クラリスはその賑わいを横目に、教室へと続く廊下をひとり歩いていた。
肩をわずかに過ぎたあたりで切り揃えられたブラウンのストレートヘアと、髪と同系統の褐色の瞳。身長もこの国の子女の平均ほどで、制服を着たら完全に周囲に溶け込んでしまう。人気のない方へと足を進めるクラリスを気に留める人はいない。
教室に人影はなく、がらんとしていた。午後の光が斜めに差し込み、整然と並んだ机に長い影を落としている。室内に入って扉を閉めると、まるで水底から聞いているかのように外の喧騒がすっと遠のいた。
クラリスは、早足で自分の席へと歩を進める。そして机の中から目当ての教科書を取り出し、知らず知らずのうちに小さく吐息をこぼした。
(――忘れ物を取りにきただけとはいえ、誰もいない教室で探しものをしていると、何だか悪いことをしている気分になるわね)
誰もいない教室の静寂を測るかのように、時計の秒針が無機質な音を響かせている。クラリスは教科書を壊れ物のように胸元へ抱き寄せ、急いで教室を出ようとした。
だが、その歩みが不意に止まる。
視界の端、机の脚の影に一冊のノートがひっそりと横たわっているのに気付いてしまったから。わずかな躊躇いののち、吸い寄せられるように膝を折り、その落とし物へと細い指を伸ばす。
よく使いこまれて角が丸くなった青色のノートは、表紙にも裏表紙にも何も書かれていない。一見しただけでは、誰のノートなのか判別できない。
「勝手にごめんなさいね」
床に戻すのも忍びなく、持ち主に無作法を詫び、ノートの端にそっと指先を添えてページを捲る。
だが次の瞬間、後ろめたい気持ちは一息に消し飛び、クラリスの泰然とした表情が凍りついた。
「え、字が汚い」
あまりの惨状に、引き攣った頬が戻らない。
丸っこい癖字は、急いで書いたとしても限度が過ぎている。ぐちゃぐちゃと文字が重なり筆記体の悪い見本のようなそれは、現代の活字体に慣れた目には恐ろしい滅びの呪文のよう。丁寧に書き取りを練習している五歳の弟の方が、よほど読み取りやすく大人びた文字を書ける。
だが、本当の衝撃が彼女を襲ったのは、その内容だった。
〈○○先輩の攻略計画〉
〈△△で待ち伏せする〉
ノートに書かれていたのは、1週間のスケジュールと学園に通う令息の情報が書かれたメモ。スケジュールは分刻みで、各地を飛び回り寝る暇もない大企業の社長も顔負けの詰め込み具合だ。
眉間に深い皺を寄せ、半ば解読を諦めかけたそのとき、見慣れた名前がパッと目に飛び込んできた。
〈ルードヴィク様をお誘いし、城下町で遊ぶ〉
私の婚約者、ルードヴィク・クロウ。クロウ伯爵家の次男で、私の幼い弟が家を継ぐまでの保険として、我が家に婿入りすることが決まっている人。
「ルードヴィク様の攻略計画、なになに……プレイボーイで来るものは拒まない。誘えば、絶対にOKしてくれる。自分を立てて甘えてくれるタイプの積極的な女の子が大好き……」
「政略結婚で、愛のない真面目でお堅い婚約者に嫌気がさしている。婚約者は、本当は騎士になりたいルードヴィク様を冷たく見下しているタイプの悪役令嬢……」
心臓のあたりにチクッと針で刺されたような痛みが走ったのは、書かれた悪役令嬢の記述に心当たりがあったから。騎士になりたいルードヴィクを見下しているつもりはないけれど、クラリスとルードヴィクの関係があまり良いものではないことは確かだ。
婚約者の名前をみつけて、もはや見てみぬふりはできなくなった。
他人の私物を盗み見ている後ろめたさは脇に置いて、一字一句を零さぬよう、隅から隅まで食い入るように文字を追う。
そこには現宰相の嫡男のカイン・フロスト様、騎士団長のご子息のラッセル・スタルワート様。恐ろしいことに、国内貴族の最高位の家門である公爵令嬢と婚約している王太子殿下のお名前まで書かれていた。
「……あ、またスペルが間違ってる」
令息たちの情報は、どうやってそんな情報を知ったの!?というマニアックなネタがある一方で、大部分は誰しもが知っているような内容だ。
普段はどこで過ごしているのか。誰と一緒にいるのか。どの派閥に属しているか。特技は何で卒業後の進路の予定。学園の生徒なら社会常識として理解しておく必要がある。
(――私は、自分の婚約者の話を知らなかったけどね)
それなりに相手の性格や好みは調べられているものの、肝心の計画があまりにお粗末だ。男性と親しくなるのが目的のようなのに、せっかく調査した相手の個性は完全無視。その方の居場所を突き止めては突撃し、ひたすら話しかけるだけの予定が羅列されている。
これでは単なる強襲だ。というか、失礼だ。駆け引きもあったものじゃない。
(――この子なら、もっと魅力的な手段がたくさんあるのに!)
これだけ特徴的な筆跡の主は、クラスに一人しかいない。
ノートを持つ手に力がこもる。湿り気で頁を傷める前に、慌てて机の上に置いた。
書き込みの多さという点においてだけは優秀なノートを、クラリスはじっと睨みつける。
そのとき、前世の秘書だったときの記憶が、胸の奥をざわりと撫で上げた。
大企業の秘書室で働いていた自分。
多忙を極める経営陣のスケジュール管理、海外からやってくるVIPたちへの接遇、取引先へさりげない手土産の準備、記念パーティなどのイベントの手配や運営。会社の売上に直接貢献するような仕事ではないが、世界を動かす経営者たちが少しでも心地よく円滑に動けるように、常に情報をサーチして、計画を考える。
隙なくミスなくやり遂げたときの達成感。さりげない気遣いで相手の緊張がほぐれたときの喜び。
次第に胸の中に燻っていたざわめきが、形を変えて静かな熱を帯び始める。
クラリスは筆箱から赤色のペンを取り出すと、かつてないほどのやる気に満ちた瞳で、「仕事」を開始した。
翌朝、クラリスは普段よりも早めの時間に登校した。同級生たちに挨拶をしながら教室に入り、まっすぐに自席へ向かう。窓際の1番後ろの席は、風通しがよく、クラス全体が一望できるので気に入っている。
あの子の席は私の席からみて右斜め前方で、昨日椅子の上に置いて帰ったノートがそのままの位置にあることを確認できた。彼女は常に遅刻ギリギリの時間にくる。ずっと疑問に思っていたが、あの鬼のようなスケジュールで過ごしているのなら納得だ。
今朝も自作の計画を忠実に実行しているのだとすれば、騎士科の校舎に寄っているのだろう。
始業の鐘が鳴る数分前に、滑り込むように彼女が教室に入ってきた。その後ろからすぐに担任が現れ、談笑していた生徒たちも慌ただしく椅子に座る。
皆が出席を確認する教師の声に耳を傾ける中、彼女は身を縮めるようにしてノートを開き、途端に息を呑んで体を強張らせた。落ち着かない様子で周囲に視線を彷徨わせると、ノートを机の奥へそっと押しやる。
(あの子はどういう行動に出るかしら)
クラリスは可愛らしい髪飾りがついたストロベリーブロンドの後ろ姿を、誰にも悟られぬよう、静かな期待と共に横目で追い続けた。
――どうやらあのノートは、授業の合間に隠れて書きこまれているらしい。
その日彼女を観察してわかったことは、盗み見られた形跡に警戒を強めるような素振りもなく、常と変わらず朗らかで明るく振る舞っていたこと。
そして、座学の最中に時折あのノートを取り出して、ペンの先で顎を突き、唸りながら熱心に書き込んでいること。よく怒られないものだと感心したが、彼女の字は非常に読み取りにくい。一瞥した程度では、それが授業のメモではなく不遜な計画書だと露ほども思われないのだろう。
わかったことはそれだけ。他は特筆すべきこともなく、いつも通りの一日が過ぎていった。
クラリスは放課後、友人と約束がない限りは図書室で自習してから帰ることにしている。
机の中身を整理する振りをしながら、あの子の動向を伺っていると、彼女は周囲をきょろきょろと見渡した後、ノートを机の中に戻した。そして、「あ、時間!」とわざとらしく呟いて、慌ただしく教室を出て行く。
赤入れした犯人を誘い出す罠かと疑ったが、続いて窓の外から聞き覚えのある元気のいい声が響き、ハッとして窓に近寄る。三階にある私たちの教室からは、下校する生徒で賑わう校門がよく見渡せた。
目を引く桃色の髪の主が手を振り、駆け寄った先。そこには、私の婚約者ルードヴィク・クロウの姿があった。
「お待たせしました! ルードヴィク様!」
「いいや、待ってないよ。今日はどこに行きたい?」
ルードヴィクは慣れた手付きであの子の肩を抱き、自家の紋章の入った馬車へエスコートする。この国では、婚約者以外と密室で二人きりになるのは移動の馬車も含めて不作法とされる。さらにいえば例え婚約者であっても、成人するまではあまり歓迎されない。
騎士科の訓練が多忙だという理由で、ルードヴィクとは学園に入学してからほとんど顔を合わせていない。以前は観劇に誘われることもあったが、暗闇で足を撫でまわされたりするのが不快で、やんわりと人目のある場所を提案し続けたら、次第にやりとりが途絶えた。
窓の手すりを持つ手が小刻みに震える。風に煽られたカーテンが視界を遮り、再び視線を落としたときには、二人の姿はもうなかった。
「クラリス様、大丈夫ですか……?」
同じく一部始終をみていたクラスメイトの令嬢が、案じるように声をかけてきた。顔の前でゆるゆると手を振り、穏やかに応じる。
「わかってはいたのですが、いざ目の当たりにすると驚いてしまったわ……」
「ルードヴィク様は、その……大変な人気ですものね……」
ルードヴィクは、騎士らしい長身に王家の色とよく似た輝くような金髪碧眼の美男子で、令嬢の羨望の的だ。闘技大会で彼が登場すると黄色い歓声が沸き起こるのも、見慣れた光景だ。
婚約者のクラリスは、先輩からやっかみを受けたこともある。すれ違い様に、あなたのような地味な子に彼はもったいないわと囁かれたり、ルードヴィクは婿入りという立場を嫌がっているのよと忠告されたり。
ルードヴィクの不貞に薄々気づいてはいたが、これも貴族社会ではよくあること。どうすることもできないと、蓋をしてやり過ごしてきた自分に今さらながら気づかされる。
「少し頭を冷やしてから帰るわ」
そう告げると、クラスメイトは同情の混じった面持ちで頷き、静かに教室を去っていた。
最後のクラスメイトも帰宅し、クラリスは一人、教室にぽつんと取り残された。席に座ったまま、斜陽が落とす影をぼんやりと眺める。開けっ放しにされた窓から吹き込む冷たい風が、クラリスの茶色の髪を揺らし、頬を撫でる。
やがて何かに導かれるように主のいなくなった席へ歩み寄り、クラリスはあの青いノートを取り出した。
ページを捲ると、昨日の自分が書いた赤い文字の下に、あの呪文のような悪筆で言葉が書き加えられていた。
〈どなたか知りませんが、アドバイスありがとうございます! 言われたとおり、お昼ご飯を食べているカイン先輩に声をかけて、おやつを分けてあげたら、いい感じに話せました!〉
攻略対象と書かれていた現宰相家の嫡男であるカイン・フロスト様。物静かで面倒見がよく、図書室で
勉学に励んでいるという攻略情報の記述は、大枠において相違ない。
元の計画では、昼休みの図書室で偶然を装って隣に座り、課題のわからないところを聞くと書かれていた。だが、彼は読書中に邪魔されるのを酷く嫌う。面倒見が良いのは自分から声をかけた場合のみで、計算ずくで擦り寄ってくる相手は嫌いなのだ。冷たくあしらわれる令嬢たちの姿を、クラリスは自習中に何度も目にしてきた。
カイン様の性格を鑑みれば、図書室前のベンチで昼食をとっているときに堂々と声をかけた方が好ましい。甘いものがお好きなようだから、お礼に菓子を渡せばなお良し――これが昨日クラリスが書き加えた提案。
その得体のしれない赤ペンのメッセージを、彼女は素直に信じて実行したようだ。
先ほど見た光景で理解してはいたが、彼女は本当にこの予定表どおりに動いて、攻略なるものをする気らしい。
休み時間のたびに教室を飛び出していくあの子の後ろ姿。慣れた手つきで彼女の肩を抱いていたルードヴィク。何かに憑かれたようにノートに書きこんだ自分。昨日からの出来事が次々と脳裏に浮かんでは消える。
書き加えられた言葉を繰り返し読んだ後、クラリスは意を決したように赤ペンを握った。
それから奇妙な交流が始まった。
彼女の情報は偏っている上、計画に落とし込む際には相手の性格や好みを全く考慮しない。貴族社会のルールにも疎いのだろう。一歩間違えれば不敬を問われ、つま弾きにされてもおかしくないことも平然と盛り込まれていた。
クラリスは秘書だったときの情報収集力や観察眼をフル稼働し、ノートを徹底的に添削した。ただし、それは恋仲になるためではない。あくまで真っ当な社交の手段として、相手と親しくなるための計画への修正だった。
婚約者がいる男性に対しては、失礼に当たらない線引きや引き際も教えた。「あなたのやっていることは不敬だからやめなさい」と伝えて大人しく従う相手なら、そもそもこんな真似はしないだろう。だからこそ頭ごなしの否定は避け、徐々に誘導するよう手順を踏んだ。
まず過密すぎる計画の無謀さを指摘し、攻略対象なる男性を絞り込ませることにした。
〈このイベントは投資対効果が悪すぎます〉
〈二兎追うものは……ですよ。まずは目の前の男性に集中しましょう〉
どうしていけると思えるのか意味不明だが雲の上の存在である王太子殿下は、攻略対象から外せないらしい。
〈王太子殿下とどうしてもお近づきになりたいのでしたら、まずは公爵令嬢のソフィア様と親しくなりましょう〉
〈身分の差を考えれば、自分から声をかけるなど言語道断。今は厳禁です。まずは、あちらから話しかけたくなる『隙』を作りましょう〉
〈ソフィア様は、バーネット商会の商品を愛用されています。新商品を身に着けたり、近くで新作のお菓子を食べたりして興味を引くのです。好奇心が強く人当たりの良い方ですから、きっとあちらから声をかけてくださるはずです〉
〈わかりました!! やってみます!!〉
打てば響くとはまさにこのことで、彼女は即座にかつ素直に行動に移していく。そしてとにかく読み取りづらい点を除けば、報告される出来事は克明で、おかげでこちらもさらに精度の高い提案ができた。
この奇妙な交流が始まって数ヵ月の間に、彼女はいつの間にか社交界の中心へと上り詰めていった。
「ルードヴィク様……」
図書室に向かう前にわざと少し遠回りをして、騎士科の校舎に近い廊下を歩いていたら、ルードヴィクと鉢合わせしてしまった。
たまにはあの子が計画を実行している姿を覗いてみようかしら、なんて。軽い気持ちで野次馬をしたのが運の尽き。鍛えられた身体に女子生徒をべったりと貼り付かせたルードヴィクが、正面から歩いてきたのだ。
姿を視界に捉え、認識した瞬間、思わず眉をひそめてしまった。不味いと思って表情を取り繕うとしたときにはすでに手遅れで、彼の顔には明らかな嫌悪が滲んでおり、大きな舌打ちを投げつけられた。
「ルーク、どうしたの?」
クラリスのことを知らないのだろう。令嬢は途端に機嫌の悪くなった男に、さらに擦り寄るように甘える。それに少し気分をよくしたのか、ルードヴィクはパッと笑顔をつくり、「何でもないよ」と甘い声で令嬢の頭を撫でた。
令嬢が纏うバラの香りが、逃げ場のない廊下で嫌に鼻につく。クラリスを冷淡な目で睨みつけながら、彼がすれ違いざまに吐き捨てるようにぼやく。
「なあ、淑女科ってさ。男の立て方とか授業で教わらないのかよ?」
「淑女教育のこと?」
ローラが小首を傾げて聞き返す。
「せめて可愛く甘えてくれる女の子なら、まだ我慢できたんだけどな~」
「私みたいな?」
「そうそう。ローラは家格はちょっと物足りないけどな~」
「なによう!」
令嬢がポカポカと叩く真似をするのを、ルードヴィクが笑いながら受けとめる。「楽しいところにでも行こうぜ」と今度は彼が手慣れた様子で女の機嫌を取り始めた。
クラリスは動くこともできず、彼らの笑い声が遠のいていくのを、ただ背中でじっと受けとめた。
その後も、月日は滞りなく流れていく。
もともと恐ろしいほど行動力がある子なのだ。
いつの間にやら、彼女は一学年上の王太子殿下やその婚約者である公爵令嬢とも懇意になったらしく、選ばれた者しか立ち入れないサロンから、あの元気で明るい声が漏れ聞こえてくるようになった。
彼女はクラリスの計画に従い、次第に無謀な攻略の手を引いていった。交友関係こそ男女問わず広がったものの、特定の男性と深い仲に陥ることはなく、あくまで良き友人としての地位を築いている。
最後まで攻略リストに残った男は――クラリスの婚約者であるルードヴィクだった。
王立学園卒業の日。学園を卒業すると同時に生徒は成人を迎える。卒業式と成人式を兼ねたこの日は、建国祭や王家の祝い事に並ぶ一大行事だ。王宮の最も広いホールに国中の貴族が集い、盛大なパーティーが催される。
婚約者のいる女性は、よほどの事情がない限り、ここから数年のうちに結婚することになる。パーティーが幕を閉じるまでのわずかな時間が、子どもと大人の狭間で多少のわがままが許される、人生最後の猶予だった。
パーティーも中盤。皆が思い思いに過ごす中、最後の計画どおり、男爵令嬢サリア・バーネットを伴ったルードヴィクがクラリスの前に現れた。
騎士科の意匠を凝らした濃紺の正礼服を着こなすルードヴィクと、王都の流行の最先端をいく、バーネット商会の技術の粋を尽くした薄紅色のドレスに身を包んだサリア。二人の姿は、おとぎ話に出てくる騎士と姫のように完璧だった。
自然と周囲の視線が集まり、クラリスとルードヴィクを取り囲むように人だかりができた。ルードヴィクの後ろに控えるサリアは、俯いたまま表情を隠している。
ルードヴィクはクラリスを冷ややかな目で見下ろすと、威圧的な低い声で告げた。
「君のようなつまらない人間と結婚しても幸せになれない。俺のような優秀な騎士が、跡継ぎにもなれない地味な伯爵家に入るのは、才能の無駄遣いというものだ。――この婚約は破棄させてもらう」
最低限の手順は踏んでいるらしく、昨夜のうちに正式な書状も我が家に届いていた。両家の当主も了承しており、ルードヴィクのこれは単なる確認の儀式にすぎない。
「……承知しております」
表情を変えず、拒絶を示すように半歩下がって一礼した。ただでさえ婚約破棄など外聞が悪いのだ。これ以上、不用意に見世物になりたくない。
クラリスはぎゅっと唇を引き締め、ギャラリーの波に紛れるように、そっとその場を離れようとした。
感情の見えないクラリスの動きに納得がいかなかったのだろう。彼は腕を組んで、顎を上げ、はっと鼻を鳴らす。
「地味なのに努力しなかった自分を恨むんだな! 比べてサリア嬢は男爵家で身分こそ劣れど、飛ぶ鳥を落とす勢いのバーネット商会の跡取りだ。社交界の華として輝くサリア嬢のような女性こそ、俺にはふさわしい!」
そう高らかに宣言し、再び注目を集めると、ルードヴィクはその場でくるりと身を翻し、恭しく床に膝をついた。サリアの細く白い手をそっと取るその姿は、物語から抜け出してきた誇り高き騎士そのものだ。
周囲が固唾をのんで見守る中、サファイアのような美しい碧眼が愛おしげにサリアを捉える。彼は慈しむように目を細め、甘い声で囁いた。
「サリア嬢、ずっと待たせてしまってごめん。俺と結婚してほ……」
「いや、しませんけど」
サリアの氷のように冷たい声が会場にしんと響いた。日頃の元気いっぱいで明るい彼女を知っている誰もが、その豹変ぶりに息を呑む。
「サ、サリア……?」
現実を受け入れられず、間抜けな顔で硬直する元婚約者を、サリアは汚いものを払うように手を振りほどいた。
呆然と跪いたままの男を無視して大股で通りすぎると、クラリスの前に立つ。そして精巧に飾られた髪が乱れるのも構わず、がばりと深く頭を下げた。
「クラリス様、今まで、本当に申し訳ございませんでした……!!」
震える声で謝罪し、そのまま泣き出してしまったサリアに、クラリスは初めておろおろと狼狽した。「え、なんで? 」「どうしたの……?」と問いかけても、サリアは肩を震わせるばかりで頭を上げようとしない。
泣きじゃくる彼女を前に、周囲の好奇の視線にいよいよ耐えきれなくなったクラリスは、サリアの手を引いて逃げるように控室へと引っ込んだ。
大規模なパーティーでは数多く控室が用意され、正当な理由があれば個室としても使用できる。扉の前で控える騎士と侍女に声をかけ、しばらく誰も入れないよう頼み込む。
令嬢が二人で、片方はボロボロと涙を零している様子に、騎士たちも事情があると察したのか、黙って中へ通してくれた。
クラリスは部屋の中央にあるソファにサリアを促すと、備え付けのティーポットで手際よくお茶を淹れた。テーブルの上に白く湯気のあがるカップを二つ並べ、サリアの隣に腰を下ろす。
「……クラリス様、いつもアドバイスをありがとうございました」
「私だと気づいていらしたのね……」
「あんな綺麗な字、少し考えたらすぐにわかりました」
文官を目指す者は、書き写しの試験を避けては通れない。密かにそこを目標に習練を重ねてきたクラリスの文字は、端正でまるで教本のように美しかった。
サリアはお行儀悪く両手で包むようにカップを持ち、ちびちびと紅茶を啜りながら、ぽつぽつと語りだした。
「信じてもらえないかもしれませんが……実は私はこの世界じゃないところに生きてきた記憶があって、今いるこの世界はそこで遊んでいた乙女ゲームとそっくりなんです」
「ゲームといってもわかりませんよね」と笑うサリアに、クラリスは困ったように微笑み返した。自分自身の前世の記憶は、仕事一筋に生きたこと以外、あまり思い出せない。
「私の家の商会が大きくなったのも、日本の知識を使って、これまでにない商品をつくってきたからです。でもそうしたら、商会が儲かるほどに、お父様も、お母様も、どんどん怖くなっていってしまって……」
ふと目を落とすと、サリアが持つティーカップが小さく震え、波紋を描いていた。虚ろな瞳でどこか遠くを見つめたまま、辛い記憶を無理やり飲み下すかのように、ぐにゃりと顔を歪める。
「私がアイデアが出てこなくなって、売れる商品を出せなくなったら、『今度は有力な貴族と繋がりをつくれ』と無理やりこの学園に放り込まれました。上手くできなかったら、お金持ちのお得意さんの愛人にするって言われて。ここがゲームの世界なら、もしかしたら攻略対象の方を全員クリアしたら、抜け出せるんじゃないかって思ったんです」
がむしゃらに予定を詰め込み、なりふり構わず対象へ接触を図ったものの、空回りし続けていたとき、例の赤文字を目にしたのだという。
「けれど、勝手にノートに書き込まれた正体不明の言葉でしょう?」
あまりに無防備ではないか?と言外に伝えるが、彼女の返事は「ゲームのお助けキャラが現れたんだって、信じたかったんです」と切実なものだった。
「……それよりも、クラリス様があのような書き込みをした方が驚きです」
クラリスは目立つことを好まない、貴族女性の鑑のような令嬢だ。ノートを見てサリアを避けるならまだしも、あのような行動に出るなど、普段の彼女からは考えられない。サリアの疑問も最もだろう。
「……だって、もったいないと、思ってしまったんですもの」
透き通るような青い瞳でまっすぐクラリスを見つめるサリアに、ぽろりと、隠していた本音が零れ落ちる。
「クラリス様?」
「私はずっと外交官になりたくて、勉強したり、情報収集は怠らないようにしていました。だからこそ、わかります。あなたの商会は常に流行の最先端で、どこの国のどのような方に差し出しても喜んでもらえるような品揃えで」
思わず体が前のめりになる。王城の質の良いソファが、クラリスの気迫に押されるようにぎしりと軋んだ。
「バーネット商会のファンは、この学園内にも大勢いらっしゃいます。最高の武器をすでに手にしているというのに、あなたという人は社交の『しゃ』の字もない、他の方々に迷惑をかけるやり方で皆さまに近づこうとして!」
「ご、ごめんなさい……」
「あなたの生み出した商品は、たくさんの人に新しい喜びや楽しさを与える、人の心を掴む素晴らしいものです。そしてその向こう見ずな行動力。誰からかわからないアドバイスを鵜吞みにして動くのは正直どうかと思いましたけど、今お聞きした話が本当でしたら、ここまでの商品開発力も含めて、類まれなパワフルさだと思います」
そう、クラリスはずっと憤っていたのだ。
前世の経営者たちにすら匹敵するようなサリアの発想力や行動力。それは誰もが簡単に真似できることではない。その才能を活かして世界へ羽ばたかないで、センスのない知性の欠片もない立ち振る舞いばかり――なんて、もったいないのだろうと。
「ク、クラリス様ぁ……」
サリアが迷子の子犬のように情けない声を漏らす。
「例え世界を動かすような発想力を持っていても、それを本当に実行するパワーがある人はそういないのです。誰にでもできることではありません。あなたはいつだって素直で、あまりに一生懸命だから、私もどんどんできることをしたくなってしまって……」
「クラリス様、本当にごめんなさぁい!!」
クラリスの言葉を遮るように、サリアが覆いかぶさる勢いで抱き着いてきた。わんわんと子どものように泣きわめくサリア。その小さな肩をさすりながら、クラリスは静かに瞼を閉じた。
心の奥底でずっと燻っていた想いに耳を傾ける。胸の奥にある鉛のような固まりがせり上がり、喉元をキュッと締め付ける。怖い。でもサリアから漂う柔らかな花の香りに勇気づけられて、絞り出すように声を出す。
「いいえ、サリア様が謝る必要はありません。自分の婚約者と向き合わずに、あなたに押し付けるようなことをした私自身に責任がありますわ」
「……クラリス様?」
血がにじむほど、ぎゅっと唇を噛みしめる。これまで独りで抱え込んできた罪悪感が、苦い鉄の味と共にあふれ出す。
「サリア様、私の問題に巻き込んでしまって申し訳ございません」
「そ、そんな……」
「あなたのおかげで、私はルードヴィク様と結婚したくないし、やっぱり外交官として働きたいと強く確信できたの。そして、ルードヴィク様と別れるためにあなたを利用したわ。サリア様の評判や気持ちも考えずに……」
「クラリス様の所為じゃありません! 最終的には私が自分の意志でルードヴィク様に迫ったんですから!」
「でも、でも……私はとても卑怯だったわ……」
耐えきれずに、クラリスの茶色の瞳からポロッとひとつ涙が零れた。ここで泣きだしてしまうなんて。自分はなんてずるい人間なのだろうか。
素早い動きで、サリアがポケットからレースのハンカチを取り出し、クラリスの目元に優しく添える。
(――この子、ちゃんとハンカチを持っていたのね)
自分の涙を拭うことさえ忘れていたくせに、誰かのためなら迷わず動けるサリア。
ノートのやり取りを通じて気づいていた。サリアは貴族のマナーには少し疎いけど、心根がまっすぐで温かい素晴らしい令嬢だ。彼女がそれを望むなら、ルードヴィク様と結ばれて幸せになってほしい。そう願った気持ちも、紛れもないクラリスの本心だ。
どちらともなく、すっかり化粧の崩れてしまった顔を見合わせ、クスクス笑い合う。婚約者であるルードヴィクとさえ、これほど親密な空気になったことはなかった。
本音を吐き出した後の空気は驚くほど清々しく、二人の間には代わりの利かない確かな気安さだけが残っていた。
「……クラリス様は外交官になりたいのですか?」
「……そうよ。家のために嫁ぐのが当たり前で、働く道なんて選べないと思い込んでいたわ。けれど、最終的には弟が家を継ぐのだから、私がルードヴィク様と結婚しなければならない絶対的な理由もなかったの。だけど貴族として、生まれる前から決められた運命に異議を唱える勇気もなかった」
親に逆らえずにいた自分と重ねたのだろうか。また泣きそうな顔になったサリアが、クラリスの手をぎゅっと握りしめる。そのあたたかいぬくもりに、自然と体の力が抜ける。
「心の中ではずっと働きたかった。そのことばかり考えていて、ルードヴィク様と親しくなる努力もしなかった。中途半端だったわ」
本当にごめんなさいと呟くと、サリアはゆるゆると首を振った。
「クラリス様は学校の先生みたいですものね」
「そこは秘書って言ってほしかったわ」
「秘書、確かに! 秘書の方がぴったりですね!!!」
うんうんと力強く頷いた後、サリアは視線を彷徨わせて何かを考える素振りを見せた。クラリスは思い出したように、すっかり冷めてしまった紅茶を手に取り、口に含む。喋り疲れた今の喉には、むしろ冷たさが心地よく、最後に残っていた小さな胸のつかえまで一緒に流れ落ちていくようだった。
「ねぇ、クラリス様。私はクラリス様のおかげですごい人脈が広がったんです。王太子殿下ともお近づきになれました」
「そうね。正直にいうと、本当に王太子殿下と王太子妃殿下の懐にまで入れるとは思ってませんでしたけど」
「それですね、王太子妃であるソフィア様が社交界に強い専属の文官を探してて。ぜひクラリス様を推薦したいと!」
「は?」
「えへへ、実はあのお二人にはクラリス様の正体ばれちゃってます」
あまりの驚きに、ガチャンと音を立ててソーサーにカップを戻してしまった。気まずそうに視線を逸らし、頬を指で引っ掻くサリアに、どういうことなの!とクラリスが詰め寄る。
サリアの話を要約すると、こうだ。
これまで有力貴族の令息たちに無鉄砲な突撃を繰り返していたサリアが急変したことを、王太子殿下は陰で訝しんでいたらしい。続いてあまりに鮮やかな手際で王太子妃候補にまで距離を詰めてくるものだから、「何が狙いだ」と問い詰められてしまったのだという。
最高権力者には逆らえず、あろうことか、サリアはあの赤入れされたノートをそのまま差し出した。
事情を理解した王太子殿下は呆れ果てながらも納得し、以後は寛容になった。そしてソフィア様は、その緻密な計画を大層気に入ってしまったのだという。ルードヴィク様との婚約破棄も織り込み済みで、「もし彼と別れて自由になるなら、私の元へ来ないかしら」とサリアに相談していたとか。
「私はソフィア様とご挨拶しかしたことないわ!」
「ソフィア様は、クラリス様の実力は十分ご存知ですから大丈夫ですよ!」
王族専属の文官は、執務の補佐からスケジュール管理、はたまた夜会やお茶会の差配、諸外国との交渉まで。幅広い知識と緻密な計画性、高度な管理能力が問われる仕事だ。王族からの厚い信頼が不可欠なため、単に能力が高いというだけで得られる地位ではない。
その仕事はまさに、クラリスが夢見た外交官という職業に通じるものであり、婚約破棄される令嬢としての名誉すら回復できる、破格の待遇だった。
「たぶんですね、ソフィア様は今日の計画もご存知なので、そろそろ結果を知りたくて、ここにいらっしゃる気がします。私とソフィア様、なんと思い切りの良さやすぐ行動しちゃうところが結構似ているんです!」
「え、嘘でしょう!? ご挨拶できるような顔じゃないわ!!」
「このままでも気にしませんよ」「大丈夫じゃないわよ!」
そんな令嬢らしからぬ押し問答を繰り広げていたそのとき、本当にソフィア様が訪ねてきて、呆然とするクラリスへ、正式に文官への登用を打診したのである。
――ヒロインのあまりに杜撰な計画書を添削していたら、まさかの前世からの憧れが叶っちゃった話。
クラリスとサリアの卒業パーティー日から約一年後――王太子殿下と公爵令嬢ソフィア様の結婚式が盛大に催された。
式から一カ月。今日は新しい王太子妃の実力を見定めようとする貴族女性たちを集めた、初のお茶会だ。
「……クラリス。準備はいいかしら?」
「もちろんです、妃殿下。私が完璧な仕事でサポートいたします」
「ふふ、さすがね。信頼しているわ」
分刻みのスケジュールを組み、膨大な情報を精査し、最適解を導き出す。今世のクラリスの居場所は、荒波立つ社交界の最前線――王太子妃のすぐ隣だ。
ソフィアがすっと目を細めて立ち上がる。凛とした足取りで会場へ向かうと、朗らかな声を響かせた。
「みなさま、ごきげんよう」
次々と挨拶に訪れる夫人たちへ、クラリスが事前に教えた情報をもとに、ソフィアは淀みなく言葉をかける。隙あらば新王太子妃を揺さぶろうとする女たちを前に、ソフィアは一歩も引かずに堂々と立ち振る舞っていた。
その背中を見守りながら、クラリスは次の「仕事」のために、静かに動き始めた。
後日談①サリア
「ねぇ、サリア、あなたも私の専属の文官になりましょうよ。研究開発費を出資してあげるから、好きな商品を自由に私の元でつくったらいいわ」
サリアは男爵家を抜け出し、王太子妃ソフィアが立ち上げた研究施設で新たな商品を次々と開発。運用能力が低いサリアのために、ソフィアの命もあって、クラリスはサリアのマネージャー業務も兼任する。
後日談②ルードヴィク
「ルードヴィク・クロウ様は騎士としての腕はイマイチだけど顔だけはいいから、誰かしらと結婚はできると思うわよ。クラリスやサリア以上の相手との結婚は望めないとは思うけど。あなたたちが気にすることじゃないわ」
ソフィアがそう断言した通り、彼はその見目の良さのおかげで新たな婚約者には困らなかった。選んだのは手をあげた中で最も家格の高い家。だが、ルードヴィクは地味な容姿の令嬢に満足できず、あろうことか浮気を繰り返して婚家から叩き出される。
彼を持て余したクロウ家は最終手段として、とある高齢の有力貴族夫人の愛人としてルードヴィクを差し出した。
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ここまで読んでくださり、ありがとうございます。小説家になろうでは、初めて書きましたので未熟なところも多々あると思いますが、少しでも楽しいひと時をお届けできていれば幸いです。




