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EXTRA-2.夢のような世界

 ………?


 瞼の向こう側から射す光の刺激に、深く深く夢のようなどこかへと沈んでいた精神が、一気に現実へと引き上げられる。

 薄ぼんやりと開けた視界の先には、見しらぬ…だがもう何年にもわたり毎日眺めていたはずだと記憶にはある、見慣れた天井が目へと映った。


 私の名前は有須川大地。だが同時に、ルイス・アリウスとして暮らしてきた、10年ほどの記憶も同時に存在をしている。自分がこの世界の神の力で転生をし、アリウスとして生を受けて成長してきたと、そういう認識が自身の中でしっかりと確立されていた。

 


「おお……金髪だ……」



 顔を横に向けると、そこには1つの姿見が置かれていた。そこに映る姿はまさしく西洋人のそれで、記憶にある有須川とは異なり、どうやらそれなりに整った容姿であるように見える。だがどことなく元の面影も感じるあたり、うまい具合に調整をしてくれたのであろう。


 見慣れないはずの姿にも違和感はなく、事前にお願いしていた通りに、このアリウスの肉体がある程度成長するまでの間は有栖川としての自意識は奥底で封印されていたようである。

 転生するとはいえ正直、乳幼児からの生活を自意識を持ったままに体験したくはなかったために、事前にお願いをしておいたのだ。


 色々と気を効かせてくれた神に感謝の祈りを捧げようとして…そういえば、どういった神だっただろうかということがさっぱり頭から消えていたことに思いついた。



「そういえば、記憶から消えるとかなんとか言ってたような気がするな。えーっとこの世界の神様って言うと……いや、結構多いからどの神様か分からないな…」



 どうやら、アリウス少年…まぁ、自意識が無かっただけで自分自身ではあるだが、彼はそれなりにまじめに勉強をする少年であったらしい。10年分の記憶をたどってみると、創世の神だの星の女神だの勉学の神だの、複数の宗教にわたってそれなりの神様の名が知られているらしい。


 大き目な宗教に絞ってみても数個はあるようであるし、少なくとも自身の記憶の中には、転生を司るような神様はいないように思う。そして、記憶の中には何らかの神に会って転生してもらったという記憶は確かにあるものの、その姿かたちや声などは、綺麗さっぱりに消えてしまっていた。



「まぁ、どういう理由かよくは分からないが…素性が知れちゃまずいとかそんなところか。間違えた相手に祈るのも罰が当たりそうだし、まぁふんわり感謝の念を覚えとけばいいよな………ってか、とりあえずお楽しみの奴を試さないとだな!」



 今日はこの世界におけるクリスマスのようなもので、そして同時に、アリウスの10歳の誕生日でもある。そして彼の脳裏には、彼のために神から与えられたプレゼントともいえる、とびっきりの贈り物が届けられているという確信があった。



「そうだな…それじゃあまずは…不老不死で!!」



 直後、彼の意識は再度、夢よりも深い深い暗闇の中へと、押し流されていった。



 ------



「頭いてぇ……」



 ベッドの上で意識を失っておよそ1時間。色々と目出度い日であるとはいえ、いい加減に起きて来いと院長によりたたき起こされ、布団から放り投げられるようにして起床をすることとなった。


 今いるここは公園の片隅に設けられたベンチの上で、彼が10年間過ごしてきた孤児院に隣接された場所にある。ちなみに彼は生まれた時からの孤児であり、まだ乳幼児の頃にこの孤児院に預けられ、そのまま成長してきた…ということになっている。


 だが実際はそもそも両親というものは存在しておらず、これも「新しい両親との生活とかちょっと…」とごねた彼の希望に沿うように作られた、設定上の生い立ちである。そのため別に悲壮感のようなものは一切無いし、有栖川のために存在が上書きされた、別人格としてのアリウス少年というものも存在しない。


 そして普段は温厚である院長を怒らせ、このような記念すべき日であるにも関わらず彼をこのような目に合わせた原因は、今も彼の頭の中に浮かんでいるものが原因であった。



「なっっっっが……てかこれ限りなく不可能ってことだろ……」



 今彼の頭の中には、微細な情報が書き込まれた巨大な大樹のような図表が、形あるものであるかのごとく、ハッキリとした輪郭をもって浮かんでいた。

 よくよく見てみるとそれは細かな行動表として記述されていて、無限に広がる樹形図のそうなその木葉にはそれぞれ「薬学科への進学」「マナ工学の習熟」といった、目指すべき指標が記載されていた。


 これが転生させられた彼に授けられた、顔も思い出せない神に言われた…はずである言葉『あなたの望むままに』と銘打たれた、いわゆるチートスキルの効果であった。

 だが、このチートとやらは決して万能なものなどではなく、色々と問題を抱える代物であったらしい。



「これを達成しろとか、どれだけの苦行だよ…てか上の方、明らかにおかしいし…。『賢者の石の創造』『肉体の機械化』『真龍の核の入手』とか書いてあるし…真龍とかいるのかよこの世界…」



 あくまで精神の中にある図表のため物理的に見上げているわけではないのだが、首が痛くなると幻視されるほどに表の上部を見上げれば、そこには明らかにこの世界の常識と照らし合わせても、異常としか言えないような項目が並んでいる。


 ちなみにだが、この世界には「真龍」と呼ばれるような存在は実在してしない。なのに何故そのような項目があるかと言えば、その前段階として『異世界へのゲートを開く』という項目があることを見逃しているだけである。



「予定経過時間は、358年…はいなーし、不老不死は無しでーす!」



 そう、この目標はやめておこうと心に決めると、頭の中にクッキリと浮かんでいた巨大な樹形図も、同時に幻であったかのようにふっと消えていく。同時にズキズキと続いていた頭の痛みも、まるで頭の中に出来た血栓が溶けたかのごとく、ふっと解けるように消えていった。



「うわ、こわ…これまさか物理的に脳に負担とかかかってないよな…?」



 授けられたチートスキルの危険性にうすら寒いものを覚え、あまり過度なものはやめようと、心に決めた。


 --------



 現在時刻はそろそろ昼になる頃だろうか。


 大寝坊…実際には膨大すぎる情報量を脳に叩き込まれたことで気絶をしていただけなのだが…起床してからおおよそ3時間ほどの間、あれこれと能力を試したことで、色々な事を把握することが出来た。

 

 ちなみに彼は今ベンチの上で、プレゼントとして渡された図鑑を読んでいるふりをしながら、頭の中でひたすらにスキルを試している。常日頃から内向的な少年であり、独り言を言いながら本を読むというのも日常的に行っていた行為であるため、特に周りから不審に思われていることもない。


 …そんなに長時間公園の片隅に居ながらも誰からも遊びに誘われていないことについては、そっとしておいて欲しい。これへ別に疎ましく思われているからとかではなく、前世からの彼の性格が完全にボッチ寄りのそれだからなだけである。


 友人に関しては…いなくもないはずだ、たぶん。



「確かにチートなのは間違いないけど…ちゃんと目標を決めていかないと、無駄撃ちになりそうだなぁこれ。」



 彼に授けられたチートスキルは、目標とした事柄に対しての道しるべを頭の中に提示してくれるという能力であった。ただし、あくまで過程を教えてくれるというだけであり、その達成のためには彼自身がそれに応じた相応の努力をする必要があり、そのまま答えを教えてくれるような代物ではないらしい。


 試しに、ちょうど目の前に広がっていた図鑑に載っていた「自動車」を手に入れることを目標に入れてみたところ、大雑把に言えば『勉強をする』『良い企業に就職する』『お金を貯めて購入する』という、有体に言えばまったくもって当然である過程が頭の中に浮かんでいた。

 目標をあれこれ切り替えてみてもそれは変わらず、早い話が『目標に向かって努力しろ』と言われているに等しいようである。


 そして当然、何の因果か転生をすることが出来たとはいえ、本来人生というものは一度きりの物である。人の命に限りがある以上、時間は有効に活用せねば叶うもの叶わなくなってしまう。


 また、大抵の事柄であればまぁそうなるよなという過程となるものの、例えば「大企業の社長になる」「スーパースターになる」といった少し難しめの目標を立ててみたところ、図表はその目標の困難さに応じて大きくなり、中には自身の知識にないような単語も混ざるようになっていた。


 そのため現在は、あれこれと変な目標を立ててみては知らない単語を読み取ることで、この世界のことを知る事が目的へと置き換わってしまっている。ある意味、図式としては新しい図鑑を夢中に読む現実の彼の姿そのままのことを楽しんでいた。



「へぇ…魔法は一応なくもないんだな…どうも趣味の領域っぽいけど。錬金術に、超能力に、異世界も一応無くもないと…結構ファンタジーなものもあるんだな、この世界。どうせ目指すなら、面白そうなのがいいよなぁ…」



 そうしてあれやこれやと頭に思い浮かべては時々頭痛を覚えつつも、色々な知らない知識に知的好奇心を満たしていたところ、ふと一つの単語が彼の目へと飛び込んできた。



「んん…ゴーレム?へぇ、しかも意外と簡単に作れるんだな。」



 なんとなく目についたそれは、彼のかつての世界においてもそれなりにメジャーである、ファンタジーのお約束ともいえる存在であった。

 しかもどうやら作るだけであれば簡単な代物であるらしく、まだ学校に通う前である彼であっても、ちょっとした小遣いを稼ぐことさえ出来れば、作成することが叶うらしい。実際、頭の中に浮かぶ工程表は、10工程も存在しない小さなものである。



「へぇ…面白そうだな。まだ十分時間はあるわけだし、まずはこれで本当にその通りに進められるか試してみるか。なんなら、あれこれ改造しても面白そ…」



 そう、新しいおもちゃでどう遊ぶかと童心を膨らませていた彼に、天より雷が落ちたかの如く天啓が舞い降りた。…いや、実際には神はこのアイデアに関しては一切介入をしていないのであるが、彼にとってはそうとしか考えられなかったと、後に述べている。



「…いや、まさかいけるのか、これ?」



 この時、彼の頭によぎったのは前世の最期の時…彼が完成させることの叶わなかった、最愛の偶像。前世の唯一ともいえる心残りであるアレに、今目の前に提示された、ゴーレムという新たな可能性。その二つを、組み合わせることが出来れば…。


 そうして、二つを組み合わせたものを一言で表すとすれば…それはきっと『メイドロボ』と呼ばれるものになるであろう。彼は、新たな目標を頭の中に設定する。



「……結構デカいが…予定工数は…15年。」



 この日、彼がこの世界を生きる上での目標が…そして、因果の一因として、この世界の在り方が決定された。

 1年の中で最も記念すべき祝日、《女神生誕祭》での一幕である。



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【あなたの望むままに】


 転生に伴い、有栖川改めアリウスに授けられた、チートスキル。

 彼が目指した目標への、最も効率的となる道筋を頭に思い浮かべてくれる。


 ただしその経路は決して楽なものではなく、達成のためには常人が必要なそれと同じだけの本人の努力が求められるために、最短ではあっても近道とはならない。また、あくまで達成をすればという道筋であるために、努力を怠れば当然目標は達成することが出来ない。

 ただ、努力が決して実るとは限らないという現実を顧みれば、確実な道筋を示してくれるそれは間違いなく「チート」である。


 また、思い浮かべた要望に関連した世界の事柄を提示してくれるという、副次的な効果も存在している。そのため、この表に記載された単語だけでもとてつもない価値があるのだが、アリウスはそれに気づいていないし、仮にそれを他人に伝えたとしても頭の中にしかない神の知識を理解してもらうのは限りなく難しい。


 ちなみに、この世界にはこのような「スキル」などという非現実的な概念は存在してしない。つまりは、彼の頭に浮かんだ道しるべは、彼の願いに応じて適時何者かが提示をしている。


 彼はその歪な事実に気づかない。

 あるいはそのように、思考誘導されているのかもしれない。

 1年以上空いてしまい、本当に申し訳ない…2章までがだいぶカツカツの更新だったので、燃え尽きちゃったみたいです


 ちょっとリハビリがてら、過去話から再開になります。

 更新ペースを守って…というのは精神をすり減らすようなため、今後は出来た分から随時更新になると思います。

 1章のリメイクは…気が向いたらということで…今見ると2章も結構気になる上に、たぶん一生終わらなくなるなぁと。


 一応毎日作業する習慣は復活させるつもりなので、完全に止まることはない…といいなぁ…。


 三章完結が、今年の目標になります。

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