過去編2
学園に入学して1年が経った。その間に何をしていたかと言うと、
「大丈夫、貴方なら簡単に出来ますよ。簡単に」
そう言いながら青年の肩に手を回す。
「初めは第7位ですが、2人紹介するだけで第6位に。更に紹介して5位になれば直ぐ入会金以上のお金が毎月手に入りますよ」
はい、ネズミ講です。
「頑張ってくださいね」
部屋から出て行く青年に笑顔で手を振る。
「いやぁ、アンリさんスゴイですよ。今月の収支も笑いが止まりませんよ」
そう言って話しかけてくるこの金髪の男はラリー、えーっとラリー、うーんラリ〜、ラリー何某さん。ラリーさんは商家の息子で家族にも凄い期待されている様で、在学中に勉学の傍ら何かの実績を作っておきたいと考えていた様なので、良い話があるんだとお誘いし、実際の活動をお任せしている。商人としての人脈形成や部下を雇っての規模拡大等、私1人では出来ない様々な事をやってくれる優秀な人だ。
私は今回の様に勧誘や書類仕事がメインだ。
しかしそれも
「そろそろ限界ですかねぇ」
そう小声で呟く。
「え、何か言いましたか?」
おっと
「いえいえ、何でもありませんよ」
短期で利益を得る為に色々やりましたから、そろそろ限界が来て各地で問題が発生してくるころでしょう。後2、3ヶ月といったところでしょうか。そうなれば警察機関、騎士団等が調査に乗り出すだろう。
「今日は疲れたのでもう帰りますね」
そう言って部屋から出ていく。
「ええ、お疲れ様です」
ところで話は変わりますが私がこの1年間で覚えた魔術についてです。 入学して最初に調べてみたところどうやら私の属性は闇属性でした。(調べる方法は謎のテンガロンハットを被ると属性名を叫ぶと言うもの)
闇属性はゲームではデバフ、デバフデバフのデバフ特化属性。要は他人に弱体化の呪いをかけるというものだ。その中に相手の意識を逸らし命中率を下げるというものがある。私はソレを研究し学園指定の低レベルダンジョンに潜り基礎力を上げ1つの魔術を作り上げた。
それは相手に直接触れて手から極少量の魔力を流し相手に私の印象をぼかして記憶させるというものだ。この魔術のメリットは兎に角気付かれにくい事だ。手の平から直接体内にかける為周りからは分からないし、本人も余程の使い手でなければ分からないのだ。
私のスキンシップが多いのは別に好きでやっているのではなく合理的理由があるのだ。それに、美人にスキンシップされ嫌な男子はいない。逆に男だとセクハラ扱いされるかも知れないのが悲しい。
「術式発動、記憶消去」
部屋から出たところで、術を発動させる。一度触れただけの相手には印象をぼかすくらいの効果しか無いが何度も何度も繰り返しかける事で相手の体内に魔力を浸透させ効果を強化出来る。数ヶ月に渡りかけ続ければ相当強力な術を発動出来る。
つまり相手の私に関する全ての記憶をぼかし、消したのだ。
コレで問題が起きてもラリーから私に関する情報は出てこないし、被害者からも私に辿り着く事は出来ないだろう。
更に書類上にしか存在しない架空の会社に利益の一部を流し、そこから引き落とす事で書類からも辿り着く事が出来ない様にした。
コレがアレだ、所謂知識チートと言うやつだ。
念の為に仕事中は被っていた金髪のカツラを焼却炉に放り込みその場を後にする。
さて、コレで研究資金が出来た。ココからが未来に向けての研究開始だ。いやー、長い下積みだった。
因みに聞いたところによると半年後、ラリーは逮捕されたらしい。