城からの脱出
薄暗く、二人が並んでギリギリ通れるくらいの道をフーガ達は進んでいく。
「このまま、誰もいないといいんだが」
「……いない、よね?」
「分からない。だが、いてもなんとかするよ」
「フーガ……」
コツコツと靴と地面が擦れる音が響く。
この空間と緊張感の中では、より不気味さを醸し出していた。
数分とも数時間とも感じる時間、フーガ達は抜け道を歩いていた。
「……誰とも出会わなかったな」
「良かった……これで……」
抜け道の出口付近で二人は話していた。
様子を伺って外に出る。
兵士はいない。
「……まだ、城の中を探してる……のか?」
フーガはぼそりと呟く。
流石にここまで出会わないのはおかしい。
作戦が上手くいっているだけ?
実は既に罠に嵌められている?
間違っていないだろうか。このまま進んでも良いのだろうか。
フーガは不安でいっぱいだった。思考がごちゃごちゃとまとまりなく、色んな可能性が頭をよぎる。
「……フーガ? 大丈夫?」
「あ、ああ」
不安を感じたまま、フーガはサーシャへ返事を返した。
サーシャに心配をかけてはいけない。
大丈夫だ。
きっと、作戦は成功する。
フーガは自分に言い聞かせる。確証がなくともたとえ罠だとしても、戻るなんて道はない。
フーガはサーシャの青い瞳を見た。瞳には不安そうな色が滲んでいた。
「行こう。大丈夫だよ、サーシャ」
「うん。……ありがとうフーガ」
人気のない街の裏路地を二人は駆けていく。
数人、人とすれ違ったがフーガ達を気にかけるものはいなかった。
周りは静かで、空は薄らと白んでいた。
夜が明ける。
フーガとサーシャはひたすら国境を抜けるために、街の端へ走っていた。
どうか、どうかこのまま無事に逃げられますように。
二人はそう心で祈りながら、不安も心配も相手には悟られないように、平気なフリをして進んでいった。