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援軍

「アレン様、すぐに治します!」


「アレンしっかりして!」



 ケルベロスを倒した俺は本当に力を使い切ったようで後ろの木に背を預けたまま座り込むとそのまま立てなくなってしまった。疲労感と倦怠感からすぐにでも意識を手放してしまいそうになるがこちらへと走って来るアリアとルーナ王女を見てなんとか意識を繋ぎ止める。



 ケルベロスを倒した所で他の魔物が居なくなる訳ではない。今俺が意識を失えば二人を守る手段がなくなってしまう。



「ありがとう、ございます」



 アリアの神聖魔法の温かさに触れたことで思わずお礼を言ってしまう。そう、今の俺は酷く心が寒かった。得体の知れない喪失感は未だに俺を蝕んでいる。



「お礼を言うのは私たちの方です。この御恩は必ず返させてもらいます」


「私も、絶対に恩返しするから」



 瞳に涙を浮かべながら俺の手をぎゅっと握る二人を見ながらも俺の意識は自分の中にある違和感に目を向けていた。ケルベロスの攻撃と魂を魔力へと変換した代償で俺の体はボロボロになっている。内臓にもそれなりにダメージを負い吐血もしている。なのに、口から血の味が一切しないのだ。



 理由は理解している。竜神クロノス様が言っていたように魂を魔力へと変換した代償だ。感覚、記憶、感情、寿命、あの一撃を放つのに俺はどれだけのものを失ったのだろうか。後悔はないが森を抜けた後の楽しみが一つ減ってしまった。



「ねぇ、アレン。これからどうするの?」



 内心落ち込んでいた俺を現実に引き戻したのはルーナ王女の言葉だった。不安そうに俺の顔を覗き込んで来る彼女からはもう自分のことは置いて行ってという言葉は出て来ない。どちらかと言えば置いて行かれるのは俺の方だ。



「そうですね。見て分かる通り俺はもう限界です。森を抜けるまではあと少しなのでお二人だけでこの森を抜けてもらうのも一つの手ではありますがきっとそれは出来ないでしょう」


「もちろんです!」


「そんなことをするくらいだったらここで死ぬわ」



 物理的にも、二人でこの先を活かせて無事で居られる保証がない。だが、何よりも精神的に俺を見捨てて二人だけで森を抜けることはこの二人には出来ない。そうなると、取れる手段は自然と一つに絞られる。



「ならば俺たちが今取れる手段はここで助けが来るのを待ちつつ回復に専念することです。幸い俺の回復力は並以上なので一日もあれば歩けるようにはなります」



 そこまで当てにしている訳ではないがルーナ王女とアリアがパーティー会場から消えたことはかなりの大事になっている筈だ。犯人が名乗り出なかった場合は冥府の森に辿り着くのにあの複雑な転移魔法陣を解析しないといけない為時間が掛かるが助けが来る可能性だってゼロではない。



 確か前の世界では誘拐された可能性が高いと結論付けられていたがそうなれば尚更聖法国が黙ってはいない。城中を探索すればあの部屋に辿り着く可能性だって相当高い筈だ。既に部屋から魔法陣などの痕跡が消されていた場合は自力で帰るしかなくなるがそうなれば頑張るしかない。



「魔物は、襲って来ると思いますか?」


「残念なことに今の俺は魔力が完全になくなっていて簡易拠点を作れません。だから、確実に来ると思います」


「ッ!」



 今の俺には魔力が殆ど残っていない。簡易拠点が作れない以上はルーナ王女の持つ首飾りの魔力に釣られて魔物が来るのは確実だろう。



「まぁ、いざとなれば奥の手を使いますから安心してください」


「奥の手ですか?」


「はい、とっておきの奥の手です」



 少しでも安心させるように俺は二人に笑い掛ける。別に嘘は言っていない。もし魔物が襲って来てもどうにかするだけの奥の手は確かにあるのだ。



『また、魂を使うつもりか?』


『それ以外に方法はありませんから』


『其方は本当に無茶が好きだな』


『返す言葉もありません』



 二人には理解出来なくても竜神クロノス様にはすぐに見抜かれてしまった。竜神クロノス様の言う通り俺の考えている奥の手は再び魂を魔力へと変換すると言うものだった。



 既に味覚がなくなり、記憶も特定は出来ていないがモヤの掛かっている部分があるように感じられる。感情だって今は気付いていないだけで無くしてるかも知れない。その上これ以上魂を磨耗すれば取り返しが付かなくなることだって十分に考えられる。



 だが、現状を打開する術がこれしかない以上は仕方がない。そう一人で納得していたがどうやらそれは杞憂だったらしい。



「アリア様、ルーナ王女、どうやら魔物よりも先に助けが来てくれたみたいです」


「っ、あれは」


「竜人族」



 ドラゴンレーダーは使えないが特徴的な髪色が俺にその人物が誰かを教えてくれる。ずっと森の緑を見ていたせいか彼女の赤い髪が余計に目に残る。



「随分とボロボロだなアレン」


「今すぐ手当をいたします」


「アレン殿は任せました。私は周囲の警戒を」



 地面に降り俺と目を合わせた瞬間に不敵な笑みを浮かべたリリーはその後すぐにケルベロスの死体へと目を向ける。そんなリリーを置いてメイド姿のフェルンさんが俺の方へと駆け寄り包帯などで応急手当てをしてくれる。



「随分と無茶をされたのですね」


「相手が相手でしたから。それで、後のことはお任せしても?」


「カイザー様も居るので問題ありません。アレン様はゆっくりと休んでください」


「感謝します」



 最後になんとかお礼を告げて俺は意識を手放したのだった。

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