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Side レオン3


「すまない、私の勝手な判断でこんな事に……」


 アルバ王国との休戦が成った後、僕は公国の城の庭でラガーランと2人で話していた。


「いや、お前の判断も分かる。確かにあの状況下では仕方ない判断でもあった。誰があの様な事が起こると思うのか。全滅するまで戦うなど、普通は考えられん」


 ラガーランは仕方ない事だったと言ってくれる。


「むしろお前が巻き込まれなくて良かった。何が起こったか分からんが、もしかしたらお前まで死んでいたかもしれなかったしな。今、お前にまで死なれたら我が国は立ち行かん」


 そう言って私の心配をしてくる友人に罪悪感がつのる。


「父上は今回の責任をとり、王位を辞任した。次代には俺を指名している。アルバ王国とは休戦したが、ゴルビアとは未だ戦争状態だ。お前にはまだまだ頑張ってもらわないといかんのだ」


「ご歓談のところ失礼いたします。ラガーラン様、お客様がおみえになりました」


 そう言って1人のメイドが声をかけてくる。そのメイドを見た瞬間息が止まるかと思う程に驚いた。赤い髪に赤い色の目をした女だった。


「ああ、もうそんな時間か。済まないなレオン、話はまた今度な。ところで見たことが無いメイドだが新人か?」


「はい、先日からお世話になっています、アイリと申します。以後よろしくお願いします」


 そう言って女はぺこりと頭を下げる。


「ほぉ、妹とよく似た名前だな。それでは案内してくれ。ではレオン、またな」


 咄嗟に呼び止めようと腕を伸ばすが、此方を見るメイドが口に人差し指を当て静かにする様にと見てくる。

 顔は笑顔なのにその目は全く笑っていなくて、見られただけで僕は恐怖で動けなくなって、ただ黙って2人を見送る事しか出来なかった。

 僕の心は完全に折れていた。



 その日の夜、ラガーランが死んだとの知らせが届いた。毒の塗られたナイフで刺され治療も間に合わず死んだそうだ、

 犯人は子爵家の婦人で、今回の戦争で旦那と子供を失ったそうだ。

 それなのに、何も得られないまま休戦となり、では何のために自分の

家族は死んだのかと怒り、新しい公王のラガーランに再戦を訴えたが聞き入れられず、結果凶行に及んだそうだ。


 ラガーラン殺害後、彼女は隠し持っていた毒で自殺したそうだ。


 周囲の人間は皆彼女がそこまでの事をするとは思わなかった言い、誰もが信じられないとの思いを抱いていた。

 私以外は。



 その後ラガーランは国の状況が状況故に、王族とは思えない静かで小さな規模の葬儀で送り出された。


 運び出される友人の遺体を前に僕は、もう、耐えられなくなっていた。




 葬儀が終わり、一通り落ち着いたころ僕はアイリスの下を訪ねていた。城の一室で部屋には2人きり、周囲には誰もいない。


「レオン様、大丈夫ですか?顔色がよろしく無い様ですが?」


 部屋に入って来た僕を見てそう言ってきた。そう言うアイリスも余り顔色は良くない。当然だろう家族が死んだばかりなのだから。それでも此方を心配してくれる彼女のは彼女の優しさだろう。


 そんな彼女に僕はこれから最低な事をしようとしている。それがわかっていても、もう耐えられなかった。


 僕は膝を着き頭を下げ、そして彼女に全てを話した。


 味方同士で殺し合いをしたこと、その後アンリに取り引きを持ちかけられた事、庭でラガーランが連れて行かれた時の事。全部話した。


 罪の意識に耐えられなかった。罰して欲しかった。楽になりたかった。自分がアイリスを傷付け、甘えた最低な事をしている自覚はあった。それでも話さずにはいられなかった。


 沈黙が流れた。

 アイリスは何も言ってくれない。

 しかし、唐突に


「おや、おやおや、おやおやおや、おや〜。これはこれは、随分と情け無い場面に遭遇出来た様ですね」


 後ろから声をかけられた。


「いつの間に⁈」


「先程貴方の後ろからこっそりと。フラフラしていて幽霊みたいな状態で簡単でしたよ」


 メイド服を着た赤髪赤目の女がそこに居た。


「貴女は……」


 アイリスの問いに


「どうもはじめまして。先程ご紹介にあずかりました、この国に大損害を与えて、レオン君を誑かし、子爵婦人を焚き付けた、アンリ ジャオと申します。以後お見知りおきを」


 そう言って、慇懃に一礼している。


「それよりも、彼の事はよろしいので?彼は謂わば裏切り者。ご家族の仇では?」


 そう言って僕を指差し笑っている。

 腹は立ったがそれよりも僕も同じ事が気になって黙っていた。


「良いも悪いもありません。国の事を思えば、彼をここで切る事は出来ません。国はまだまだ窮地なのです。彼の力は今後も必要です」


 そう、まだゴルビアとの戦いは続いているし、国内も不安定だ。僕自身それは分かっていて、処罰されないんじゃないかと薄々期待していたのかもされない。だから……


「それに」


 そこで初めてアイリスは僕の目を真っ直ぐに見た。


「これは、愛した男性の弱さに寄り添ってあげられなかった私の罪でもあります。彼だけを責めるつもりはありません。私も共に罪を償いましょう」


 思わず見つめ返してしまった。アンリですら目を見開き固まっている。


 今度こそ本当に力が抜けて崩れ落ちてしまった。

 この世界に来て、生まれ変わって、自分は強くなったと思っていた。だけど全然そんな事は無くて自分は弱いままだった。


 本当の強さを前に自分はただ泣き崩れるしか出来なかった。


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