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1-21.失われた果実

世界に関する考察回(後編)です。

説明文ばかりで申し訳ありません。一応、オチのようなものもありますので、お付き合いください…。

『それは、意図的に情報が削られているということですか?』



『ああ、恐らくそうだと思う。いくつかの本を読み比べてみたのだが、それぞれの本に書かれた歴史は表現に違いがあるものの、概ね起こった流れについては共通をしていた。かつて高度な古代文明があった。何らかの災害でそれが滅びた。現在の魔物のはびこる世界になった。この流れに関しては、大体共通をしている。』



 どの書物も、似たような流れで今の世界があるという文脈は共通をしている。つまり、情報にある程度の一貫性はあるということだ。



『だが、かつての文明がどのようなものだったかの記述には一貫性が無く、ひどいものでは、古代文明では島が空を飛んでいた、なんてものも存在していた。そして何より、本来の文明に合致する記述が、一つも存在していない。10冊以上の書籍があったにも関わらず、1つもだ。』


『それは…どのような文明であったかの記述を、意図的に避けたということですね。』


『ああ。ちなみに研究所だった場所については、かつて大きな災いがあり、呪いが満ちているために禁足地となった、とのことだ。まぁ、それに関してはあの爆心地はかなりのマナ汚染がされていたから、近づかないようにということでそう残したのだろう。だが、この町や周辺地域の名前は残っているのに、研究所の名前だけはどこにも記載されていなかった。歴史に残るほどの事故があった場所だというのに、そんなことはありえないだろう。』



 誰が、何の意図で情報を削除したのかは、今ある情報だけではわからない。だが少なくとも、それが個人で行えるような規模の工作ではないということだけは、うかがい知ることができる。



『そうなると…研究所や国、もしくはそれ以上のものが協力をして、何らかの情報を隠そうとしたのかもしれませんね。』


『ああ。だが、そこまで大規模に情報を隠蔽した理由は何だ?仮にマナリアクターが大規模な爆発を起こしたとしても、精々周辺地域に一時的な影響が出る程度のはずだ。それが現在の世界には高濃度なマナが満ちていて、人為的な植物や魔物、それにどうやら魔人とやらも居るらしい。こんなもの、一度のやらかしで発生するようなものではないはずだ。』


『一度ではなく複数回…それも、歴史を完全に塗り替えるほどに長期間に渡って、ということでしょうか。』


『恐らくそうだが…そんな長期の計画、仮に実行しようと思うと、数世代にも渡っての計画のはずだ。何らかの組織が行ったのは当然としても、そんなことが人間に可能なのだろうか?それこそ…魔人とやらの仕業、と考えるのが自然かもしれないな。とりあえず、私の調査結果は以上だ。』



 お互いに報告を終えて、一息をつく。結局のところ、答えは得られず謎は募るばかりではあるが…有用な情報は色々と得られただろう。

 ちなみに、シフォンケーキは先ほど1組前の客のところへ配膳されたことを確認している。そのため、もうすぐ来るはずだ。



『今後の動きとしてはどのようにしますか?』


『とりあえず、ギルド長の許可が必要という本については目を通しておきたい。とはいえ…まぁ正直なところ、別に急ぐものでもない。別に、誰かの陰謀があろうがなかろうが、こちらに実害がないのであれば別に今のままでも構いはしないしな。』



 アリウスとしては、思うところはあるものの、別に今の世界自体に不満を抱いているわけではない。この体をどうにかして、研究を完成させる。アリウスにとってはそれだけが重要なのだ。

 とはいえ、放っておいてこちらに巻き添えがあればたまったものではないため、完全に放置をするわけにもいかない。ゆえに、可能な限り、情報は集め続けなければならない。


 面倒なことになったものだ。そう、改めて認識する。



 そうこう考えているうちに、店員がこちらの席に向かってくるのが視界に入った。マナ通信での会話をしていたせいか、随分と長い間待たされたような気がする。

 だが、どうしたことだろう、その手には配膳のための盆を持っておらず、なにやら申し訳なさそうな表情も見て取れる。



 …………まさか…………



 アリスは、血液など流れていないはずのその頭から、サッと血の気が引いていくような錯覚を覚えた。

 手足が震え、普段であれば精密に動かすことが可能な、体のコントロールが効いていない。



 そんな…うそだろう?

 こんなことがあってもいいのか?

 神でも魔人でもいい、嘘だと言ってくれ。

 たしかアイリス教だったか、かつてそんな宗教があったはずだ。

 どういう教義かは特に知らないが、神ならいいだろう。私に、救いを………!



「その…誠に申し訳ありません。季節のフルーツが切れてしまいまして…。プレーンのシフォンケーキならお出しできるのですが、いかがいたしますか?」



-----------------



 翌日、ギルド長との面接を行った二人は、改めてギルドの調査員として働いていくことが決まった。

 はやり今回の依頼はテストの意味合いが強かったらしく、結果によっては別の仕事を任せる事も考えていたらしい。



それはそれとして、シフォンケーキは確かにおいしかった。

残念ながら、翌日から季節のシフォンケーキはフルーツが変更になりました。

ですが約1年後、フルーツの切り替わりと同時に、きちんとリベンジを果たしています。

とてもおいしかったそうです。



いろいろと世界について情報が出始めました。

とはいえ、なんかきな臭いなぁということしかまだ把握できていません。

この情報を探すことが、アリウスたちの物語の目標の一つになります。



アイリス教は、かつての世界でメジャーだった宗教です。

アイリスはその主神となる女神の名前で、アリウスやアリスという名前も、元をたどればその名をあやかったものになります。

……敗因は、願う女神を間違えたことです。



次の話は、少し時間が飛びます。

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