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捨て去った剣

「アレンが剣を持つ姿は久しぶりに見るけど前よりも大分マシになってるな」



 僕は剣を持ってソードと向かい合っているアレンの姿を見てひどく違和感を覚えてしまう。普段から見慣れているソードの剣の構えは相変わらず隙が少ないと思うだけだけど、アレンの構えは明らかに前までの構えとは異なっていた。



 まだアレンが剣を捨てていなかった頃は隙が多い構えで簡単に勝つことが出来た。だから、激励を送りつつもブランクのことを踏まえると流石に魔法なしではソードに軍配が上がると思っていた。



 けど、今のアレンの構えを見て僕はその認識を改める。あえて一箇所に隙を作ることで他をカバーするような剣に、いつでも動き出せる様にしている重心、なによりも油断や慢心とは別の自信から来る余裕が今のアレンからは感じれた。



「ねぇ、ユリウス。アレンって何者なの?」


「何者って?僕の自慢の弟だよ」


「そうじゃない、普段からどんな訓練をしてるの?」


「さぁ、実は僕もよく知らないんだ」



 アレンに興味を持ってくれたのかマリンが話し掛けて来てくれるけど残念なことに僕はマリンが満足する内容の答えを持ち合わせてはいなかった。



「仲悪いの?」


「いや、仲は良好だよ。ただ、一方的に負い目は感じててね」


「負い目?」


「双子なのに僕は全てを持っていてアレンは魔力量以外何も持ってなかったから」



 五歳の頃までは凄く仲が良かった僕とアレンだったけどあの日以降その関係性は崩れ始めた。魔法も剣術も勉学も自分で言うのもなんだけどあらゆる才能を持っている僕と無属性以外の魔法が使えず剣術の才能がなく不器用で凡才だったアレン。そんな状況に僕は一方的に負い目を感じていた。



「アレンには魔法の才能も剣の才能もなかったからね。僕が全て奪ってしまったみたいで一方的に負い目を感じてたんだ」



 それでも腐ることなく努力を続けたアレンには僕も良い意味で刺激を受けた。けど、アレンの努力を実らない努力だと心の何処かで思っていた僕はアレンの練習風景を見るのが辛くなって逃げ出してしまった。



「そんな負い目からアレンの練習はあまり見れてなかったから普段からどんな練習をしてるのかはあまり知らないんだ。だから、気になるならアレンに直接聞いてみると良いよ」


「分かった、そうする」



 それだけ言ってマリンはアレンとソードの模擬戦の方に集中し始めた。さっきの戦いを見ればアレンがソード以上に動けることもソードの剣を見切っていることも分かる。後の問題はアレンがどれだけ剣術を扱えるかになるけど構えを見る限りそれも問題ない気はする。



「それじゃあ、試合始め!」



 イーブンさんの試合開始の合図を受けて初めに動いたのはソードだった。普段に比べて些か直線的に見える動きだけど気合は十分。踏み込みも剣速も問題ない一撃だった。けど、そんなソードの一撃をアレンは何でもないかの様に華麗に受け流して見せた。



「うそ、」



 隣からマリンがそう呟いたのが聞こえたけど僕も気持ちは同じだった。アレンは才能がなく強くなれないからと剣を捨てた。それなのにその剣でソードと互角以上に渡り合っている。



 次第に乱雑になっていくソードの剣撃にも焦ることなく冷静に対応して普段身に纏っている魔力障壁を抜きにしてもダメージ一つ負っていない。それに、ソードの剣を一切怖がってない。



 普通、アレンの様な絶対防御とも呼べる魔力障壁を常時展開していたらそれに頼り切った受けを中心とした動きになったり、逆に魔力障壁がない状態だと極度に相手の攻撃を怖がって回避動作が大きくなったりするものなのにアレンはソードの攻撃を全て冷静に捌いて回避も次の攻撃に繋がる様に必要最低限の動きで紙一重で回避している。



「ソードよりも剣術に長けてる。ユリウスはこれを知ってたの?」


「いや、知らなかったよ。僕の見ていない時に自己鍛錬でもしてたのかな?」



 アレンは異常と言って良いほどに自己鍛錬に励んでいる。マナーや勉学も僕より先に完璧な形で納めて文句を言わせずに自己鍛錬をしているのだから僕が知らない所で剣術の修行をしていてもおかしくない。けど、それでもソードを圧倒するほどとは予想していなかった。



 剣術だけじゃない、日頃の修行の成果か鍔迫り合いになってもソードは力負けしているし、体力もアレンの方が遥かに上回っている。



「自己鍛錬、だったらアレンの剣は独学?」


「どうだろう?屋敷に剣術の本はあるから完全な独学じゃないと思う。けど、誰かに師事してる訳じゃないから独学って言われたら否定は出来ない。少なくとも、無属性魔法については独学だと思う」


「そう、」



 本人は自分のことを凡才と言っているし僕もずっと一緒に居たからアレンが凡才だということは知っている。それでも、改めてアレンのことを考えてみると僕と模擬戦をした少し前からアレンは天才になりつつあった。何がアレンをそこまで強くしたのか、それを知らない自分が凄く不甲斐ない。



 ただ、同じ剣を振るものとしてアレンの判断が正しいと分かってしまう自分もいる。



「マリンから見てアレンの剣はどう映る?」


「ソードを圧倒してる。なんであれを捨てたのか理解出来ない。ユリウスは分かるの?」


「うん、分かるよ。少なくとも僕とソード、イーブンさんは分かると思う」



 剣術に対して関わりのある者なら理解出来るアレンの剣の欠点。それは将来性がないことだ。ソードは押されてるし技術で負けてるけどまだまだ成長の余地がある。それに比べてアレンの剣は恐らく今の地点が限界値に近い。



「何で?」


「アレンの剣はあれ以上伸びることは難しい。もしアレンが剣の道を選んでも数年後にソードに抜かされてそれ以降は埋もれると思う」


「だから捨てたんだ」



 恐らくは同年代の中で最も優れた剣術だろうに、それを捨ててまで戦闘スタイルを切り替えアレンが掴み取ろうとしているもの。それが何なのか僕には理解できなかった。

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