表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/34

Side ラリー2


 今、国境線を越えて隣国ノチウドラ帝国に入ったところだ。

 数日前から始まった逃避行もようやく一息つけるところまで来た。協力関係にあった裏社会の人間から聞いていた裏道を使い、何とか密入国に成功し、ようやっといつ追手が来るかという不安感から解放された。


 そうして心に余裕が出て来ると、今度は嫌なことを思い出す。

 

「なぁ、最後に1つ聞いていいか?」


 思い返す。あれはつい先日のことだ。夜逃げの準備を終えて国から逃げ出そうとする直前だった。態々アンリが別れの挨拶をしに来たのだ。


「かまいませんよ」


 そう言って荷物を纏めて馬に乗せながら話しかける。


「何で俺を逃すんだ?」


 前々からあった疑問を尋ねてみる。


「ん〜?それはどう言う意味ですか?」


 予想外の質問だったのだろうか、首を捻って聞き返してくる。


「そのままの意味だ。だっておかしいだろ、態々逃すなんて。捕まって余計な事を喋るかも知れないんだ。不都合な罪は全部俺に被せてしまって、殺して見つからない様に処分した方がずっと安全だし楽だ」


 そう、今日こいつが来た時も真っ先に疑ったのがそれだ。それなのにこいつは何もせず、本当にただ別れの挨拶をしに来ただけだった。


「それに、もし俺にまだ何かをさせたいのなら、それこそ自由にせず何処かに匿っておけばいい」


 そのどちらでも無く態々自由にする。しかも、大金まで持たせて。その理由が分からなかった。


「何だ、そんな事ですか。仲間じゃないですか。殺すなんて、そんな酷いことする筈ないじゃないですか」


 ハッ、思わず鼻で笑ってしまった。仲間なんてこれっぽっちも思ってないくせに、いけしゃあしゃあと。


「酷いですねー。まぁ、真面目な話をすると、1つは私は貴方が捕まるとは思っていないし、余計な事を口走るとも思っていない。だから態々殺す必要はない」


 そう言って指を一本立てる。嫌な信用だ。


「2つ、貴方を自由にするのはその方が面白い結果になりそうだから。最初に言ったじゃないですか、趣味だって。より面白そうな方に、それだけです」


 2本目の指を立てる。


「貴方はきっと背景の名無しのモブでは無い。名前を持った歴としたキャラクターになれる器だ。それがこんなところで燻っているなんて勿体無い」


 訳がわからない。分からないが


「きっと碌な事じゃ無いんだろうなぁ」


 思わずため息が出る。理解出来ない考えだ。


「まぁ良いか。それじゃあな、二度と会わないことを切に願ってるぜ」


 そう言って馬に跨り出発しようとする。


「ええ、ラリーさん、またお会いましょう」


 最初から最後まで人の話を聞かない女だ。


「そう言えば」


 ここで、ふと思ってしまった。余計な好奇心、疑問。直ぐに立ち去ればよかった、余計な事を聞かなければよかった。

 聞いてしまった事を後悔している。


「なぁ、何でこんな事出来るんだ?」


 それは当たり前の疑問。手をかした俺が言えた事では無いのは分かっている。だが、聞かずにはいられなかった。

 これから起こる戦争、これまでに起こした貧困。それ以前から行ってきたであろう非道。それら全部ひっくるめての疑問だった。

 何を思ってこんな事をしているのか?何を感じているのか?

 それを聞きたかった。


 だが


「捕まっていないからです」


 あいつはそう言った。





 意識が現在に戻ってくる。

 思わずまたため息が出る。


 アンリ ジャオにとって他者を虐げる事は、破滅させる事は、思う事など何も無いのだ。

 それが当たり前すぎて、普通すぎて、疑問を感じる事も罪悪感をいだく事も無い。

 だからあいつは俺の言葉を、どうして今も悪事を続けているのか?という、何故、悪事を行うのかという理由では無く、今でも続けられている原因、根拠を聞かれていると思ったのだ。


 ズレている。

 俺とは決定的にズレている。



 近場の街まで行って今日は休もう。思い出しただけで疲れてきた。今日はもう休んで明日からまた遠くを目指そう。

 誰も俺を知らない土地に行こう。そこで新しい人生を生きよう。もう一度新しく商売を始めるのもいいかも知れない。

 だから、本当に思う


「神様お願いです、アンリと二度と会わない事を切に願います」


 生まれて初めて本気で神に祈った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ