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Side ユバル


 


「バーリー悪い、そっち行った」


 


「わかった、任せろ」


 


 俺の名前はユバル。冒険者だ。


 冒険者になってそろそろ20年のベテランだ。ギルドランクはBで上から3番目、一般的な冒険者ではトップクラスだ。ギルドランクはFから始まりAまで行き、その上にSランクがある。普通はBランクまでで、Aランク以上は大きな功績を残した英雄と呼ばれる様な奴だ。チームでの役割は前衛の戦士だ。


 今は、もう1人の前衛担当のバーリーに指示を出しながら押し寄せる魔物と戦っている。


 


「準備が出来ました。離れて下さい」


 


 後ろからかけられる魔術師のナセフの声に従って敵から距離を取ると


 


「エクスプロージョン!」


 


 敵の群れの中心で大規模な爆発が起きる。しかし、それすら押し除けて後ろから次の魔物が押し寄せてくる。


 


「もう、本当に鬱陶しいわね」


 


 そう言いながら弓で援護してくれているのは、エルフの弓使いのシェリーだ。


 俺を含め他の3人は中年のオッサンだが彼女は20歳位の見た目だ。1番年上なのに1番若い見た目なのだから長命種は狡いよなぁ。因みに年齢を聞いた奴は地獄を見ることになる。


 


 皆んな駆け出しの頃からパーティーを組んでいる大事な仲間だ。


 


 俺達は今、魔導学園で有名なゴティス領に来ていた。そこで運悪くダンジョンのスタンピードに巻き込まれてしまった。


 ダンジョン協会、所謂ギルドに呼ばれ対処に駆り出されてしまった。まぁ、これも冒険者の義務だ。報酬もしっかりとあるから文句は無い。無いがそれでも


 


「本当に多いな、畜生」


 


 かれこれ半日近く他の冒険者と交代しながら戦い続けているのに終わりが見えない。最初は地上に出て来た魔物を減らし、今はダンジョンの中にまで押し戻し、今は冒険者で中の魔物を間引いている。数が多いし高位の魔物がたまに混じっている。だが、俺達なら問題は無い。


 無いのだが、何か、ハッキリとは言えないが


 


「どうした、変な顔して」


 


 バーリーに声をかけられる。


 


「五月蝿い。いや、何かよ、上手く言えないんだが変な感じがするんだよ」


 


「変な感じ?」


 


「いや、俺もよく分からないんだけどさ、なーんか違和感があるんだわ」


 


 これでも長いキャリアがある。過去にスタンピードにあった事もある。


その時と今回、何か違うんだよな


 


「それ、私も分かるわ。何か引っかかるのよね」


 


 シェリーも同意してくる。


 そう、何か違うんだ。上手く言葉に出来ないが、あえて言うならまるで何者かの悪意の様な物を感じる。まぁ根拠の無い勘の様なものだが。


 


「まぁ、分からない物は今はいいでしょう。それより交代が来ましたよ。一度地上に戻りましょう」


 


 そう言って後ろからくるパーティーとナセフは交代をする。


 


「そうだな、戻るか」


 


 まだまだ余裕があるが、先もまだまだありそうだ。


 


 


 


 「皆んな、ちょっと待って!静かに!」


 


 帰りの道中シェリーが突如立ち止まり、静かに耳をそばだてている。俺には何も聞こえないが、シェリーは耳が良い。何か聞こえてきたのだろう。


 


「こっちよ、急いで!」


 


 そう言って突如走り出した。俺達を急いで後を追う。


 暫く走っていると


 


「…けて、  た …て」


 


 俺にも、声が聞こえてきた。


 走る速度が自然と上がる。


 


「誰か!誰か助けて下さいー!」


 


 急いで現場に着くとそこには子供だろう。小さな女の子が大きな魔物に押し倒されていた。アレはオーガだろう。3メートル近い大きさの大型種だ。少女は手に持ったメイスで必死に押し返そうとしているが余りもたないだろう。


 ざっと周りを確認すると、少女の仲間だろう4人の冒険者の死体と倒された魔物の死骸が複数存在していた。


 


「皆んな!いくぞ!」


 


 そう言って急いで魔物に迫る。


 シェリーが弓矢での先制攻撃でオーガの注意を少女からこちらに向けさせる。


 


「うおおぉぉー!!」


 


 裂帛の気合いで持って盾でオーガを殴り付けて少女から引き離す。


 倒れた少女をバーリーが抱えて急いで後ろに下がる。ここら辺は長年の付き合いだ。何も言わずとも連携が出来る。


 


「大丈夫か!」


 


 バーリーが声をかけると


 


「は、はい」


 


 そう言って彼女は意識を失った


 


「バーリー、彼女を頼む。シェリー、ナセフいくぞ!」


 


 俺は急いで指示を出しオーガに向き合う。


 


「ええ!」


「任せて下さい」


 


 2人も直様オーガに向かって臨戦態勢をとる。


 


 


 


 


 


 


 それから暫くして


 


 ズゥン!と言う音と共にオーガが倒れる。


 


「ふぅ、やっと倒せた」


「こんな大物久しぶりね」


「それより彼女は大丈夫でしょうか?」


 


 と、確かにそうだ。


 


「大丈夫だ、意識を失っているが命に別条はない」


 


 それは良かった。


 


「それにしてもこんな上層にまでオーガが出てくるとは」


「皆んな子供よ、きっと駆け出しのパーティーね」


 


 そう言って死体を確認しながら、ギルド証のタグを集めていく。ギルドタグは金属製のタグに名前とギルドランク、会員番号が記載されていて死体の身元確認の為に見つけた遺体のタグの回収が義務付けられている。


 男子3人に女子2人のパーティーか。とくに女の子の死体は首から上がなく酷い状態だ。


 


 ふと気になって気絶した少女のタグを見て見る。


 綺麗な赤い髪の女の子だ。名前は


 


「アンリ、アンリ ジャオか」


 


 仲間を失い傷ついているであろう少女を見る。


 せめて臨時パーティーで、彼女達の付き合いが短く傷が浅いことを祈っておこう。

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