逃亡
完全に夜は明けていた。太陽は上に登り、光を地上に降り注ぐ。
フーガとサーシャは木々の葉が光を遮る森の中を歩いていた。
「これからどうするの?」
サーシャはフーガに問う。
「……とりあえず遠くに逃げる。途中で寄れそうな国があれば、そこで物資を手に入れる」
フーガはそう答えたが、国を抜け出した後のことは深く考えていなかった。
だから、このあとどうしようかはフーガ自身が一番悩んでいた。
「そっか。……じゃあもっと歩かないとね」
「ああ。国境を越えたとはいえ、できるだけ離れておきたい」
いつ追っ手が来るか分からない。国近くにいては、捕まるかもしれない。もっと遠くへ。離れた土地へ。
フーガはとにかくそれだけを考えていた。サーシャもフーガの考えていることがなんとなく分かったようだ。
体力を温存しつつ、ペースを早めて木漏れ日の中を進んでいく。
「この森って、どこまで続いているの?」
「地図では五キロくらい森が続いていた。その後は山になっている。山の先はまた森だ」
「……そっか。山、越えるんだよね?」
「ああ」
二人はただただ遠くを目指して歩く。
森の木々が姿を見えにくくする。そのことにフーガとサーシャは安堵していた。
街中を進んでいる時、城を進んでいる時、絶えず追われ緊張が絶えなかった中で、ようやく追っ手の姿や足音の聞こえない場所へ来れたからだ。
「……フーガ」
「なんだ?」
「……ありがとう。助けに来てくれて」
サーシャは、微笑んだ。
フーガはその表情に面食らう。共に逃げ出してから見る、初めての笑顔だったからだ。
「なんだよ急に」
「だって、言いそびれちゃったからちゃんと伝えておきたくて」
「……まだ、逃げ切ったわけじゃないんだ。お礼を言うならちゃんと逃げ切ったあとで……」
「うん。逃げ切ったら、その時はもういちど伝えるね」
フーガは照れくさそうに目を逸らす。サーシャはそんなフーガの様子を見て、微笑んでいた。




