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七冊目 どちらかが彼女を殺した。 その一

「というわけなんだけど」


 ミキミキからの言葉を私は黙って聞いていた。表情変えず。真顔で。

 こういうことらしい。

 数日前、ミキミキは私の話を聞いた後に、廊下でたまたまもっちさんとすれ違ったらしい。

 お互い一人で話をするにはちょうど良かったらしく、どうして私のことを知っているのか、知り合いなのかと尋ねたらしい。

 もっちさんは、むしろ何故覚えていないのか、とミキミキを責めるような口振りで話したという。

 一緒に遊んだではないかと。

 舞さん、もっちさん、夢々ちゃん、双子姉妹、それと、後からやって来た私とで。

 最後に、私のカボチャ――ジャック・オー・ランタンをミキミキが壊したではないか、と。

「亜以? 亜以? ねえ、わたしは許してくれるよね? ね? ね?」

「まあ、ミキからは大したことされてないし」

 姉の話を聞き終わり、妹は保身に走った。

 まあ、実際大したことはされていない。最後にいらない物を押し付けられただけだ。ハロウィンというイベントを考慮すれば、彼女は目的を果たしてくれたと言えなくもない。ぐちゃぐちゃだったし、今でも舌の上に広がる苦味と共にあの日の記憶が蘇って私は嫌な気持ちになるが。おかげで今でも私は黒糖が苦手だ。

 それに。

「誘ってくれたのはミキだからね。アレがなければ遊んでもいなかった」

 実際、最初は助けられたのだ。

 許す許さない以前に、ミキには感謝するのが筋かもしれない。

「あ、あはは? 遊んでなければ、お姉ちゃんから亜以はカボチャも壊されることもなかったんだけどねー。ねー? 酷いねーほんとにー。こんな姉でごめんねー?」

「それは、そうだね」

「じゃあ、やっとく? やっとく? 罪状ぶら下げての市中引き回しの刑。それとも校内引き回しくらいにしておく? ワンチャン池に沈めとく?」

 妹が頭をかいて楽しそうに、快活に笑った。

 ひっどい妹だなあ……何がワンチャンなんだろう……私はなんだか気になって姉を見た。

 姉は、ぽかん、

 と、絶望的な表情をしていた。まるで信じていた者に裏切られたとでもいうような表情。

 一緒に謝ってくれるとでも思っていたのか、あるいは庇ってくれるとでも思い込んでいたのか。私はひとりっ子だからそのへんわからないけれど、兄弟姉妹は助け合って生きていくって私の認識は、どうやら間違っていたらしい。鏡写しみたいな双子でも、互いが互いを見誤ることはあるんだ。


 しかし、そこは似た者姉妹の双子。

 裏切り、掌返し、泥のなすりつけ合い――やることは変わらないのだった。




 俯き、しばらくすると、姉の肩が震え始めた。

 可怪しそうに、くつくつと震え始めた。

「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」

 不気味に嗤った。



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