四冊目 池袋ウエストゲートパーク その九
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その後。
私は雨の中、元来た山道を大泣きしながら帰った。
天を見上げ、声を枯らすくらいに泣き叫びながら。雨に濡れて。
お母さんとの大切な思い出を壊された。
自転車を押しながら、でも、けれど、と思う。
私が勝手に山を下りたからいけなかったのかな。大人しくしていれば。でもあの子が悪い。みんなやなやつだった。いいや、みんなじゃないかもしれない。いい人もいたかもしれない。友だちになれなかった。なりたかった。あの二人は特にやなやつだった。あの背の高いやつもそうだ。だったらいい。あんなのばかりいるならもういいもん。
ああ。カボチャ。ジャック・オー・ランタン。怖かった。楽しかった。またやりたい。遊びたい。でももういやだ。なんでこうなったのだろう。私がいけなかったのかな。お母さん。
自分を責めながら、ぐちゃぐちゃな気持ちで山を登った。
途中、車で、仕事から帰ってきたお母さんに私は拾われた。自転車と一緒に。
何事かと思ったらしい。家にいるはずの私が、山道を自転車押しながら、大泣きして山道を登っているんだもん。そりゃそうだ。
私は車の中でひっくひっく言いながら事情をお母さんに話した。友だちと遊んでみたかったこと。ハロウィンをやれば仲良くなれると思ったこと。だからカボチャを持って行ったこと。みんなで遊んだこと。だけどカボチャを壊してしまったこと。壊されてしまったこと。
戦争ごっこのこと。
お母さんは私を慰めてくれた。寂しくさせてごめんね、と。
ただ、こうも言われた。
小さい子だけで花火なんて二度とやっちゃいけないと。勝手に空き家に入るのもダメだと。もうすぐ小学校に上がるんだから、そうすればたくさんのお友だちが出来るからと。それまではお母さんもなるべく日曜には仕事いれないようにするからと。それまでは我慢しててと。カボチャを壊したことはもういいから。また二人で一緒に作ればいいじゃないと。
私はその言葉をすんすん泣きながら聞いた。
お母さんと一緒にお風呂に入りながら聞いた。
そして、私は雨で冷えた身体を温めながら思った。
あいつ。
また会ったら今度は絶対に私が泣かしてやる。
あのミイラ――あいつだけは絶対に許さない。




