表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/71

増幅する魔物

「ここでお昼にしましょう。幸い魔物の肉には困りませんから」



 魔物との戦闘を繰り返し丁度良さそうな場所を見つけた俺はルーナ王女とアリアに声を掛ける。この場所で休んだら魔物に囲まれることは目に見えているが二人の体力や精神面を考えてもここで一息入れるべきだ。



「アレン様、本当にお怪我はありませんか?ひとまず返り血を消す為に浄化の魔法を掛けさせていただきます」


「アレン、今すぐに水を出すから魔力で容器を作って」


「御二人ともありがとうございます。今は簡易拠点を展開しているのでゆっくりで構いませんよ」



 そう言いながら魔力でコップを三個作った俺は二人にもコップを渡しながらルーナ王女が出してくれた水に口を付ける。



 体力的にも問題はないし精神的にも健康そのもの。魔力も温存できており今の俺のコンディションはかなり良い。だが、それをこの二人に伝える術を俺は持っていない。



 心配そうに揺れる瞳にはどれだけの言葉を尽くしても強がりとして受け止められてしまうだろう。不幸中の幸いか俺の魔力に触れる事でアリアは少し落ち着きを取り戻すがもし俺が大怪我を負えば話は変わって来る。



 返り血の浄化が終わったタイミングで魔力で作った椅子から立ちあがろうとした俺だったがその行動はルーナ王女に腕を掴まれた事で阻害されてしまう。



「ルーナ王女?」


「まだ休んだ方が良いわ。あんなに動いたんだもの。水ももっと飲んで」


「では、お言葉に甘えさせて頂きます」



 体が神様に近づいているので飲食は最低限で問題ありませんとは説明出来る訳もなく俺は素直にルーナ王女へとコップを差し出す。時間が経てば経つほど魔物がやって来るのは変わらないが急ぎ過ぎても二人が休息を取れない。



 こんなこと騎士時代には経験しなかったことだ。騎士団に所属する者は皆プロであり、何より日頃から鍛えていたので決められた時間を守り少しの無茶も受け入れられた。けど、今少しでも無茶をすれば俺はともかくとしてまだ幼い二人の体は耐えきれない。



「アレン様、肩を揉みましょうか?」


「流石にそれは恐れ多いので遠慮させてもらいます。では、火起こしもあるので俺はそろそろ昼食の準備に入らせてもらいますので、御二人はしっかりと休んで下さい」



 アリアの提案に恐れ多いと断りを入れてから俺は昼食の準備を始める。本当なら調味料を使って味を付けたいのだがいつ魔物が襲って来るのか分からない今の状況では薬草や木の実の採取も難しい。



 幸い、魔物の肉には困らないので火を起こして削った気に一口サイズにカットした肉を刺し焼くだけの簡単な串焼きはいくらでも作れる。二人はまだ体も小さくそこまでの量は食べられないので必要な魔物の肉も一匹分も必要ない。



「昼食が出来たので御二人で食べていてください」



 魔物の肉の串焼きを完成させてから二人を呼びそのまま簡易拠点の外へと向かった俺の袖をアリアに捕まれる。そして、すぐ後にはルーナ王女にも逆側の袖を掴まれてしまう。



「あの、アレン様は食べないのですか?」


「一番働いてるのはアレンなんだから休んだ方が良いわ」



 確かに二人が休んでいる中で俺だけ仕事をしているのは二人の精神的にもあまり良いことではない。俺も出来ることなら二人と他愛もない雑談をして少しでも気を休ませてあげたい。だが、そう出来ない理由が簡易拠点の外側にある。



「俺は外の魔物の間引きをしてきます。流石にこれ以上集まられると処理の難易度が跳ね上がりますから」



 そう言って俺が指を指した方向には鋭い目付きでこちらを睨むファイターコングという魔物が居た。それだけではない、簡易拠点を囲むように合計で十を超える魔物がこちらに睨みを効かせている。



 一体一体ならそこまで脅威ではないがこれ以上数が増えれば余計な体力や魔力の消費に繋がりかねない。



「俺のことは気にせずに御二人はゆっくりと休んでいて下さい」



 そんなことをこの二人が出来ないことは理解している。それでも、優しく声を掛ける以外に今の俺に出来ることはない。



「はい、頑張ってください。アレン様」


「ごめんなさい、アレン」


「ルーナ王女、こういう時はありがとうの方が相手は喜びます。次からはそう言ってもらえると嬉しいです」



 それだけ言って俺は簡易拠点の魔力障壁へと近づき外へ出る為に人が一人通れるくらいの穴を開ける。その瞬間、狙い澄ましたかのように突撃して来たファイターコングをドラゴンブーストの乗った蹴りで吹き飛ばし簡易拠点の穴を塞ぐ。



「さて、カッコつけさせてもらいますか。ドラゴンクロー」



 魔物の数が多いのは厄介だが、十を超える程度なら未来視の魔眼を使うまでもなくドラゴンレーダーだけで凌ぎ切ることが出来る。けど、二十を超えて来ると脳の処理能力が追い付かなくなる。自分の未熟を恥じるばかりだが今は自分に出来ることをやるしかない。



『敵の動きを先読みし常に最適な体の動かし方を模索しろ。これも修行の一環だと思え』


『はい!』



 今も尚、俺のことを心配してくれている二人には悪いが俺は今の状況が嫌ではない。誰かを守る為にこれまで培って来た力を行使する。不謹慎かもしれないが、前の世界で決して叶うことのなかったこの状況に何処か喜んでいる自分がいる。



 それから魔物の死体を積み上げること一時間、魔物の増援の気配を感じなくなった俺は二人の元へと戻ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ