決行当日
決行当日、フーガは作戦通りの時間、作戦通りの手順で動き出した。
警備員が最も少ない時間帯、警備が緩む時間を狙って侵入を図る。時刻は午前二時。
これから二時間以内にサーシャの元へ行き、できるだけ短時間で脱出する。
もちろん、警備の者が侵入に気がつかないなどということはないだろう。早くて数分、長くても数十分で侵入には気がつかれる。
だから警備が緩くなっていると高を括ってはいない。しかし、人数が少なければ、人を集めるのにも時間がかかる。
その隙を突こうとフーガは考えた。
「……よし」
フーガは城への侵入を果たした。まだ、警備員が気づいた様子はない。
サーシャがいると踏んだ地下室へ足早に向かう。
普段使われていないであろう、埃っぽい道をフーガは進んでいく。
途中で数人、城の人間と遭遇したものの、上手く身を隠したことで気が付かれることはなかった。
ようやく地下室へとたどり着いたフーガは、当たりを見回した。
地下室を見張っている人はいないようだ。
「サーシャ……っ!」
フーガの声が反響して響いた。
一瞬の沈黙。
そして、サーシャの声が帰ってきた。
「……え……フーガ……?」
サーシャの声を聞いたフーガは急いでその声の元へ向かう。
動けないように鎖に繋がれたサーシャがフーガの両目に映った。
「サーシャ!」
「フーガ……!」
フーガは駆け寄ってサーシャを抱きしめた。
サーシャは一瞬驚いたように目を丸くしたものの、すぐに笑みを浮かべた。
その目には涙が滲んでいる。
「……来て、くれたの……?」
「ああ。助けに来た」
フーガは用意していた道具で鎖を叩き切り、サーシャを自由にした。
「一緒に逃げよう!」
フーガはサーシャに向かって手を差し出した。
「……うん……っ!」
サーシャは涙混じりの声で答え、フーガの手を取った。
フーガとサーシャの体温が手のひらで交わる。
フーガは離さないように、手にぐっと力を込めた。サーシャもフーガの手を力強く握り返した。