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プロローグ


 


「さぁ、選ぶんだ」


 


 暗い部屋の中で剣を持ち震える少年の肩を抱き、語りかける。


 


「いいかい、コレはチャンスなんだ。本来ならあり得ない機会なんだ」


 


 少年の前には2つのグループが存在している。


 1つは気を失い、眠っている1人の幼い少女。


 もう1つは10人程の縛られ身動きができない幼い少年少女の集団。


 


「いいかい、今の世の中力が全てだ。力の無い人間は何も救えない。誰も助けられないんだ。分かるだろう。本来なら彼女達は皆んな死ぬしかない運命なんだ!」


 


 力強く、少年に語りかける。


 


「だが、今は違う! 君が選べば救われる命があるんだ!」


 


 周りにはその様子を遠まきに観ている高貴そうな服装をした大人が何人もいる。手にはアルコールの入ったグラスを持ち、談笑をしながら眺めている様はさながら社交の場にでもいる様だ。いや、事実その通りなのだが。大変趣味のよろしい見世物だことで。その顔には隠しきれない愉悦の色が出ているあたりどう言った人間か分かりやすい。


 


「さぁ、選ぶんだ。血の繋がりは無いが、君の大切な妹か!それとも、何も知らない罪なき無垢な子供達か!」


 


 泣き出し、震えながら剣を持つ手を優しく包み込む。


 


「さぁ、その剣で、君の手で、選ぶんだ」


 


 そうして、答えのわかり切った選択肢を提示する。


 


「さぁ!」


 


 そして、少年は大声をあげながら剣を振り下ろした。


 


 何故私がこの様なことをしているのか?


 その理由を説明するなら始まりは私の子供時代まで遡る。


 


 


 


 


 


 


 私は田舎の小さな男爵家で生まれた。家族は優しく、私の事を愛してくれていた。領地は小さいながらも豊かで領民とも良い関係を築けていた。


 


 赤い髪に赤い目。見目麗しい女の子。


 それが私。名前はアンリ ジャオ。 ジャオ家の次女だ。


 


 そうして、何不自由無くスクスクと育ち、自分で言うのもなんだが容姿に優れ、要領も良く、勉強もでき、将来を期待される、まさに理想的な子供時代だったと思う。


 


 そんな私に転機が訪れたのは10歳の時である。この時、国中で問題になっていた流行病に罹り高熱を出した時である。


 


 私は自分の前世というものを思い出した。


 


 私の前世は今生とは違い男で日本と言う平和な国で生きていた。


 平凡な人間で、結婚こそ出来なかったが、それなりに幸せな人生を送っていたと思う。


 


 そんな、私は趣味でいくつものゲームをプレイしてきたが、その中に『セラム•バーン』というゲームがあった。


 内容は王家の落胤である主人公が腐敗した国を立て直す剣と魔法のシミュレーションRPGだ。


 ゲームとしての完成度が高く、大ヒットとまでいかなかったが良作として人気があった作品だ。


 記憶が戻ったことで私は自分がその『セラム•バーン』の世界に転生した事に気がついた。地名や王家の名前、その他諸々ゲームの知識と同じ物が沢山あったからだ。因みに、ゲームにはジャオ家など出てこない。つまりは実家も私も完全なるモブである。


 


 さて、記憶が蘇り、病から回復した私は今後どうするかと考えた。この知識をいかして何か出来ないかと?


 考えて行く中でふと私はこのゲームに1つ不満があったことを思い出した。


 私はこのゲームの主人公が嫌いだったのだ。いや、嫌いというより、モヤモヤした。行動やセリフに。苦手と言うのが近いか?どうにも好きになれなかったのだ。


 主人公がどんなキャラクターだったかと言うと、正義感が強く、責任感がある青年だ。理不尽から人々を救いたい、自分の血の責務を果たすとして、レジスタンスとなり、私腹を肥やし民を苦しめる現王家と戦うのだ。


 壁にぶち当たった時、挫折した時も、曲がらずに真っ直ぐに立ち直り再び戦いに戻った。


 しかし、そんなキャラクターは探せばいくらでも出てくる。そして私はそう言った他の作品のキャラクターは別に嫌いではなかった。


 何故か彼だけは苦手だったのだ。誰しも意味もなく苦手なものが1つ位はあると思う。コレはもうそう言ったものだと思う。


 


 そして私は結局こう考えた。難易度を引き上げてやろう、と。


 主人公の目的が達成されるのはいい事だ。最終的には革命成功してもらう事に文句はない。というかしてもらわないと国が破滅して周辺国や残った権力者、反政府組織等が入り混じってぐだぐだのドロドロの未来が目に見えている。是非、正統な血筋による新政権を樹立してもらいたい。


 だがその過程はゲームのそれより苦しいものにしてやろう。


 


 私は本質的には、クズの部類だと思う。他人の不幸を純粋に楽しめる性分だ。故に、他人を虐げる事に良心の呵責はない。


 前世は社会的に問題なので押し留めていたがこの世界は王政万歳!搾取は正義!市民の生殺与奪は貴族の権利!おぉ、ビバ選民思想を掲げた世界である。下級とは言え貴族の家に生まれたのだ、ゲーム知識を使い上手く立ち回れば自由に物事を進められるかもしれない。


 


 そうと決まれば、今生の両親には悪いが思いっ切り楽しもう。前世のモヤモヤを晴らす意味でも全力で。


 


 


 ただ最大の問題は、本編開始まで後100年近くある事だろうか。


 


 


 どーしよー?



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